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私はお母さんじゃない。

ウェルカム ベイビー クライシス!

おチビさんが産まれてから意地と根性で乗り切り、待ちに待った退院の日。
たっつんがお迎えに来てくれた。
顔見ただけで泣くかと思ったけど…手続き!事務処理!そして医療費支払いという現実が立て続けにやってきてもう泣くタイミングどっか行った。

『抱っこお願い出来る?』
『抱き方教えて!』
『頭を支えて…腕は体を支えて…肩の力抜いて…』

たっつんにおチビさんを預けると『初めまして、たっつんだよ~。』とご挨拶していた。
それから車に乗るときも股が痛まないように乗り、振動にいちいち身構えて『あー』『う~…』とか言いながら家に帰る。

1週間ぶりの俗世…代わり映えのない田んぼ道が輝いて見える…あ、また泣きそ『んぎゃあああああ!』

初めてのベビーシートに慣れないおチビさんが『何ここー!?』『何されてるの僕ー!?』と騒ぎ始め…またみのりん泣くタイミングどっか行った。

帰ってからも飼い犬マロが大切に大切に抱っこされているおチビさんを見て『何ですかその大切に抱えてる美味しそうなものはー!!マロのおやつですか!!』と盛大に勘違いして大騒ぎ。

ベビーベットを整え、おチビさんグッズの使い方をたっつんと確認したり、必要なものと…家の中の整えと…うわ、悪露がまた流れてきた…え?もう沐浴の時間かえーとやり方伝えないと…う、乳がいてーなんだこれしこり???え?乳腺炎?ちょっと待って調べよう…あー!股が痛い!トイレってどうやってたっけ???

みのりんは泣くタイミングを逃したまま…怒涛の育児が始まって体の変化に戸惑って落ち込んで怖くなってずっと悩みっぱなしの怖がりっぱなしで。

ある日突然停止した。

私、お母さんになれない。

それは突然やってきた。
すやすや寝ているおチビさんのベビーベットの隣に座り込んで、なんかもう動けなくなっちゃったのだ。

あ、ご飯食べなきゃ。
おチビさんが起きたらまた授乳だし。
おじいちゃんもおばあちゃんも心配する。
でもなんかもう動けないな。
頭動かないや…。

泣くタイミングを逃して逃して後回しにした結果、急に動けなくなったと思ったら涙だけ流れ出して言葉も何も出てこない状態になっちゃった。

『どうしたの?どっか痛い?辛い?』

たっつんが話しかけてくれるけどまだ股は痛いし、乳も痛いよ。
辛いかどうかは分かんない。
分かんないけどまだおチビさんが産まれて2週間とちょっとなのに…こんな状態で私大丈夫???

涙が後から後から止まらない。

大丈夫じゃないよ、私ダメダメだ…。

みのりんネガティブ大暴発モード。
涙だけポロポロ…ずっとポロポロ…溜め込んでたの?ってくらいにポロポロ。
その間ずーっとおチビさんは空気を読んでいるかのように寝続けていたし、たっつんは離れずにずっと傍にいて背中を擦ってくれていた。

2時間以上はずーっと泣き続けて、溜め込んだ涙を全部出してからやっと言葉が出せるようになってきたみのりんはポロリと本音が出た。

『たっつん…私、お母さんになるの…無理かもしれない。』

たっつんはパパにならないよ。

お母さんになるの無理かもしれない。
それは育児が始まったばかりでこんな体たらくになった自分を嘆いたからだけじゃない。

おチビさん産まれる前から、産まれてからもずっとずっとたぶんずーっと心の中にあったことだ。
お母さんが私にやってくれたようなこと、私はおチビさんに出来ないかもしれない。

どうしようどうしよう。
やっぱり私はおチビさんを可哀想にしてしまうかもしれない。

『ねぇ、てんてん(たっつんはみのりんをてんてんと呼ぶ)…たっつんはね、パパになるつもりはないよ。

おチビさんはまだ出来ないことがたくさんあるから出来るようになるまで必要なことをやろうと思ってるだけでパパになるつもりもなったつもりもないよ。
たっつんはたっつんでおチビさんに関わっていくよ。

てんてんはてんてんのお母さんみたいになろうとしたんだろうけど…てんてんのお母さんになろうとしなくていいよ。
おチビさんを育てていくのはてんてんのお母さんじゃなくててんてんだよ。

たっつんの言葉はパーン!と私の閉ざされた思考を切り開いてくれた。
そして、気付いた。
…あれ?そう言えばこの前『良いお母さんになることを目的としない』って誓ったばっかじゃなかったっけ???

おいおい、その誓いどこ行ったよ。
あまりに綺麗に頭からすっぽ抜けてて、忙しさに感じることを忘れていた自分の代わりに心や内側に入り込んでた『理想の母親像』みたいな思い込みが判断や行動を起こして『私は全然母親としてやれてない』みたいになっちゃってた。

人は忙殺されて余裕がなくなって脳みその余白が無くなると途端に条件反射でしか生きれなくなるのかもしれない。
心に作ってきた経験や体験からのフィルターで物事を見て、判断して、行動して自分で感じることを止めてしまう。
というか、感じる余裕がなくなっちゃうんだな。

私はまんまとそのどツボにハマりこんでいたらしい。
たっつんの言葉で頭に隙間が出来た。
どうやらいつの間にか世間的な母という偶像や今まで自分を育ててくれた実母のやり方に自分を合わせていこうとしていたっぽい。

一気に肩の力が抜けた。

エネルギーワーカーであるたっつんにそっちに引っ張られないように整えてもらいつつ、もちろん私も力を抜いて自然体でおチビさんに関わるようにより自分とおチビさんを感じることにした。

私とおチビさんという繋がりは唯一無二で私は私でしかおチビさんに関われない。

『ありがとう、たっつん。』
『ここで泣けてきっと良かったよ。』
『ふにゃ…ふぇえええ…!』
『あ、おチビさんも泣いた。』

今の今まで空気を読んだかのようにずっと眠っていたおチビさんも泣き出した。
抱き上げるたっつんの手付きも最初と比べると柔らかく手慣れた様子になってきている。

そうなんだよね、命を繋げるとか育むってただの美談で終わらない。
時に生々しいし荒々しくて綺麗事だけで終わらない。

見えない世界の媒介人みのりんとエネルギーワーカーたっつんとしてアクロバティックに唯一無二のおチビさんと一緒に生きていく。
たつみのりっちの育児はまだまだ始まったばかり。

たつみのりっちの日々は続く…!

リアルな見えない世界の体験を綴ろうと思っています。自分が感じた感覚をそのままに。私の大切にしたい世界が伝わることを願って。見えない世界も大切にしたいと思う方はサポートしてくれると嬉しいです。