雨の果て

雨粒の鼓動がきこえる
脈打つように
息するように
精一杯うたってる

君たちは
どこまでが君たちで
どこまでが君たちでないのだろう

地上を
天を
海を
命の狭間を巡り
やがて雨に還るとき

君たちは君たちなのか

たとえば同じ場所に還ってきて
出逢えたら
私を憶えているだろうか
天文学的確率ですれ違った
たったひとつの雨粒

なのに君たちは確かに残してゆくんだね
懐かしい香りだけ

雨の匂いが
いつもどこか懐かしいのは
巡りゆく雨粒の旅路に
どこかの故郷があるからだろうか

君たちが通りすぎた場所
私が憶えている所はあるだろうか

だけど、ああ君が
巡り還ってそれでもなお
いつまで経っても雨粒のままなら
私もきっとどこまでも私
大樹の根は追いきれない

だから今、
瞬の時を刹那の時を
ひとつひとつ積み重ねて
遥かな明日を迎えにいこう
微笑みひとつ携えたままで


©2015  緋月 燈

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