遠いあなたへ

心の水面をざわつかせる
風が吹き荒ぶよ


ねえ 声をきかせて
どこにいるかもわからぬあなたに
向かって声にならない声で叫ぶ


ねえ 声をきかせて
大丈夫だよって言って


ほかでもないあなたの声で
わたしに言ってきかせて


わたしはあなたを求めてやまない
あなたと許しあえる
そんな未来を願っている


涙にできない傷に手をあてて
言葉はもういらない
静寂の中にあなたを感じる
傍にいることで支えあえる
あなたの存在に微笑みをおぼえる

あなたの存在に泣きそうになってしまうこともある

もちろん それは哀しい涙ではないけれど


魂の奥底で
わたしはあなたを求めている
いくつもの輪廻を越えた涯て
あなたは其処にいてくれるのでしょうか

雨上がり 緑が混じる道を歩くと

ふと感じる匂いに

からだの一番深い場所から

眩暈にも似た 込み上げるような懐かしさを憶える

記憶とすら呼べないくらい小さな欠片が

わたしのなかでざわめく


それは遠い記憶

夢にも似た、でもわたしのなかに確かに在るあなたとのつながり

手繰り寄せようとしても朝露のように儚い


だけどわたしはあなたに辿り着きたい

あなたに逢いたい

わたしはあなたに出逢うために生まれてきたから

逢いたい

それだけを胸にわたしは生きている



©2014 緋月 燈

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