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スタジオ通いを止めた幽霊会員 | パンデミックとFEELCYCLEとLUSTER2022

"ARE YOU READYYYYYYYYYYY!?"
"YEAAAAHHHH!!!"

今年2月に行われた特別イベントLIMITED LESSON。
新型コロナウィルスが蔓延して以来、スタジオでは久方ぶりにコール&レスポンスが解禁された。

普段のレッスンでもマスクが必須では無くなり、バイクの間隔も以前より狭くなって、スタジオに一度に入れる人数も増えた。

「緊急事態宣言」という言葉は使う機会がとんと無くなって、誰かと会話していてもこの単語が思い出せないことすらある。

FEELCYCLEという"スポーツジム"に通い始めて丸5年。
その5年のうち数カ月、私は幽霊会員をやっていた。

パンデミック渦中のスポーツジム

新型コロナウィルスが世界中で蔓延し始めたころ、
連日のニュースでクラスターの発生源は"スポーツジム"であると取り沙汰されていた。
そうして毎日のように通っていたFEELCYCLEは真っ先に「行かない方がいい場所」になった。

専門家会議では「ライブハウス」「スポーツジム」「屋形船」「ビュッフェスタイルの会食」「雀荘」「スキーのゲストハウス」「密閉された仮設テント」などを挙げています。これらは、実際に1人の感染者から複数の人たちに集団感染した事例が報告された場所です。

新型コロナ感染抑止へ「行かない方がいい場所」とは? 専門家会議の見解まとめ.THE PAGE.2020-03-08,
https://news.yahoo.co.jp/articles/52a75aef725047c5168d0e5a71cb54a12aec37a4
引用:https://www.ntv.co.jp/news_covid19/articles/593kkooxtzphacz0cil.html



スタジオに行きたくても行けなかった。
いや、正確には"行かなかった"。

FEELCYCLEが休業していたのは4月から実質2カ月間。
5月末からは営業再開している。

自分はそれより早い3月にはもう、スタジオから足を遠ざけていた。

実際のところ、当時は新型ウィルスに対する未知の恐怖が勝っていたのだ。
どういう症状になるか判然としない、誰かに伝染したり仕事に穴をあけることになるかもしれない。
そう思うと家から出られなかった。

だから、FEELは営業しているけど、自分は行かない。

その状況はなんとなくずっとモヤモヤしていた。
行かないと決めているのに予約画面を眺めていて、
気に入ったレッスンのプレイリストを流し続けていて、
次第にその矛盾に自分で耐えられなくなった。
マイページを開くのもプレイリストを聞くのも止めてしまった。

そして幽霊会員の日々

当時の私の職場はFEELCYCLEに通っている同僚が沢山いて、多いときは10人くらいがアクティブ会員だった。
そんな同僚たちが次々と休会・退会していく。
一番熱量のあった自分ですら遠ざかっているのだから当然かもしれない。
それでも誰かが休会するたびに、「また落ち着いたら行きましょうね」と声を掛けた。
それと同時に自分は退会も休会もしないでおこうと何となく決めていた。

自分にとってFEELCYCLEはもはや生活の一部と言っても過言ではなくて、
それでも"自分の意思で"今は行かないと決めていて、
そんなアンビバレントな気持ちに対する最後の抵抗だった。

飲食業界やレジャー業界が大きな打撃を受ける中で不要不急であるスポーツジムもまた厳しい状況だったであろう。

だからせめて幽霊会員でも籍を残しておきたかった。

勿論、受講ゼロで会費だけ払うのは勿体ない。決して安くは無い。
でも"行かない"自分にはそれしかなかった。

ようやくスタジオへ

FEELCYCLE公式サイト 安全衛生管理について より

世間がwithコロナに慣れてきた6月末、4カ月ぶりにスタジオを訪れた。
スタジオの運営ルールは色々変わっていた。

誰も正解が分からない中で、分からないなりに精一杯、
会員である自分たちが少しでも安心できるようにと、
インストラクター・スタッフの人たちは最大限の安全管理をしてくれていたと思う。


自分の周囲に少しでもそれを知って欲しくて、そして誰かが戻ってきてくれることを期待して、通知の鳴らなくなったLINEグループにメッセージを投げたりもした。

(爆笑ギャクについては触れないでください)


自分にできることなんて何もなくて、何かできると考えることすら烏滸がましくて、それでも何かしないではいられなかった。
久しぶりのレッスンは楽しいけど、前と変わってしまった空気感が残念で、
本当はたくさん通いたいけど伝染病への恐怖を消し去ることはできないで。

