糸をほどいて

よれた糸を解いて
そっと元に戻すのは
なんて大変で とても根気のいること

絡まってしまったことに気付かずに
進んでしまったから
どこが根っこなのか探すのも
ほどくのも大変なの

でももう気づいてしまったから
なかったことにはできないの

ゆっくり ゆっくり
自分で納得しながら
頷きながら ほどいてゆく

それは時に痛みも伴って
生身の心臓を晒すような
柔らかな芽を冬風にあてるような
つきりとした痛み

でもその痛みすら
どこか愛しくて
ゆっくり ゆっくり
ほどいてゆくの

そうしている間にも
世界は流れていて
まるで流れの中に立ちすくむ仔鹿のよう
震えながらも必要な時を紡いでゆく

でもね 大丈夫
もう少しだから
この冷たさの先にはきっと
今と違う世界に会えるわ
雄々しく佇む立派な鹿になる

それがきっと本来の姿なのだから


©2015  緋月 燈

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