10代の恋愛(3)

吹奏楽部では、毎年夏のコンクールに向けて動くらしい。

ただその年までは何の賞もとったことがなかった。

部員が足りないとか、楽器のパートが揃わないとか、

顧問が名前だけの先生だとか、

色々理由はあるのだろうけど。

あたしらが入学した年に、

新入生がたくさん入部したらしい。

ちょうどその年に学校食堂と、部活の宿泊施設が出来た。

許可さえとれば、合宿に使える宿泊施設だ。

その夏、初めての合宿があると知らされた。

いつも2年と3年が指導してくれるのだが、

夏休みになると、OBが数人来て指導してくれる。

あたしらより7つ年上のフクイさんという人が指揮をしてくれた。

フクイさんは、浪人してまだ大学生だった。

OBのメンツはほぼ決まっていて、

ほどなくあたしとイカルとタカはOBと仲良くなり、

休みの日にボウリングに行ったり、

フクイさんの実家で集まって大富豪したり。。。

あの当時はボウリングと大富豪しかなかったのだろうかw

今から思うとすごいのは、OBが全員お酒を飲まなかったこと。


合宿は2泊3日で、滞りなく終わり、

コンクールでは見事、初の金賞に輝いた。

急遽、秋には初のコンサートを開催することになった。

町の公民館でのコンサートには、OBも演奏に参加する。

あたしの片想いも順調に片想いのままだった。


コンサートも終わり、3年生が引退し、部室内は寂しくなるけど、

あたしは相変わらず幸せな週末を送っていた。

かみひこーきさんが送ってくれるときは、

家の近い順にあたし、タカ、イカルの順だったのに、

いつの間にか、

遠い順、イカル、タカ、あたしの順になっていた。

最後にふたりきりになって、

あたしの家の近くに車を止めて、

そこで1時間くらい話し込んだ。

何を話すことがあるのか、ずっとずっと話は尽きない。

当時はまだ携帯電話などなかった時代なので、

かみひこーきさんの実家に電話したことが何度もあった。

用もないのに電話して、1時間も2時間も話をした。

あたしが自分の親に怒られるまでw

かみひこーきさんは電話につきあってくれた。

年が明けて、

バレンタインにはチョコレートと、

生まれてはじめて編んだ5本指の手袋をプレゼントした。

一緒に、前に約束していたノートを渡した。

お気に入りの黒くシックな表紙のノート。

そのノートにたくさんの詩とイラストが描かれて、

3月中旬に戻ってきた。

ホワイトデーには間に合わなかったけどw


この話をすると、たいてい、

「付き合ってたんじゃない?」

と言われる。

あたしはかみひこーきさんと付き合ってもいないし、

一度も手をつないだことはなかった。

あの日までは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?