隣の異世界#ショートショート #月刊撚り糸
異世界、という言葉がある。自分が今住んでいるこの世界とは別の世界のことだ。最近は、異世界転生、なんてのも流行っている。そういうことを、城戸小鳥遊(きどたかなし)は一般常識として知ってはいた。けれどもその異世界とやらがこんな近くに存在していることは、知らなかった。
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「キャベツをトマトで煮込むの? え、なにそれ、なにができるの」
藍田景子(あいだけいこ)の言葉に、小鳥遊は目を剥いた。景子の顔をまじまじと見つめるが、彼女の顔に冗談やからかいは見当たらない。あくま