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AwBH 第10章 訳者雑感

※本記事は『鱗羽の天使』本編の核心的なネタバレを含みます。未プレイの方は引き返すことを強くお勧めします。

『鱗羽の天使』(AwSW)前日譚、『Angels with Broken Hearts』第10章は三度目の人類編。太陽フレアによって世界秩序と文明が崩壊した近未来で、砂漠に倒れていたところを救出されたレザ。彼を救い出したのはとある居住地に住む人々の一団でした。記憶喪失によって最初は人を拒絶していたレザでしたが、居住地のリーダーであるジョナスとその娘イザベル、そして孤児のガブリエルといった人々に囲まれて暮らす中で、その心境にも変化が表れて…というのが前回までのあらすじ。腕っぷしの強さからすっかり居住地で頼りにされるようになったレザがイザベルらと共に遠征任務に就いた時、大事件が起きてしまいます。

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この居住地の付近でたびたび目撃されていた世紀末モヒカン集団、カリオンズの襲撃に遭い、負傷したジョナス。カリオンズの狙いは居住地そのものではなく、その物資を奪うことにありました。必要とあれば殺戮は厭わずとも不必要には殺さず、恐怖で欲しいものを略奪する手口。どうやらカリオンズは人殺しそのものを楽しむサイコパスレイダー集団というわけではなく、高度に組織化された野盗のようです。

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この居住地には高度な医療設備や病院があることが前回、前々回の人類編でも描写されていました。彼らはこの維持に多数の発電機を必要としていたようです。AwSW本編でも、発電機の不足によって医療水準が著しく低下してしまった居住地の現状について主人公が回想しています。

この発電機の略奪によって二つのことが分かってきました。一つはAwSWでレザと主人公が救おうとしていた"人類世界"というスケール感について。これらの盗まれた発電機を補うためにレザと主人公が竜世界に旅立つという展開を仮定した場合、彼らが救おうとしていた人類の世界というのは、広い意味での全人類ではなく、もっとミクロな、この居住地の話であった可能性が高い、ということです。さらに、まだコミックには登場していませんが、本編主人公もまた、この居住地と深い関わりのある人物である可能性が高くなってきました。

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レザに懐いていた孤児の少年、ガブリエル。居住地を守うろとしてレザの銃を使いカリオンズに応戦した末、不幸にも命を落としてしまったようです。残酷な話ですが、レザが銃を置いていかなければガブリエル少年も応戦しようとせず、その命が失われることもなかったはず。レザが強い自責の念に駆られていることは明白です。この激情がレザを追い立てます。

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肩パッドにモヒカンという世紀末正装スタイルで登場したカリオンズの一味。やはりこういう服装でなければポストアポカリプスの世界は生き抜けないのでしょうか。さほど屈強には見えないレザを見くびり挑発を続けた結果、ガブリエル少年を失って失意の底にいたレザの逆鱗に触れてしまいます。

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怒りに駆られ、虜囚を殺害したレザ。慎重に尋問せよと言いつけていたジョナスは決して快く思わないことでしょう。この後、レザは竜世界へと旅立つことになるわけですが、一時の感情に任せて捕虜を撲殺するような人物がなぜ大使に選ばれたのかという疑問が残ります。この一件がジョナスたちにはバレていないのか、あるいは罰として異世界に飛ばされた可能性も・・・?もっと単純に考えれば、危険なほどに強いからこそ未知の世界へと送り出す人物としては適切と判断されたのかもしれません。本編で竜たちを次々と殺害していった彼の強さにも説得力が生まれていますね。

事態は急展開を迎えた人類編。AwSWへと続く残りの物語がどうなっていくのか気になります。人類編は残り3章で完結するとのことです。

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本記事は『Angels with Broken Hearts』の日本語訳プロジェクトです。
オリジナルの公式HPはこちら
http://angelswithbrokenhearts.com/

この翻訳記事は制作者の許可の下で行われている公認プロジェクトですが、訳文はファンによる非公式翻訳です。公式は訳文に一切の責任を負いません。訳文についてお気づきの点は訳者までお寄せください。

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訳:Luptas