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ふりそそぐ

あっという間に満開の手前にまで、花開いた桜を眺める
つぼみの濃い色も可愛らしく、日に日に開いていく様子を見るのが好きだ。
咲くのが早いのはこの辺り、本数が多いのはこの辺り、よく通る道で憶えている通りに視線を向ける。
今年は寒いからと油断していたら、ある日、はっとするほど存在を訴えて来た。

木によって花期が違うのは、いい。
一斉じゃないところがいい。
だから、長く花を楽しめる。
全部、同じ種類じゃないところが、楽しい。

多様性というのは、そういうものではなかろうか、と、ふっと頭のなかで繋がる感じがした。
同じ桜と言えど、ソメイヨシノばかりではない。
原種もあれば交配種もある。公益財団法人日本花の会のHPには401種類が紹介されている。
色合いも違う。一重も八重もある。枝ぶりも普通のものもあれば、枝垂れもある。早咲きもあれば遅咲きもある。
すべてソメイヨシノになってしまえば、きっと面白くないと思うのだ。

すべてをソメイヨシノに足並みをそろえさせようとしなくていいではないか。
近頃、定型発達と書くのも違和感があるのだが、「神経発達障害ではない」範囲が狭まってばかりいるような感じがしてならず、息苦しくて。
どれもこれも、だれもかれもが、神経発達障害となるのは、診断そのものを無意味なものにしてしまうのではないだろうか。
そもそも、合理的配慮が必要なのではなく、配慮がなければ難しいような、社会からの要請そのものが問題だと思うのだけどなあ。

そんなことをつらつらと考えながら、歩いていた。
公園の中は花見客が歓声をあげている。
大きなレンズをつけたカメラを構えている人もいる。
公園の外壁に沿って歩いていると、くるくると回りながら花が落ちてきた。
まだ満開の手前で、散る花弁は少ない。
五弁の花びらを開いた花がくるりくるりと回りながら、また、落ちてくる。
頭上ではスズメの声がする。二羽のスズメが鳴きかわしながら、枝を移動しつつ、花を落とす。
花を両手ですくおうとするが、それがなかなか難しい。
楽しくなりながら、スズメと、桜と遊ぶ。

道路に落ちたばかりの花をひとつ拾って、バッグに入れた。
そのまま飾りたいほどの美しい花。完璧な形の花。
見上げるよりも、大きく感じる。

家で取り出した時には完全な形は失われていたけれど、爽やかな香りが一瞬、風よりも柔らかくふんわりと広がって、通り過ぎていった。

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