(下書き)プラーテン「ブゼント川の墓」(ドイツ詩100選を訳してみる 7)

(今回の詩の訳は今は納得できるものになりそうにないので、下書きという形で一旦公開しておきます。)

アウグスト・フォン・プラーテン(1796-1835)という詩人は、形式主義者といわれることもあるらしい。彼に先立つロマン主義の詩人たちが詩の形式にルーズだったのに反発したのだという。今回の詩も、1行が「強弱×8」というリズムを厳格に貫いている。

詩の舞台は5世紀初頭、ゲルマン民族大移動でイタリアに侵入した西ゴート族のアラリック1世(370?-410)の死と埋葬を描いている。

プラーテン自身もドイツを離れてイタリアに住んでおり、ブゼント川が見えるところに泊まっていたこともあったらしい。

Das Grab im Busento

Nächtlich am Busento lispeln, bey Cosenza, dumpfe Lieder,
Aus den Wassern schallt es Antwort, und in Wirbeln klingt es wieder!

Und den Fluß hinauf, hinunter, zieh’n die Schatten tapfrer Gothen,
Die den Alarich beweinen, ihres Volkes besten Todten.

Allzufrüh und fern der Heimath mußten hier sie ihn begraben,
Während noch die Jugendlocken seine Schulter blond umgaben.

Und am Ufer des Busento reihten sie sich um die Wette,
Um die Strömung abzuleiten, gruben sie ein frisches Bette.

In der wogenleeren Höhlung wühlten sie empor die Erde,
Senkten tief hinein den Leichnam, mit der Rüstung, auf dem Pferde.

Deckten dann mit Erde wieder ihn und seine stolze Habe,
Daß die hohen Stromgewächse wüchsen aus dem Heldengrabe.

Abgelenkt zum zweyten Male, ward der Fluß herbeygezogen:
Mächtig in ihr altes Bette schäumten die Busentowogen.

Und es sang ein Chor von Männern: Schlaf’ in deinen Heldenehren!
Keines Römers schnöde Habsucht soll dir je dein Grab versehren!

Sangen’s, und die Lobgesänge tönten fort im Gothenheere;
Wälze sie, Busentowelle, wälze sie von Meer zu Meere!
夜ごと コゼンツァのブゼント川の畔にくぐもった歌声が響く。
川の水がそれに答え 渦の中で声がこだまする。

川上へ 川下へ 勇敢なゴート人の亡霊が隊列を組み
部族で最も優れた男だったアラリック王の死を悼んでいる。

あまりに早く 故郷の遥か遠くで 王は墓に入らなければならなかった、
まだ若々しい金色の巻き毛が肩を覆っていたというのに。

ブゼント川の岸にゴート人が競うように列をなし
川を迂回させるべく新しい川床を掘った。

干上がった川床をさらに掘り起こし
そこに王の亡骸を埋めた、甲冑と馬とともに。

亡骸と見事な財宝を納めると それをまた土で覆った、
英雄の墓から草木が大きく育つようにと。

そうして再び川の流れは元に戻され
本来の川床でブゼント川は力強く泡立ち始めた。

そして男たちの合唱が響いた 「英雄の誉れの中で眠れ
ローマ人の卑しい強欲も決してこの墓をあばくことはできまい」

王を称える歌声はゴート人の隊列の中で鳴り渡った。
この声を運べ ブゼント川の波よ 運んでおくれ 海から海へ。

 *

ネット上で検索すると、ドイツやイタリアの学校でこの詩を暗唱したという投稿が見られる。ドイツだけでなく、舞台となったイタリアでも親しまれているというのが面白い。

この詩にインスピレーションを受けたネストーレ・カッジャーノ(Nestore Caggiano, 1888-1918)というイタリアの作曲家が、「ブゼント川の墓」(La tomba nel Busento, 1913)という交響詩を作っている。

 *

(メモ)
・ポーの The Raven と同じリズム
・日夏耿之介訳で読んでみたい

2019.5.8追記 訳し直してみました。


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