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『月姫 -A piece of blue glass moon-』 感想 *ネタバレなし

発売から約一年後にプレイ、全クリア。FGO第二部七章が開幕する直前の今になってやっと書いた、わりかしざっくりとした素人の感想です。

月姫の原作は未プレイ、『stay night』や『FGO』、『まほよ』はプレイ済みで、世界観についてはそこそこ詳しい感じ。

人名は基本敬称略。



好きな所

キャラクター

奈須きのこお馴染みのキャラクター性。大体の作品の登場人物は明確に善悪に分けられますが、奈須きのこが作り出したキャラクターにおいて、物語を完走したとしても一筋縄にはいかない場合は珍しくない。そんなキャラクターも含む、好きが詰め込まれたキャラクターが多数登場。好きになるまで人間性が理解するまで延々と続く、奈須きのこの文章を120%堪能できる作品。

アルクェイドルートが終わって、アルクェイドのようなキャラクタが好みである私から見て「これシエルに勝ち目ないだろ」と思ったのですが、シエルルートを進む度にちゃんとシエルのことも好きになって、心の底からシエルを選んでほしいとも思えました。一人だけでも十分なのに、ヒロインの二人をもここまで好きにさせるキャラクター描写。恐ろしい。早く残りのヒロインをも好きにさせてください。


収録が大変そう。それくらいの文章量をフルボイスで堪能できる贅沢さ。ありがたや。

違和感ゼロ、想像を超える、秒で没入、感情移入ができる数々のセリフ。 数多あるモバゲーなどでは良く感じる歯切れの悪い流れはもちろん一切感じられず、こだわりにこだわったディレクションの元で収録した声のお芝居と感じました。

心の奥のMVPはアルクェイド役の長谷川育美に捧げたいと思います。というか心はとっくに奪われました。長谷川育美ファンはプレイ必須です。

繰り返します。

長谷川育美ファンはプレイ必須です。


音楽

『まほよ』に続く芳賀敬太と深澤秀行のタッグ。恐るべし八時間弱のサントラ。よく聞く話ですが、ゲーム内に使用する楽曲はリピートされがちなので、プレイヤーが飽きないために一曲一曲を長くする必要がある。まさにこれです。飽きさせないための工夫は肌で感じるほどのものでした。実際、ゲームクリアから今の三ヶ月弱には頻繁にサントラを流しているが、飽きることは一切ない。

といっても当然これだけではなく、音楽にかかる演出も無視できない。だけどネタバレなしでは説明のしようがないので、あえて言うならば、多くの映画の劇伴よりずっと出来がよくドラマがあるサウンド、が良い線行っているのではないかな。


ストーリー

文句なしめちゃくちゃ面白かったです。まだヒロイン二人のルートしかプレイできなかったが、長年TYPE-MOONファンに愛され続けた理由がよくわかりました。世界観、ペース、やり取り、展開、演出、マルチルート要素、物語性を築くあらゆる分野すべてが完璧と言ってもいい。いや、創作において完璧はなく、あるのは合うか合わないかと思うが、それでいうなら本作は完璧にストライクゾーンでペナルティーエリアでエンドゾーンでした。

大まかに三つにまとめますと:

王道で良い。最高。
丁度良い鬱で良い。最高。
これは原作やらなくても今回の追加ということはハッキリ分かる。最高。

といったところですかな。


スクリプト

『まほよ』はプレイ済みなので、もちろん同じかそれ以上のモノを求めてしまった。そして、それ以上のモノが返された。

何というか、動いた。とにかく動いた。背景も登場人物も表情も血も五臓六腑も私の心も

ビジュアルノベルはTYPE-MOONの作品くらいしかやっていなくて、TYPE-MOONのせいで他のブランドが出すビジュアルノベルでは私はきっと満足できないだろう。だって、ここまで動くモノを正気で作る人、他にいるとは断じて思えん。

期待できるだけ期待していい。最後は必ず想像以上のモノが返される。


微妙と感じた所

「分かれ」と思った所は少しだけありました。まったく同じ意見、文句などが同キャラが何度も繰り返す場面。そこはもう分かっただろう、と突っ込まざるを得ないシーン。たとえTYPE-MOON作品とその世界観に詳しくないプレイヤーのために重要なキャラ設定を繰り返すのだと言われても、さすがにやりすぎたと思う。この点に関しては『stay night』をプレイする時も何度も感じました。

とはいえ、プレイ中不満を感じた所はこれくらいで、すぐ気にしなくなりました。


最後

TYPE-MOONの世界観に詳しくない人には少々難しい、覚えるものがいっぱいかもしれない。いつしかの一問一答で奈須きのこが答えた、TYPE-MOONの世界観の入門として『まほよ』が相応しいと、今は分かる気がします。

決して気楽の気持ちでプレイできる作品ではないが、その分、得るものも大きい。世の中に面白い作品はたくさんある。感動できる作品はたくさんある。好きな登場人物がある作品はたくさんある。それら全部を含む、その上に心の底から「美しかった」と言える作品は、世の中には極めてレアと思います。そんな作品に出会えたのは僥倖でした。




余談:

どうせFGOの売り上げのために出した、そのためにこのような変更をしたなど、文句を言うヤツら(主に英語圏、多分)はネットにはいるらしいが、原作プレイしたことがない私がそんなヤツらに言えることは少ない。言えるのは、私は本作をプレイした後、Fate側よりこっち側に興味が湧いた。もともと歴史について詳しくないし、英霊より完全オリジナルキャラクターの方が好きになった場合がたくさんあっただけあって、Fateより月姫の世界に浸りたい気持ちは当然といえば当然。だけど、私のような人は決して少なくないと思う。それに、FGOのプレイヤー数の方が断然多いので、どちらかというとFGOにアルクェイドを登場させることで月姫に興味を持つ人が増える、という逆の現象の方が納得できる。何が言いたいかというと、早く英語版を出してそいつらを黙らせろ、です。

あ、その前に続編出してもなかなかの良いアイデアと思いますよ。

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