生ける者の忘れ形見

陽の光も削られる森の奥
木々に覆われる硝子の棺に
眠る 少女

荊が茂ることなく
城にも守られぬ
真白の少女こそ
生ける誰かの忘れ形見

生きてゆく
成長する
道の途中に
捨てたことすら知らぬ間に捨てられた
少女の魂

何人触れえぬ
玻璃の棺に納められ
誰を待つのか

還れず
帰れず
仮死状態の心臓も
いずれ刻を止める

それでも時折
森を踏みしめる音がする
忘れかけたあの子を
思い出した貴女が
連れて行ってくれるのよ
止まっていた刻が動き出そうとしているわ

霧の迷宮を抜け
どうか逢いに来てください
花は貴女を惑わさない
鳥の青い羽音がきっと貴女を導きます
風もいつか晴れるから
月が真昼に照らす柩には

少女の貴女がいる


©2014  緋月 燈

AmijakanWatch https://twitter.com/AmijakanWatch/status/524567970316423172 様より。

薄暗い森、仮死の白い少女。脳裏の情景を紡ぎました。

BGM:志方あきこ「白夢の繭~Ricordando il passato~」

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