そっと、そっと、綴じるようにした。

図書館で読まれるのを待つ書物のように
ひっそりと、お行儀よく
佇んでいた。

感情の波間を凪ぐ
つるりとした皮膚を纏って
何も感じないこと
秘めることが美しかった

それが本質ならよかった

幽かな波紋の奥底には激流があった
微笑みの影には悲しみもあった
沈黙には無数の想いが漂っている
言葉の鏃は氷山の一角
ぬくもりをあたためるのは幾億の愛
歪みが息をうまくさせない
がんじがらめの糸はもう拗れる前に

綴じたものを、紐解いてゆこう
もう、必要はないから
綴じられる時が来るとしたら
さいごに眠る時だけでいい

これから綴ろう
感じるままに

©緋月 燈

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