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同調率99%の少女1~13

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那珂が主人公のオリジナル小説。 鎮守府Aの物語 1~13巻分まで
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2015年7月の記事一覧

同調率99%の少女(2) : 幕間:鎮守府のある日々

--- 6 幕間:鎮守府のある日々 最初の出撃任務が終わり、しばらくは本格的な出撃のないのんびりした日々が続いた。もともと激戦区の担当の鎮守府ではないため、鎮守府Aは戦いのための鎮守府というよりも、周辺海域の警備・防衛・地域からの海域調査の役割がメインなのだ。とはいえ深海凄艦が担当海域に出没することもあるので撃退もしばしばするし、海上警備がらみの依頼もたまに入ってくるので那珂たちはそれをこなす。  本格的な出撃任務はないとはいえどのような任務でも仕事は仕事。那珂は一切妥協せ

同調率99%の少女(2) : 夜戦

--- 5 夜戦「……で、どうするの?また無人島の裏側まで行くの?」と五十鈴。 「うん。さっき深海凄艦と戦ったポイントの近くまでは行きたいかな~」  進む間、那珂から懸念していることを聞く五十鈴。 「深海凄艦の子供ねぇ。そう考えると親が近くにいるかもしれないってのはわかるわ。ていうか、あんたあの戦いの中でよく見てるわねぇ……」  那珂の観察力に感心する五十鈴。えへへそれほどでも~とおどけて照れ笑いする那珂。五十鈴は、那珂がおちゃらける表面の態度とはうらはらに観察力と真

同調率99%の少女(2) : 初勝利、気になること

--- 4 初勝利、気になること 那珂の初戦闘はなんなく勝利であった。那珂は確かに怖くはなくなったが、深海凄艦のその生体が気になった。  その深海凄艦の生体が(一般的には教えられていないとはいえ)子魚のような特徴と、蟹の幼体のような特徴を持っていたように見受けられたからだ。大きさは普通の魚類とは違うとはいえ、あきらかに成長途中だ。撃破する前にところどころ観察していた那珂はふとそう感じた。  無人島裏側から本土よりの方に戻る途中。駆逐艦の二人と五十鈴が勝利に喜んでいる最中、

同調率99%の少女(2) : 初遭遇

--- 3 初遭遇 月火水と、無人島付近の調査は何事も無く過ぎ去った。那珂が気になったことは杞憂に終わるのだと本人は感じていた。それならそれでいいかと。  しかし五月雨たちが護衛の途中で遭遇した深海凄艦の出た日、つまり木曜日。その日の夕方の無人島付近の調査は那珂たちにとっても違う結果が待っていた。  その日の夕方も午前と同じように出撃した那珂・五十鈴・村雨・夕立らは、無人島の本土よりの海岸線に沿って岩礁付近を大きく迂回し、裏側、つまり本土とは逆の海岸付近を探索しようとして

同調率99%の少女(2) : 初出撃

--- 2 初出撃 艦娘の出撃任務は、近隣企業や団体が鎮守府に直接依頼する内容のほか、大本営から依頼される内容の2種類がある。鎮守府に直接依頼される内容による出撃任務は、学生艦娘であろうとどんな内容でも参加させることができる。(ただし学校側の部の顧問の先生の許可を得る必要はある)  今回、鎮守府Aに舞い込んできた出撃任務は、フェリーの運行会社からの依頼によるものだった。そのため鎮守府Aの艦娘たちは作戦を立案した那珂の言うとおりのメンツで出撃することになった。  那珂の立案

同調率99%の少女(2) : 出撃に向けて

=== 2 鎮守府の日々1 === --- 1 出撃に向けて ある日、鎮守府Aに出撃任務が舞い込んできた。内容自体は護衛任務メインで難しくはないが期間的にボリュームがある。まだ人が少ない鎮守府Aにとっては十分ずっしりした出撃内容だ。提督と五月雨が執務室で作戦会議をしていると、そこにノックをして那珂が入ってきた。初めての出撃任務ということで、先にどういうものか知っておきたいと思ったためだ。  会議中だったが特に人を制限していなかったので提督はせっかくなので那珂を作戦会議に混

同調率99%の少女(1) : 幕間:裸の付き合い

--- 8 幕間:裸の付き合い 演習が終わり、五十鈴はペイント弾により体中ベトベト、那珂はそれなりに動いたので汗をかいていたのと、演習用プールに浸かったので身体の感覚が気になっていた。なので艦娘に対して認められた入渠と呼ばれる、休憩をとることにした。  入渠には2種類の意味がある。艦娘が装備する艤装・兵装のメンテナンスという機械的な作業と、艦娘の心身のケアを図る運用だ。  職業艦娘と呼ばれる艦娘以外は定期的な給与は出ない(出撃手当など、不定期・一時的な金は出る)ため、その

