石の花

遙か 時 遡る
人が忘れし遠き日に
少年は少女と出逢い生きていた

二人が世界 世界は二人
愛しあうことが幸福
死が二人を別つまでは

願いを叶えよう
愛することだけ願った君の
最期の望みを叶えたい

貴方の傍にいたい
涙と共に零れ落ちる
願いは儚くて宇宙の塵のよう

残された最期を二人涙せぬようにと
少女は絞るように
唇震わせた

ああ、花を
枯れることなき石の花
二人が永遠になれるような花が欲しいと
願ひて息絶えた

遺されし少年は
旅立ち探し続け
遂には身体も失って
風になっても探し続け

吐息のような砂粒を
集め集めて 幾年か
石の花を咲かせました

今はいない少女の為
咲かせた花を守りながら
今日も風は空を駆ける
いつかどこかに現れる
少女の魂に出逢う為に

そしてキャラバンのざわめきが聴こえる
遠く でも近づく懐かしい鼓動
花の香に惹かれるように
砂漠の波間を越える

風の待つ
あの石の花へと


©2014  緋月 燈

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?