ボードレール「通りすがりの女に」(フランス詩を訳してみる 37) 11 ひよこのるる 2022年9月23日 22:30 Charles Baudelaire (1821-1867), A une passante (1855)街は耳を聾せんばかりに僕の周りでうなっていた。すらりとして 本式の喪服をまとい 凜とした哀しみを湛えた女が 通りすぎた、みやびやかに装った手で花模様の裾をつまんで ひらひらと揺らしながら。その動きは軽やかで気高く その脚は彫像のようだった。僕は 気がふれたように身をひきつらせながら嵐をはらんだ鈍色の空に似た その眼の中から蕩とろけるような甘美と 死に至る悦楽を 飲んだ。稲妻が走った……そして闇!――消え去ってしまった美しい人よ、君の眼差しで忽然と僕を生まれ変わらせておいて来世になるまでもう二度と会わせてくれないのか?どこか、はるか遠くへ! もう手遅れだ! おそらく決﹅定﹅的﹅に﹅!僕は君の遁にげ先を知らないし 君も僕の行き先を知らない、おお 僕は君を愛しただろうに 君もそれを分かっていたのに!(馬場睦夫、堀口大學、鈴木信太郞、金子光晴、高橋邦太郎、矢野文夫、佐藤朔、大宰徹雄、村上菊一郎、齋藤磯雄、福永武彦、粟津則雄、阿部良雄、安藤元雄の訳を参考にした。)La rue assourdissante autour de moi hurlait.Longue, mince, en grand deuil, douleur majestueuse,Une femme passa, d'une main fastueuseSoulevant, balançant le feston et l'ourlet ;Agile et noble, avec sa jambe de statue.Moi, je buvais, crispé comme un extravagant,Dans son œil, ciel livide où germe l'ouragan,La douceur qui fascine et le plaisir qui tue.Un éclair... puis la nuit ! — Fugitive beautéDont le regard m'a fait soudainement renaître,Ne te verrai-je plus que dans l'éternité ?Ailleurs, bien loin d'ici ! trop tard ! jamais peut-être !Car j'ignore où tu fuis, tu ne sais où je vais,Ô toi que j'eusse aimée, ô toi qui le savais !初出は1855年で、後に『悪の華』第2版(1861年)に収録されました。 *レオ・フェレによるシャンソン(1967年)があります。 ダウンロード copy 11 他の記事も読んでみていただけるとうれしいです! 訳詩目録 https://note.com/lulu_hiyokono/n/n448d96b9ac9c つながる英単語ノート 目次 https://note.com/lulu_hiyokono/n/nf79e157224a5 サポート