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書籍『異世界居酒屋「のぶ」6杯目』

蝉川夏哉 2020 宝島社文庫

気づいたら、もう6冊目。
毎回、楽しみにしているシリーズだ。出たらすぐに買い、すぐに読み、何度も読み返す。
から揚げが出てきてはから揚げが食べたくなり、串カツが出てきては串カツが食べたくなり、こんな居酒屋が歩いて行ける距離のところにあればいいのに、と何度願ったことだろう。

今回は、ガレットがたまらなく食べたくなった。
完璧と名付けられたガレットを、香り高いシードルと共に。
そうできたら、どんなに素晴らしいことだろう。
調べてみたら、Covid-19の世界的な流行に伴い、外出自粛要請や緊急事態宣言が出ているなか、ガレットを食べに行っていたお店も休業している。
自分で焼けばいいのだろうけれども、お店の雰囲気やバターの香りを思い出して、せつない気持ちになった。

物語の中で、人々は毎日の生活を謳歌している。
顔馴染みの人々との会話、家族との再会や交流、恋愛や結婚、職業人としての成長。
その毎日に、美味しい酒があり、美味しい食事がある。
そういう極めて「人間らしい」営みが、今、現実では感染症の流行によって阻害されていることを強く感じた。
心配事がゼロではないけれど、当たり前に出かけ、当たり前に働き、当たり前に笑い、当たり前に語らう。
つい最近まで当たり前だった日々がここにある。

世の中が落ち着いたら、トリアエズナマで祝おうか。
それとも、しみじみとレーシュを味わいながら、あんかけ湯豆腐やだし巻き卵をゆっくりと噛みしめるのもいい。

美味い料理を、自分の好きな場所で、自分の好きな人と食べる。(p.50)

そんな日常が早く戻ってきてほしいと思った。

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