現代のわたし達は知ってる みんなが乗ってるひとつのフネ 舵を取れる人間はいない 行き先を委ねる人間がいるだけ 宙が決めてる通りに 見えない力の通りに 一生顔さえ見ない乗客もいて 声さえ聞かない乗客もいて そんな中で 一番とか二番とか 優れてるとか劣ってるとか 富とか名誉とか 人気とか喝采とか 宙は知ってるのかな この船に起こる日常のワケ 二日月
右手が上に来るように 左手が下に来るように 自分の背中で 手を伸ばし合う 指先が触れて 軽く組み合う 左手が上に来るように 右手が下に来るように 今度は届かない わたしとキミのよう 理由は色々あるだろう たった一つではないんだろう それでも諦めないで 手を伸ばし合っていれば そう遠くない未来に 指先が触れ合う日が来るでしょ 二日月
賑やかだった庭の 枯れた葉や枝を取り払う ちょっとの虚しさと 共に姿を現す暗い土 季節が移ろうことは 怖いことじゃない 受け入れて生きている 時代が移ろうことも 怖いことじゃない 受け入れて生きるだけ 二日月
情報の暴風警報 敵意の雨あられ ぶつかり合いの波しぶき 新天地に渡るため 毎日少しずつ建ててた 小っちゃな舟に 載せる人は誰だろう 載せるものは何だろう このリストは完成急務 二日月
お日様は容赦なく かんかんと照りつける 雨水は盛大に ざんざんと降り注ぐ 暴風だって てかげん無くて 汗を流した ずぶぬれになった 踏ん張って わたしの中に 滋養が詰まった のになぁ 二日月
むかーしむかし 白いお米を食べられるのは ほんの一握りの 身分の高い人達だけだったとさ 何かが身分を決めて 誰かが身分を決めて またまた今は 白いお米を食べたくても 誰もが当たり前に 食べられない世の中になったとさ むかーしむかし…ん? 二日月
足元は重みでフラフラ 両手は買い物荷物で塞がって 明日の分まで要るかな? 今日に必要な分があれば それでいいんじゃない? 空から見守るあの半月は 悲しんでるんじゃないかな? 汗だくで家路を急ぐ 丸い背中のわたしを見て 二日月
ほんの時折溢れ出る 普段は眠ってる記憶 頬を伝う涙みたいに 温かくて塩辛い 今渾々と溢れ出る 過去から続く水脈 わたしの生を潤してる 意外な泉の正体 陽光と華々に目を奪われ 気付かなかった正体 二日月
幕が降りた時に 気が付いちゃったんだ 目の前の舞台で 夢中になっていたけれど 血が滲むような努力で 自分以外の思惑を踊ってた ほらここにも ここにも、ここにも操り糸が ハサミを見つけて 切っちゃお、一本また一本 次の舞台では わたし、ヒトに戻って踊るよ 二日月
辺りの闇が深くなると 姿がはっきり見えて来る 生まれ落ちた瞬間から 自然が呼吸してるおかげで 燃え続けるこの身体 この焔がキミの目には 綺麗に映っていますように いつかは尽きる灯火でも ほっこりキミを温めていますように 二日月
今は写真立ての フレームの中で笑ってる 小さい頃から 休みの日にはドライブに 見つけると家族も 揃って美味しいお店に お正月には毎年 欠かさず母を映画館に 連れて行ってたあの人 もう此処にはいないけど 大変な事があっても 訳もなく楽観的で 切り開かれてない そんな場所に惹かれちゃう 家族がやりたい事を 尊重して応援する 向こうで手を振る あの人譲りのこの性分 二日月
キッチンには 洗われるのを待つ食器たち iPhoneには 返されるのを待つメッセージたち 頭の中には 決められるのを待つ今晩のメニューたち 今わたしの手には 愛する人が焼いた珈琲 口の中には 愛する人がくれたショコラ 目に映るのは 青い空を渡る美味しそうな雲 このひと時が また暮らしを動かしていく 二日月
あの時伝えられなかった あの人に伝えられなかった ちゃんと見えてなかった ちゃんと受け取れなかった 想い 優しさ 哀しみ 愛情 わたしの中で眠っている 今も時のゆりかごに揺られて もう伝えられなくても 全部溶けあってわたしになってく 二日月
去年は秋になるまで 誇らしげに咲いてたあの薔薇 ようやく会いに行ったら 切り摘まれた痕 色彩が集ってたはずの 駅まで並ぶおうちの庭先 花達は取り去られて 真っ赤に艶々と垂れるトマト 子らの遊ぶ姿が見えるのは 太陽が高くなるまでのひと時 ショッピングセンター建設中 さわさわ揺れてた並木は消えた 頭上から聴こえる無邪気な唄 小さな雀の、小さな小さな 二日月
たくさんの人が お祭りを楽しんでる 思い思いに動くとき 人波は荒れたりするけれど ちょっとだけ他人を 見て考える たとえぶつかっても この肩をまるくしてれば お互い少しは 痛くないかな 二日月
人々が奏でる 好きなように奏でる 色とりどりの音楽が流れる 耳を傾ける それでいいんだ 楽しんでいいんだ 音楽も 優しさも 思いやりも 夢も 同じ色してなくていい 色彩に溢れる眩しい世界 ふいにわたしを 立ち止まらせる その美しさを とことん味わえさえできれば 二日月