ミスターチーズケーキを食べて

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まず一口目、

 ああ今日は面倒臭い会議があるなあとか、例の資料の期限だ、あの案件の進め方どうしよう、生ゴミ上司は消えてどうぞ、という平日の私の脳内を占める全てを包み込み、溶かしてしまうほどの濃厚な味。
 頭の中がチーズケーキのみになる瞬間を味わったのは、これが初めてでした。発売が日曜日と月曜日に限定されていることも納得です。なぜならこれは人が働く平日(無論全員ではない)に、常に脳内を占めるであろう様々なことをそっと包み込み、瞬間忘れさせられるような力を持っているからです。憂鬱でたまらない日曜と月曜に、ほんの少しだけ未来への希望をくれるのだと思いました。

そしてコーヒ一を挟んだ二口目、

 ありきたりながら苦味との相乗効果。ガラリと雰囲気が変わりました。初めにスイーツを女性に例えたのは一体誰だったのでしょう?的確です。とろとろ、つやつや、きらきら、凛々しくもあり、柔くもある。 

 シェフのとてつもない経験や知識によって焼き上げられた芸術品でありながら、たまに顔を出すバニラの粒が遠い昔、母と手作りしたお菓子のことと、鼻の奥で眠っていた甘い匂いを思い出させて、ああ気付けば私はずいぶん遠いところまで来ていたな、と感傷的な気分にさえさせてくれました。
 けれどそれは、けして悲しみではなかったと思います。まさにおいしい記憶、それはこの最高のチーズケーキを作り出したシェフが血の滲むような努力の末に積み上げた記憶であり、口にした人々のとても大切なおいしい記憶さえ呼び起こす、そんな力によるものなのではないかと思いました。

 三口目、そのあとはもう、ノンストップ。

 気付けばお皿は空でした。でも確実に、食べる前の私とは違っていました。あれは、私の中にとろけていったのだと、そう思います。とけて、染みて、また新しい記憶になる。

 まさにあなたの人生最高に、というキャッチフレーズにふさわしい、そんなチーズケーキです。是非あなたもお試しください(友人各位)。

 なお、冷凍、半解凍、完全解凍とステップがあり、それぞれの美味しさが留まるところを知らないので3台買ったほうがいいと思います。保冷バックも付いてて可愛いので3台買っていいと思います(友人各位)。

 で、呑もうぜ!(友人各位)




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