知っていた、信じてた。 #月刊撚り糸
海を眺めて生物の歴史を知る、空を仰いで世界の小ささを知る、そんな高尚な人間にはなれなくても、ケイは充分幸せなのだと自認していた。
ケイは、特別頭のよい人間でもなく、特別見目の整った人間でもない。特別友人が多いわけでもなければ、資産家の家庭に育ったわけでもない。
それでも、幸せなのだと思う。そう信じて生きてきた。
信じることと知っていることは似ているけれど反対だ。
ケイの友人に、リョウという人物がいる。小さく可愛らしく、くりくりとした目がまるで小動物のような、ほん