同調率99%の少女(1) : 発揮された実力

--- 7 発揮された実力 提督から、同じ軽巡仲間である五十鈴との演習があると聞かされた那珂は、実質初めての戦闘に胸の鼓動の高鳴りを感じていた。戦いは特に好きでも嫌いでもなかった那美恵だが、今は那珂。世界を救うために戦う艦娘なのだ。ただの○○高校生徒会長ではない。肩書や立場がはるかにすごいことになるこれからに鼓動の高まりが止まりそうにない。  その初めての活動が五十鈴との演習だ。彼女のことまだよく知らないので好きでも嫌いでもないが、熱いところもある那美恵は、この演習を通じて

同調率99%の少女(1) : 嫉妬する同僚

--- 6 嫉妬する同僚 那美恵は生徒会の仕事も忙しかったが、その合間や休日で鎮守府Aにある演習用のプールで訓練を続けた。提督からは休日の鎮守府勤務は学生は禁止と言われたが、どうしてもと願い出た。熱心な那美恵に心打たれたのか、提督は自分も休日出勤するその付添という形で那美恵を出勤させることにした。  演習用のプールで海上を進む練習、砲雷撃する練習、その他立ち居振る舞いを何度も練習する日々が続いた。  もともと運動神経がよく、アイドル目指しているためダンスの心得があるなど、

同調率99%の少女(1) : 提携ならず

--- 5 提携ならず 一方で那美恵の高校では、なかなか艦娘部の発足と鎮守府との提携の話が進まないでいた。学校側がそれほど乗り気ではないのだ。原因の一つに、職業艦娘にさせられる、志願する女性教員がいないのと、技師免許を取得したいと願い出る教員もいないのだ。もう一つは、生徒を戦いに巻き込みたくないという校長の考えがあった。  大昔、那美恵たちの学校の近くにあった小学校(20xx年現在ではすでに廃校になって久しい)では、ある集団との戦いに生徒が巻き込まれた。撃退はしたが、その小

同調率99%の少女(1) : 着任

--- 4 着任 着任が決定し、那美恵は提督から直々に合格の連絡を受けた。その日は学校で午前の授業が終わり、お昼を食べている最中だった。生徒会とは関係ない普段仲の良い友人たちとしゃべりながらお昼を食べていると、那美恵の携帯が鳴った。 「はぁい。」 「もしもし。私、鎮守府Aの提督の西脇と申します。こちら光主さんの携帯電話でしょうか?」 「あ、西脇さん?はいそうです光主那美恵です。」  相手は鎮守府の総責任者ということと、電話越しということで普段のノリは控えめに提督に挨拶

同調率99%の少女(1) : 那珂との出会い

--- 3 那珂との出会い 学校との提携の話を進める一方で、那美恵は一応普通に艦娘の試験を鎮守府Aに受けに言った。たまたま、新しい艤装が配備されたのだ。軽巡洋艦那珂、川内の艤装だ。  学校が鎮守府と提携するにしろしないにしろ、艦娘に興味を持ち始めたので自分を試す意味も込めて、試験を受けに行った。  一般常識や最低限の学問知識の筆記試験、運動能力の試験そして、艤装との同調試験があった。筆記試験も運動能力の試験もなんなく合格し、那美恵はいよいよ本物の艤装を目にし、同調と呼ばれ

同調率99%の少女(1) : できて間もない鎮守府

--- 2 できて間もない鎮守府 那美恵は電車に乗り、となり町で降りた。駅や町中では鎮守府がどうのこうの艦娘がどうのこうのという触れ込みや雰囲気はない。まだ町の人は自分らの町で鎮守府の運用が始まったことに気づいていない人がほとんどである。  腕に付けたスマートウオッチで地図とルート案内を確認した。40年以上前の骨董品に近い物だがまだ運営会社もあるので使える。祖母からもらったそのスマートウオッチを彼女は非常に気に入っていた。那美恵は物持ちがよい。  鎮守府Aがあるという場所

同調率99%の少女(1) : 生徒会長

--- 1 生徒会長 光主那美恵はある高校の生徒会長を勤めていた。彼女は学校の成績良く、スポーツも万能で性格は少々軽いところはあるが明るく嫌味がない。校内でも男女ともにそれなりに人気がある、非の打ち所がないまさに文武両道、パーフェクトに近い少女だった。彼女は祖母が大昔にある小学生集団の指導者、のちにアイドル活動をしていたことを知り、自身もアイドルを目指すべくまずは身の回りのことから完璧にと努力を重ねていた。  が、同じことの繰り返しで機械的に過ごす毎日、そろそろ新しい要素を