三月のパンタシア「ブラックボードイレイザー」(2000PVリクエスト企画①)
まえがき
気付いたら新年度になっていました。
今年度も本ブログはマイペースに怪文書を垂れ流していこうと思いますので、よろしくお願い致します。
今回は2000PV記念の読者様リクエストになります。
(1000PV記念のシリーズはこちら↓)
前回の1000PVの時は全てClariSだったので、今回はClariS以外も大歓迎と添えたところありがたいことに色々リクエスト頂けました。
さっそく今回は①三月のパンタシア「ブラックボードイレイザー」を紹介していきます。
曲紹介
作詞・作曲・編曲:40mP
2016年12月14日発売の2ndシングル「群青世界」(コバルトワールド)に収録。ボカロPとしても有名な40mPが作詞・作曲・編曲全てを手掛けているそうです。
歌詞
というわけで、さっそく歌詞を読んでいきましょう。
※歌詞は歌ネット(https://www.uta-net.com/song/220828/)からの引用
1番
冒頭の「教室」「黒板」で学校という舞台設定が浮かび上がってきます。
「誰もいない」教室で黒板に書いた「本当の想い」、つまり普段人前では本心を言えていないみたいです。
時間帯は放課後でしょうか?
クラスの教室なのか、それとも部室の黒板なのか。
どちらを想像するかで、想い人がクラスメイトなのか同じ部活なのか想像が膨らみますね。
※塾っていう設定も面白いかも。
誰に見つかるのを恐れたのか?っていうのも想像が膨らむポイントですね。
想い人本人?(2番の「彼」)
彼のことを好きな自分の親友?(2番の「君」)
それとも無関係な他の人達?
こういう余白部分は、聴き手側が自分の経験に当てはまるエピソードを自由に入れられるので感情移入度が高まる要素になると思います。
「微かに残るチョーク跡 歪な恋を物語る」
主人公の葛藤・苦しみが表れてるフレーズだと思います。
急いで黒板消し(ブラックボードイレイザー)で消したけれど、自分の気持ちが完全に消えるわけはない。
想いが強い分筆圧も強くなってしまったのか、消しても消してもチョークの跡は残ってしまう。
なにより、「自分の意志で黒板に気持ちを書いた」という事実は消えない。
友達の恋を応援しよう、私は邪魔しないで見守ろう。大人になろう。
そう言い聞かせていたのに、心は耐えきれなくて誰もいない教室の黒板に想いを吐き出してしまった。
友達を裏切ってしまったような罪悪感。
大人になりきれない自分への自己嫌悪。
主人公のそんな気持ちが伝わってくる気がします。
そしてサビのフレーズ。
「消せない想いがシミついて 心を白く染め上げた」
この曲では、白と黒の関係が普通とは逆になっているのが面白いですね。
・黒 → 黒板の自然な色。何も書かれていない清らかさの象徴
・白 → 黒板の不自然な色。必ず消さなければならない穢れの象徴
黒板に文字を書くチョークは一般的に白が基本なので、白が黒板を穢す存在になっているんですね。
真っ黒でなければならない黒板に、白いチョークで書いてしまった自分の「本当の想い」。
「染み」ではなくあえてカタカナで「シミ」なのも、こびりついて消えないシミのような「罪の象徴」として自分の恋心を捉えているように思えます。
2番
さて、2番です。
「授業中に視界に入る 黒板の隅、秘密の想い」
ここは想像を働かせるしかないんですが、1番で自分が書いて消した「微かに残るチョーク跡」を見ているのではないでしょうか。
友達に遠慮して自分の恋を諦めようとしているこの主人公の性格的に、誰にも知られたくない彼への想いを書くとしたら、黒板のど真ん中ではなく隅っこの方に小さく書くと思うんですよね。
それさえも焦って必死にゴシゴシ消してしまう、という所に主人公の恋への余裕の無さ・必死さが出ている気がします。
他の人達には全然気付かれないくらい黒板消しでしっかり消せていても、書いた本人の自分には「微かに残るチョーク跡」から書いた内容(秘密の想い)がハッキリ分かってしまう。
それがいつか誰かに気付かれてしまわないか、まるで罪人のような気持になっているのかもしれません。
そして、次のフレーズはこの曲の核心部分ですね。
「彼の背中 君の横顔 視線を逸らした臆病な私」
「一番大切な人を 裏切ることなんてできず」
自分の想い人でもある「彼」の背中
それを見つめる「君」の横顔
二人を直視できず視線を逸らした臆病な「私」
親友と同じ人を好きになってしまった、という主人公の状況が初めて明示されます。
勝手な妄想ですが、この状況に陥る流れって二通りあると思っていて、
①自分が先に彼のことを好きだったのに、告白を迷っている間に何も知らない親友から「実は私〇〇君のことが好きで・・・」って恋愛相談されて知ってしまった。(もしくは、親友の様子から彼のことが好きだと気付いてしまった)
②先に親友の方が彼のことを好きになって、最初は純粋な気持ちで「応援してるよ!」って恋愛相談とか乗ってたのに、気付いたら自分も彼のことが好きになってしまった。
どっちも中々エモいですね。
