日本とアメリカのネット文化とQアノン

コロナも落ち着いて平和な日々が続いている.一方でインターネットはまたもや色々なネタで炎上しているようだ.最近はTwitterの居住地をマイナーな海外地に変更したおかげで,意味不明なトレンドを見させられることなくリアル世界に根ざした平穏な生活を送れていることに感謝である.

ところで先日U-NEXTで独占配信されている「Qアノンの正体/ Q:INTO THE STORM」というドキュメンタリー映画を視聴した.遠いアメリカのおかしな陰謀論かと思っていたQアノンが実は日本と密接な関係性があり,「2ch」や「札幌」などとのキーワードと共に「実はQアノンの発信地は日本ではないか?」という結論で締めくくられているという衝撃の内容であった.

私自身が2chに出入りしていたのはせいぜい2000年代前半までだったので,その後管理人が交代して2chが衰退していく時期や,アメリカで2ch類似の掲示板が大きく発展していたことなどをほとんど知ることはなかったのだが,この映画の第2話はそのあたりの歴史を詳しく解説してくれている.そしてQアノンが2chの系譜を汲む画像掲示板の8chanで大きく発展したこと,その8chanの管理人が日本在住であったことなど,インターネット世界における現在進行系のアンダーグラウンドな世界と日本ネット文化に深いつながりがあるということは,一部のネットオタクを除いて多くの人にとって想像もできなかったことではないだろうか.

そしてさらに興味深かったのは,「温泉むすめ騒動」などに代表され,ここ1年で急激に増えているアニメやゲーム文化とフェミニズムとの対立が,実はアメリカでは「ゲーマーゲート騒動」という形で5年以上前の2014年に起こっていたこと,それに一部が対抗していく中でQアノンやトランプ支持者が生まれていったという歴史である.日本も今後同じような動きが出てQアノンのような大きな分断が生まれていくのだろうか?

先のことは誰にも予測できないが,日本では2000年頃に匿名掲示板がアメリカよりも先に発展し,一旦衰退期を経て今のゲーマーゲート騒動のような論争が生じた一方で,アメリカでは匿名掲示板の発展とオタク文化とリベラル思想・フェミニズムとの対立が近い時期に起こっており,その辺りのタイミングの違いがQアノンに類似した陰謀論が今後日本で広まるか広まらないかの鍵になるのでないかと個人的には感じた.

いずれにしても特定の「思想」や「ただしさ」を押し付けようとするリベラルやフェミニズムの主張に対抗する形で,自然にオルタナ右翼や陰謀論が発展してきたという歴史的事実は目を背けるべきではなく,そもそも諸悪の根源となった「上から目線のリベラルや極端なフェミニズム思想を広めない,押し付けない,学術界に跋扈させない」ことが,陰謀論の広がりや分断による巨大なコストを避ける最善の方法であることは歴史を見れば明白で,今後もそういう考えはぜひ広めていきたいと思っている.

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