そういう、ないまぜな気持ちのやり場がどこにもないまま過ごしていた。

「推しは推せるときに推せ」
「本当のファンなら大変な時こそ応援しなきゃ」
どこかで聞いた言葉を思い出しながら、自分にできることは何かを考える。
まずは自分が元気で通い続けることかなぁ、とひとまず結論づけた。

そうは思いながらも、かじる程度に経営学に取り組んでいた身としては「会社の売上」は無視しきれず、最終的に、欲しいと思ったアパレルを積極的に買うとか、追加チケットを買ってレッスンを受けるとか、そういう応援の仕方に落ち着いた。

それが自己満足でも、他の人から稀有な目で見られても、
ずっと一方通行に「楽しい」をもらっている自分には、自分の「好き」と「ありがとう」を少しでも形にして還元する方法だと思った。

勿論、使った金額や受講回数の多寡で誰かの気持ちの大きさを測ったりはしないし、したくない。
たったの1曲、たったの2分半に心を掴まれることがあると知っているから、わかりやすい"数字"だけを見て優劣をつけたくないと思っている。

FEELCYCLEが楽しくて好きだから、だから応援しているという、これは至極単純で、自分の中に閉じた図式。
FEELが無くなって一番悲しくて困るのはどう考えても自分なのだ。


LUSTER 2022 "おかえり"と"ただいま"

そういうコロナ禍も2年を経て、少しずつ落ち着きが戻って来た。

スタジオの雰囲気は以前と変わってしまったけれど、自分には新たな仲間が増えて、色々なレッスンも受けられるようになって、ますますFEELCYCLEが楽しくなった。

そしてLUSTER 2022が開催された。

開催が告知された日にはもうホテルを予約して、ワクワクしながら当日を迎えた。

LUSTER 2022、🟦FEEL YOURSELF、そのオープニング。
Dimitri Vangelis & Wymanの1曲。

最初にこれを持ってくる所が本当に「分かっている」なぁと思うし、何より「ありがとう」と言いたかった。

コロナ禍で日常が失われ、ただでさえ多くのことが制限されていた。
三密の典型と言われたフィットネスへの風当たりはどれほど厳しかったか。
それでもファンのみんなで応援して、FEELCYCLEはそれに応えてくれて、ここまで繋ぐことができた。

This is our direction
This is what we want
There's a million ways we could lose these race
But we're not givin' up

FEELCYCLE10周年という記念すべき年、未曽有のパンデミックという逆風を耐え抜いて、
2019の幕張よりハコは小さくなったけれど、原点である豊洲に、LUSTERが帰ってきた。

We don't care if we get lost, no
'Cause we've been here before
Now we're leadin', we don't follow
And we don't break down no more

スタジオに行きたくても行けなかったこと、行かなかったこと、
自分を誘ってくれた人や同僚が次々とFEELから離れて行ったこと、
世の中的にジムへの入会はまだ勧めづらくて新たな勧誘は諦めていたこと、
それでも興味を持って始めてくれる仲間がいたこと、
そしてその仲間が、一緒にLUSTERに行きたいと言ってくれたこと。

そういうのがぜんぶ思い出されて、本当にこの場に居られることが奇跡みたいで、それと同時に、「この場所に、私たちは帰って来た!」というインストラクターの言葉がとてもとても嬉しくて、

'Cause we are here now
Woah-oh-oh, oh-oh-oh, woah-oh-oh, oh-oh-oh
'Cause we are here now
Woah-oh-oh, oh-oh-oh, woah-oh-oh, oh-oh-oh
And at the end of the way
We're still not walkin' away
'Cause we are here now
Woah-oh-oh, oh-oh-oh, woah-oh-oh, oh-oh-oh

Dimitri Vangelis & Wyman, Mike Perry (2021), We Are Here Now



あぁ、本当に、心から。続けてきて良かったと、
もう一度この場所に来られて良かったと、そう思った。


だから自分にとって"We Are Here Now"というこの曲は、ただのオープニング曲以上に大きな意味を持つものになり、
そしてこれは、あの場所を待ち望んでいた全員にとってもそうなはず。


やっぱり1曲目にこれを持ってくる所が本当に「分かっている」。
そしてあの場所を、あの瞬間を取り戻すために頑張った全員に、
ありがとう。

そうしてFEELCYCLEとそのファンの関係性に依って立つ唯一無二の空気に中てられた私は、明日も明後日も、そしてきっとこれからも足繁くスタジオに向かうのだろう。



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