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"逃亡日記" 第39夜 『高田賢三 夢をかける』

『真夏の夜の夢』みたいな、お祭みたいな展示だった。

"ちゃんとした服""きちんとした大人の服"(オートクチュール)の枠を、ぱきっと気持ちよく壊していく。
生地も素材も色彩も、それまでのルールをひっくりかえして、"服"がひとりでに踊り出す。

お祭みたいな熱狂とわきあがる生命力。
…まつりのあとは、いつもさみしい…。そんなことを感じた時間が伝わるといいな。

服飾マニアが写真多め、熱量多めに暑苦しくお送りします😉


【はじまり】
ファッション専門学校が男子入学OKになったのを知って、夏中バイトで学費貯めて、親の反対を押し切って上京。
2024年の今、女性が入れなかった世界が話題になるけれど。
1950年代、男性が入れない世もあった。

さて最初は、1960年のノンクレジット時代の1着。
どう見ても軍服(男)なのに、女しか着れない服。

この時代、洋服は"洋装店"で自分だけのためにデザインしてもらって体型に合わせて仕立ててもらってた。
このシックで上品なのにセクシーなワンピース。どんな人が着てたんだろう…。

【ひとつの完成形】

さっきの服の反対側には、伝説のウエディングドレス。
圧倒的な存在感とたっぷりの布の質量、これを着てくるくる踊る"小夜子"の美しさ…。
みんなを夢の世界へ連れて行く1着。

1枚の布ではなく、リボンを繋ぎ合わせたテクスチャ…いや、もうこれだけで3時間くらいみてられる。うっとり。


【進化の過程】
さてここからは、1人のデザイナーがブレイクして完熟するまでのストーリー。

ツイードジャケットにニット🧶‼︎
でも正統派『ジャケット』の型を踏襲。むむむ…そうくるか。
このビジュアルみたら、『オートクチュールより』魅力的ってなるよね
…え。60年前…?なのか…
子ども服みたいなワンピースを大人の女性に着せちゃう。
生地は"絣"‼︎
ペザント(農民)ルック
日本の野良着の進化形。襤褸テイスト。…これをフランス人に伝えるってすごい。
身体イメージを"拡張"するスカート
たぶんシルク
とんでもない型なのにエレガント
身体イメージの拡張を追い求めるとこうなることも
…かわいい😍
とはいえ、元ネタが"ロバの皮をかぶった王女"なのは皮肉が効いてる


【フォークロア】

これは"高田賢三"という1人のデザイナーからみた世界の民族衣装…なんだと思った。
どこかでいつか見たような、でもどこにもない服を、発表当時のショーの動画を添えて。

あふれる色彩と豊かな曲線
どこか昭和初期の着物の色合わせだったり
ちょっとチマチョゴリな色だったり
1970年代の少女マンガのヒロインはこんな服着てた
フリルの波は"女の子"の夢でできている
絶妙なプリントのコットンだと思ったらニットだったり
これって…モンペ…⁈
このフーディ、今でも普通に着れるし
なんならいろんなコーデのアイデアが妄想できる
こんなにシンプルでゴージャスなニット初めてみた


ウールの黒とリネンの生成
どっちを着て踊りたい?
これだけの柄と色彩を組み合わせても軽やかなのってすさまじい
単品で着てもいい…これも無限にコーデができる…
(このストール欲しい…笑)


【デザイン画】

パリでの成功のきっかけとなった、デザイン画から"フォークロア"の舞台裏まで。

全盛期のコレクションを時系列に並べた展示は圧巻。

【おわりに】

もし、日本が軍国主義のままだったら
もし、洋裁文化が男子に扉を開かなかったら
もし、オートクチュール主義のままだったら…

洋服の展示なのに、たくさんの歴史や文化について考えたし、それまでの"ルール"のエレガントな壊し方について考えた。

もし、これを最後まで読んでくれている人がいたら、ぜひ本物の展示をみてほしいな。


高田賢三 夢をかける
@東京オペラシティ・アートギャラリー
2024/9/16まで

読んでくださってありがとう🌟ぽちぽち書いていきますね。