老人と月

満月を燭台に掲げて
闇いろの夜に捧げる祈りよ

月の満ち欠けと共に
背負い続けた背は
過ぎゆく時を沈黙に語る

語り部には重すぎて
葬るには罪深い
悔いよりも重い十字が
祈りの月に照らされる

救いすら求めず
祈るその背に
与えられるものはない

老いた細腕に嵌め込まれた時計は
あの日から動かない

その身隠れたとて
錆びさせた時は動かない

罪を抱えたまま
炎に消えてしまうから。


©2014  緋月 燈

AmijakanWatch https://twitter.com/AmijakanWatch/status/524194803605450754 様より。

時計を見た瞬間浮かんだタイトルから紡ぎました。

月夜に祈る老いし人の背中に刻まれたもの。

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