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「ちょうどいい」のあるところ

「ちょうどいい」は会話の中であったり、もしくはなにかについて説明をする時に、どちらかと言えば肯定的な意味で使われる言葉です。
ちょうどいい量、ちょうどいい値段、ちょうどいい味。
「ちょうどいい」という言葉を別の言い方にすると、過不足なく、十分なこと。つまり足りていないところがなくて、どこをとってもとりあえず問題ではない。すべてにおいて満足とまでは言わないけれど、不満はない状態のこと、という認識で間違ってはいないと思います。



それでは、「ちょうどいい服」とはどんなものでしょうか。
華美でもいけないし、まったくのミニマルでもつまらない。ところどころに粗野なデザインやディテール、抜けとなる部分を残してきれいにまとめすぎない。
人の手によって作られたぬくもりと大量生産品が持つ独特の冷たさがいい塩梅に感じられるもの。
どちらかに振り切ってしまうというのはある意味組み立てやすいのですが、そうなるとどこかがちょうどいいからはずれてしまう。
他にも流行によるものだったり、気分によるものだったり。その時々にある「ちょうどいい」を紐解いて整理し、最上ではなく最適なデザインを目指してこれまでも提案をしてきました。 

そこで、数年前にゼロベースから製作したTシャツに加えて今年はちょうどいいと思えるシャツが欲しくなりました。Tシャツがいつの間にか”イザT”と呼ばれていたように、”イザシャツ”と呼べるものを作りたいと思ったのです。

そのためには様々なブランドの生地やパターン、仕様、サイズ感、価格帯。検討するべきあらゆることをリサーチして、そのちょうどいいところを掘り起こす。

それはまるでシーソーがちょうど水平になる一点のバランスを保つような、微妙で気を遣う作業を半年以上かけて続けてきました。

シャツを作るのであれば、シャツにありがちな不便についても考えないといけません。透けない、シワにならない、サイズ感への配慮。
そのために今回は天然繊維ではなくポリエステルなどの化学繊維でストレッチ性やノンアイロンなど機能を持った生地を使うことも考えましたが、いかにもそれらしい色味や質感になってしまうのがどうも気が進まないのです。
Itheは便利なガジェットを作りたいのではなく、今の気分を反映したファッションとして楽しめるものを、やっぱり作りたいようです。


そのために、不便なところとも付き合いながら普遍的と言えるシャツはどういうものかと考えると、生地は素直にコットン100%、白シャツが透けてしまうのを防ぐよりも着た時の心地よさや風合いを重視する、シワを防ぐことはできないけれど、シワが活きるような生地を選ぶ。

心地よい風を包み込むような軽くてゆとりのあるサイズ感に設計する。

男性が着ることはもちろん、女性がオーバーサイズで着ることも考えて、どんな身長の方でも様になるデザインに仕上げました。

普通のシャツです。どこまでも普通で、格別にちょうどいい。
イザシャツと呼べるものがようやくできました。今日からIthe AOYAMAで受注をはじめます。

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