放射線科治療医専門医試験、合格体験記(2022)。

こんにちは。
今回、匿名で2022年に"放射線科治療医専門医試験"を合格された先生からの合格体験記をいただきました。

放射線科研修読本の読者は非専門医の先生が多いと思うので、共有させていただきます。試験の内容など具体的なものには触れておりませんのでご了解ください。

”放射線科診断専門医”についても合格体験記を今後公開する予定です(2022年合格)。

【ゆる募】放射線科(一次)専門医試験の合格体験記について書いてくださる方を募集しています。るなのtwitterアカウントまでDMください。よろしくお願いいたします。

それでは以下、合格体験記です。
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2022年8月に放射線治療専門医試験を受け、無事合格をいただきました。私の体験を簡単に書いてみます。これから試験を受ける方の少しでもお役に立てば幸いです。

専門医試験対策の勉強は、7月上旬ごろから始めました。もともとはもう少し早く開始しようかなとぼんやり考えていたのですが、別のタスクに追われて手が回りませんでした。全ての試験勉強は過去問演習(とそれに付随した調べ学習)で必要十分である、というのが持論なのですが、今回ばかりは今後の実務の中でもずっと必要になる放射線治療そのものに関しての試験だったので、「ちゃんと勉強する」ことにしました。と言っても、過去問演習の前に1冊通読しただけなのですが…。通読したのは、放射線治療医を志す者なら誰でも知っている、「放射線治療計画ガイドライン 2020年版(日本放射線腫瘍学会 編)」です。なんだかんだ放射線治療業務に5年以上も携わる中で、同書は既にところどころ繰り返し読んでいたのですが、じっくりと通読したことは恥ずかしながらありませんでした。既知の事実も多かったものの、押さえてなかった細かい知識は意外と多く、大変勉強になりました。特に、実務で散々触れて既に体に染み込んでいる知識についても、その根拠や考え方などを改めて知ることができ、初学者のときとは違った多くの発見がありました。この事実だけでも、ガイドライン通読から勉強を始めて良かったなと思いました。

理由は後述しますが、結局じっくりとガイドラインを通読し終わったら既に8月中旬になっていました。そこから筆記試験の過去問演習に入ります。問題は日本医学放射線学会のサイト内で無料ダウンロードし、直近のものから遡って解いていきました。ここで、治療専門医試験の解答はまとめられていないという大きな壁に直面します。しかも、治療計画ガイドラインに書いてある内容がそのまま素直に述べられているような選択肢は少なく、80%くらい正解だろうと思えても、結局それを確かめるために一つ一つ調べなければなりませんでした。さらに厄介なことに、問題によっては調べても正解がわからないものもありました…(私のサーチ力不足なのでしょう)。さすがにそんな問題は多くないので、できるだけ気にしないようにして進めていきました。調べながらだと時間もかかり、最終的に3年分の過去問演習で終了しました。時間が足りなかったのもありますが、さらに新しい年度の問題を解くより、3年分の内容およびその関連事項を確実に押さえていくほうが良いだろうと判断しました。ただし、過去問を解いていて思いましたが、過去問そのままの出題は非常に少なく、周辺知識を無視して過去問だけを押さえるような勉強をしていたらかなり厳しい戦いになると感じました。

口頭試問に関しては、筆記試験の勉強が終わった後に始めました。医局の先輩たちが2017年、2018年、2021年の問題再現をしてくれていたので(ひたすら感謝しかありません)、それを見て勉強しました。筆記試験と打って変わって、こちらは素直な出題が多く、また基本的にはメジャーな疾患ばかりを問われるようで、サクサク勉強は進みました。ちなみに、2021年は新型コロナ対策で口頭試問の代わりに記述式の筆記問題となっていましたが、内容は従来の口頭試問と同等のものでした。口頭試問は受ける時間帯によって当然問題が変わるため、また完璧に問題を覚えるのは不可能であるため、再現で過去問全体は到底カバーできませんが、出題内容が素直なので、しっかり基礎事項を頭に入れていれば、当日ぶっつけでも十分対応できそうだなと感じました。

勉強していく中で、繰り返し問われる割に実務での経験だけでは対応が極めて困難な二大分野があると気づきました。TNM分類(病期含む)と予後です。この骨の浸潤があるとT3なのかT4なのか、生存率は60-70%なのか80-90%なのか、くらいの内容まで平気で問われるので、超メジャー疾患を除けばなかなか無勉強で正答するのは難しいです。その上何かと関連付けて覚えるというのも難しいため、こればっかりはひたすらがんばって詰め込みました。直前詰め込みでもそのまま役立つため、試験当日の勉強はこの2つの復習だけをやりました。

対策の内容は以上なのですが、今回の勉強を通じて、社会人が勉強することの大変さを強く痛感しました。学生のときは、せいぜい部活やバイトと勉強を両立すれば良かったのに対し、今回の勉強は日中フルで労働し、帰宅すればまだ小さい子供(私の場合です)の子育てや家事に追われ、ヘトヘトになった夜にやっと勉強時間が生まれるという日々でした。結局寝落ちしてしまうことも多く…。治療計画ガイドライン1冊を通読するのに1ヶ月もかかってしまったのはそのためです。私の場合は通勤電車の時間が長かったので、その間も勉強をしました(というかそれがメインの勉強時間でした)。大変ありがたいことに放射線治療計画ガイドラインは日本放射線腫瘍学会のサイト内で章毎に全て無料ダウンロード可能なので、電車内で大きな成書を広げることなくスマートフォンやタブレットで勉強することができたのは幸いでした。

こうして迎えた試験当日、新型コロナ対策で記載した体調に関する事前問診票を提出し、マスク着用のままホテルの1会場内で筆記試験が行われました。内容は、過去問とほとんど被らないという、ある意味過去問通りでした。ただ私の印象ですが、従来よりもマイナー疾患からの出題がかなり増えたと感じました。そのぶん難化したと言ってよい気がします。結局無理ゲーな問題はだいたい間違え、みんなできそうな問題はだいたいできたという手応えでした。筆記試験会場に入るときに受付で翌日の口頭試問のスケジュールが個々人に渡され、翌日は集合時間までにホテルの一室に行くという流れでした。ホテルの1フロアが貸し切られ、一つの時間帯に12人ほどの受験生が順番にホテルの部屋を回りながら各部屋で1人の試験官から20分の口頭試問を3部屋分受けていきます。口頭試問も、過去の再現と全く同じ問題にはほぼ当たりませんでしたが、やはり素直な出題が多かったので、だいたい正答することができました(と思います)。はじめはやや緊張しましたが、自信を持って問題が答えられる実感とともに冷静になることができました。試験が終わったら、未来の受験生のため、忘れないうちにできる限りの口頭試問問題再現を作りました。

土曜日まで試験を受け、翌週水曜日には日本医学放射線学会のサイト上で合格者の受験番号一覧が発表されました(発表が早いのはすごくありがたいです)。そこからさらに1週間ほどで合格通知が自宅に郵送され、晴れて試験の全工程が終了しました。

総じて、特に筆記試験に関しては、「そこまできいてくるのか…」と思わせる問題も少なくなかったですが、そのぶん付け焼き刃は通用せず、日頃からしっかり考えたり調べたりしながら放射線治療に携わっているかが問われるような試験になっているので、放射線治療専門医という肩書きを得る関門の試験としては、ある意味適切なのかもしれないとも思いました。以上、まとまりないですが私の体験記でした。放射線治療専門医を志す先生方、どうか頑張ってください。

画像診断を中心とした医学系の記事を投稿したいと思っています。よろしくお願いします