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終わらない夜は、ない

前夜(桃花鳥)

…さだまさしの歌には「反戦曲」が多く存在する。
その事は以前にこのマガジンでも書いた。
この「前夜」も、反戦の意思を込めた曲と言えるでしょう。

「桃花鳥」と言うのは「トキ」の別名です。
とうかちょう、とは読ませず「ニッポニア・ニッポン」と読ませるところが、いかにも彼らしい。

この曲が作られた当時、国内のトキはほぼ絶滅状態一歩手前でした。
私も見に行ったことがありますが、大きなケージ(…とは言え、大空と比べるべくもないが)に、たった2頭のトキが暮らしていて、胸に迫るものが有ったのを覚えています。

歌詞に「写りのよくない写真を…」とありますが、新聞の網点写真だからというだけでなく、トキのケージは見学できる場所からかなり離れていて、私は500㎜に2倍のテレコンバーターを着けて撮った写真を、後にハーフ焼き(35ミリフィルムをハーフ版のマスクで焼いたもの)して貰って、ようやく見られるようにしたものです。
当然、写真は荒れてブレていて、酷いものでしたが。

現在は繁殖活動の成果も上がり、推定で500羽以上の野生のトキが生存しているそうです。
個体数としてはまだまだ少ないですが、これからもきっと増え続けて行くことでしょう。

…トキが増えていくことは良いことです。
しかし「その事」だけに注視して、以前は絶滅寸前であった「事実」を忘れてしまう、もしくは「無かったことのように言う」ことは避けなければいけないのです。

「前夜」は、これからも起こり得る事です。
再びトキが生存の危機に陥ることを避けねばいけない。
また、違う動物が人間の仕業で消えていってしまうことも避けねばならない。
そういった意味で「前夜」とは「今この時」なのです。

そしてこれはそのままに、人の世にも当てはまります。
また世界に戦争の火が燃え出し始めています。
力無い人々が、力ある人々の放つ劫火に焼かれ、次々と死んでいきます。
一度放ってしまった火を消すことは容易な事ではありません。
滅ぼすという事が、破壊の最終段階である以上、破壊を中途で止めることは終結を先伸ばしにしたに過ぎないからです。

トキは幸いにも「まだ」生息しています。
いつまでも平和な夜が続くという保証は、誰にも出来ないのです。

PS
「前夜」は、私は反戦歌として、世界に通用する歌だと信じています。
歌詞を英訳して、世界中に流布させることは出来ないものでしょうか?。




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