②の方が「一番大切な人を裏切ることなんてできず」の裏切り感は強く出ますが、①の方が自己嫌悪感は強くなりそうです。
「私が先に好きだったのに」っていう親友への恨みにも似た感情が自分の中に湧き上がってしまい、そんなことを大切な親友に思ってしまう自分の醜い本音に自己嫌悪する。
まあ①でも「・・・そ、そうなんだ!いいと思うよ!応援するね!」って自分の気持ちを隠して親友の恋愛相談に乗ったとしたら、「今更やっぱり彼のことを諦めきれないなんて、親友への裏切りだ・・・」っていう裏切り感は充分に出そうですね。
筆者個人の好みとしては①の方が好きです。
更に味付けするなら「彼への恋心を親友に相談しようと思ったその日に、何も知らない親友からタイミング悪く『〇〇君のことが好きなんだけど・・・』と先に相談されてしまい、自分の恋心を親友に相談するタイミングを逸してしまった」って展開だともう最高です。
「あの時、あと1日早く相談していたら・・・」
「もしかして、私の気持ちに気付いてたから先手を打ったの?・・・そんなわけない。あの子はそんな酷いことするような子じゃないって分かってるじゃん。なんでこんなこと考えるの?大切な親友を恨んでるの?私ってこんなに醜い嫉妬を持つような人間だったの?」
そんな自己嫌悪で頭の中グチャグチャになってて欲しいです(真顔)
さて、そんな主人公ですが、結局は想いを伝えず自己犠牲の道を選んでしまいます。
「私ひとりが泣いたって決して誰も困らない」
「時が経てば色褪せ きっと、忘れてしまう」
まあ、そんなんで簡単に忘れられるわけがないというのは、人類の歴史で数多作られてきた小説・詩・歌などが証明しているわけですが・・・。
それでもとにかく綺麗にお利巧に振舞おうとしてしまうのも、青春の若さというものでしょうか。
Cメロ~ラスサビ
曲の最後となるここでも「白」=「穢れ」=「罪の象徴」というモチーフが登場します。
黒板(外面)に白いチョークで書いた本当の想いをひとつ消し去る度に、心(内面)にしまいこんだその想いは私の心に消えない白いシミを作る、という負のループ。
そうすることと引き換えに、表面的な人間関係は「見せかけの幸せ」として保てたとしても。
そして、親友の悲しむ顔なんてみたくない、ちゃんと応援したいと思っているのに「描いた想いは今でもまだ、消せないまま」
まあそりゃそうでしょう。そんな簡単に割り切れたら苦労しないよお嬢さん・・・(偉そう)
さあ、ついに最後です。
「白い羽が舞い散って空の果てに消える時
黒い壁を涙がそっと、流れてゆく」
「白い羽が~消える時」の部分ですが、あくまで想像ですが「完全な失恋の瞬間」を表しているのではないでしょうか?
「彼」と「君」が正式にカップルになった、それによって自分の恋は完全に終わった。
それによって自分が飛び立つ羽は消え去った。
もしくは、穢れた黒い自分とは対照的な彼らはカップルとなり、もう自分の手の届かない遠い場所にいってしまった=白い羽を羽ばたかせて空の果てに消えていってしまった。
そして「黒い壁を涙がそっと、流れてゆく」は、失恋の悲しみの涙であると同時に、自分が罪から解放された描写であるようにも思えます。
黒板消しでは消しきれないこびりついたチョーク跡を完全に消し去る方法は、水を含ませた雑巾で拭き取る(水で洗い流す)こと。
彼が完全に手の届かない場所に行ってしまったということは、雑な言い方をすればもうワンチャンも無くなったということです。
それは悲しいことだけど、同時に親友を裏切ってしまうかもしれないという罪悪感・自己嫌悪感やワンチャンを期待する未練がましい気持ちから多少は解放されるということでもある。
(同時に、そう簡単に割り切れる失恋でもないとは思いますが)
なので「黒い壁を涙がそっと、流れてゆく」は、悲しみと同時に自分の罪から解放されて行くような気もする、というイメージを筆者は感じました。
まあ、あくまでも一時的な感情で幸せそうな彼と君を見たらまたドス黒い感情が湧いてくると思うんですけどね。
人間そう簡単に恋を諦められるものではないですし。
でも「失恋は絶望であると同時に、僅かな希望にしがみつく苦しみの終わりである」というのもまた真理だと筆者は個人的には思うんですよね。
なので、「黒い壁を涙がそっと、流れてゆく」はただ単純に失恋の悲しい涙ではなく、同時に葛藤から解放されるという一周回った妙な解放感も含んでいるように感じます。
これは筆者個人の感想なので、色々議論の余地があると思います。「そうは思わないな」って方も当然いるはずなので、違う解釈あればコメントなどでお気軽に書いて頂ければ大変嬉しいです。
あとがき
というわけで、初めて三月のパンタシアで記事を書いてみましたがいかがだったでしょうか?
書き始めてみると結構細かく言及出来る部分があって、やはりリクエスト企画は自分が普段触れないタイプの曲から刺激をもらえる良い機会だなあと再認識しました。
調子に乗ってあと4曲もリクエストを受け付けてしまったので、責任取って頑張って執筆したいと思います()
ではでは、また次回お会いしましょう。
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