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日比谷ノンフィクションⅨと感慨

Base Ball Bearを聴き始めたのは、高校1年生の時のこと。
同じクラスだった女の子からCDを借りたのと、Podcastで好んで聴いてた『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』で小出さんの話を聴いたのとどちらが先だったか忘れてしまったが、高1の夏以降に聴き始めたはずだ。
好みが同世代とずれていたこともあって、学校で好きな音楽の話をすることを避けていた自分が、同い年の人に音楽を勧められて、しかもそれを好きになったのは後にも先にもBase Ball Bearだけだ。

Base Ball Bearで最初に聴いたのは件の女の子から借りた『changes』のシングル盤。「サビの入りがボウイっぺえ」とか思いながら聴いてた気がする。元々、ライブ盤が好きな自分は4曲目に入っている『ドラマチックとエレサマ』を何度も繰り返し聴いた。
自分がBase Ball Bearを知ってから最初に出たシングルは『PERFECT BLUE』。綺麗な青いジャケ写がすぐに気に入り、カップリングの『アイノシタイ』がとってもダンサブルで愛聴盤になった。
『PERFECT BLUE』についで出た『THE CUT』もこれまた愛聴盤になる。なんと言っても好きになったきっかけの大きな1つRHYMESTERとの共演、あがらずにはいられない。花澤香菜さんとの『恋する感覚』も甘酸っぱくてとても素敵で、アニメに疎くてこの曲を聴くまで花澤さんを存じ上げなかった自分でもすぐに好きになった。『changes』同様最後にはライブ音源が入っていて、当然のようにこれも大好きに。このライブ音源でお気に入りになった曲から過去のアルバムに遡って聴くことで幅が広がっていった。RHYMESTERといい花澤さんといいゲストを迎えたポッセカット的な楽曲の魅力にも気づいた。
Base Ball Bearで1番聞いたCDは多分『THE CUT』だと思う。

『THE CUT』以降は、新譜が出るたびに聴き、どんどん惚れていった。
初めて行ったライブは、2019年11月の横浜ベイホール。かっこよくて仕方なかった。
ベイホールの感動からしばらくして、世界のライブが止まってしまうことになるなんて思ってなかった。コロナ禍になる前に最後に買っていたチケットもBase Ball Bearだった。払い戻しをする気にもならなくて、だけどもチケットを見ると暗くなってしまうし、目に触れないようにわざと適当なところにしまってしまった。
コロナ禍になって以降、止まっていたライブが動き始めても、ライブに行くことはやめていた。当然、感染症自体の対策でもあるんだけれど、「発症前に無自覚でライブに行って、誰かに感染させてしまったら」など考えてしまって楽しめるような状態じゃなかったからだ。自分が人に接する仕事をしていることも控える理由に十分だった。
気がかりなことがあるうちは、参加するのはやめておこうと思った。

このコロナ禍になって、それまでは即完してたようなバンドのチケットが余っていることがザラにある。例えばTRICERATOPS(わざわざトライセラを例にしたのはBase Ball Bearをきっかけに知ったから)。名曲のタイトルと同じ『2020』年に行ったライブも、ジャケ写によく似た外観の新木場でのライブも、発売日に即完することはなかった。このご時世、状況もどんどん変わっていくなか、踏み切れない人は多かったのだろう。そもそも自分がその1人だ。
即完しないと悩む時間が増える。
「いろいろなルールに則って開催されるわけだから、参加することは悪いことではない」と思ってもなかなか参加する気にはならず、結局TRICERATOPSのライブにも行かなかった。
最後に行ったライブは2020年の2月、丸2年以上音楽の現場には行かなかった。

2022年に入って、正直なところ、段々音楽の現場への興味が失せていた。配信のライブは気が乗らなかったし(家で見られるものになんか興味ない、というとあまりに極端かしら)、再開されているライブにも(さっきも書いた通り)自覚なく人に伝染してしまうリスクやストレスを抱えてまで行きたくないと思った。
それでもやっぱり心は揺れる。大方のライブには興味が湧かず、沸いたとしても諦めがつく体になっていたけれど、ここぞというものがある。
それが、Base Ball Bearの野音だった。
公演前日まで悩んだ。本当に悩んだ。
早く売り切れて悩まないで済むようにしてくれと思っても、多くの売れっ子バンドと同じく、前日までチケットが買える状態だった。

結局、チケットを買った。
野外だから屋内よりも換気等の問題がクリアになるだろうと思ったのが大きな要因だ。
………なによりも心が動いた。我慢できなかった。
席は最後列から2列目の端っこ。「満キャパ」だったそうなので、本当にギリギリ間に合った。
チケットを買った後になっても、参加してよいものか本当に悩んだ。
日比谷に近づいても、悩んでいた。
着いても、悩んでいた。始まるまで、悩んでいた。

始まってからは一瞬だった。
何度も何度も聴いていた『恋する感覚』の初披露。生で観られることはないと思っていたRyoshuや橋本絵莉子、valkneeとの共演。3度目の武道館の発表。
何よりBase Ball Bearの3人のかっこよさ。
自分がいかに、彼らの音楽と共に過ごし、大人になってきたのか、いかに彼らを愛しているのか、今回の野音で初めて自覚したような気がする。彼らを知った高校生の時から、25歳の今までの10年を肯定されたような気持ちになった。

本当に、行って良かった。

今回は野外である事が参加の決め手になった手前、しばらくは苦悩の日々が続くけれど、許されることならば武道館に行きたいと思ってしまう。
その頃には、少しは気兼ねなくライブエンターテイメントに参加できる情勢になっている事を願いつつ、野音から1週間たった今でも、どうしようもないほどBase Ball Bearのことばかり考えてしまうのだ。

※写真は撮影可能時間帯のものです。

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