読書とは

読書とは、突き詰めていくと、孤独の喜びだと思う。 人は誰しも孤独だし、人は独りでは生きていけない。 矛盾してるけど、どちらも本当である。書物というのは、 この矛盾がそのまま形になったメディアだと思う。 読書という行為は孤独を強いるけど、独りではなしえない。 本を開いた瞬間から、そこには送り手と受け手がいて、 最後のページまで双方の共同作業が続いていくからである。 本は与えられても、読書は与えられない。 読書は限りなく能動的で、創造的な作業だからだ。 自分で本を選び、ページを開き、 文字を追って頭の中で世界を構築し、 その世界に対する評価を自分で決めなければならない それは、群れることに慣れた頭には少々つらい。 しかし、読書がすばらしいのはそこから先だ。 独りで本と向き合い、自分が何者か考え始めた時から、 読者は世界と繋がることができる。 孤独であるということは、誰とでも出会えるということなのだ。

「小説以外」恩田陸新潮社より

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