「人、人、人」という投資方法論


以下はIDG Capitalが長年の投資実績から絞り出した「人に投資する方法論」の翻訳です。著者がその方法論はどのように「人」を見抜くかを論じて、すごく具体的で、一部不思議と思われるかもしれない部分もあります。
ただもちろん方法論に正解はないので、本稿を通じてIDG流の人を見抜く理論とはどういうものかをイメージを持ってもらえると幸いです。

(内容は口述風になっていて、一部具体的ではない話もありますが、あくまでIDG Capitalが出した彼らの経験論ということをご理解いただければと思います)

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一、なぜ「人を読む」(理解する)必要があるのか
1.情報が少ない時代において、人を読むことは、比較的に外見や態度に頼る傾向がありした。今の時代で情報が増えている一方、ノイズも比例的に増え、人々はますます孤独になり、誰もが自分は理解されていないと感じ、理解されたいと思うことがあるのではないでしょうか。 起業家に対しても、大切な人に対しても、「あなたのことを理解しています」と言うだけで、とても温かみが伝わります。ですから、人を読むことが大切であるーーこれは永遠の真理です。
2.生活。パートナー、友人、両親を理解することは、生きていく上でとても大切なことです。
3.事業内容ビジネス交渉の場では、真の興味や関心があるかどうかは、よく観察することで感じ取ることができます。価格の話であれば、相手がある価格に納得しているかどうかも読み取れます。 そうすることで、次の交渉のステップでより有利な立場に立つことができるようになるのです。

二、中国と海外を比較するとき、どのような違いがあるか
中国では、人を読むことに、どう考えているのでしょうか?
中国医学は望聞問切(観察、傾聴、質問、指で診る)と重視するし、占い師は生肖、面相、手相などを見ます。曾国藩の著作「氷鑑」では、この点で眉毛を強調します。 中国人は眉毛を特に重要視しており、浓眉大眼(濃い眉)、贼眉鼠眼(キョロキョロしている)、眉清目秀(眉目秀麗のこと)など、様々な眉毛に関する四字熟語がある。悪人がキョロキョロ、善人が眉目秀麗と思うことが多いのです。
中国は概して経験主義的です ・・・(中略)
欧米では、人を読むというと、心理学や認知学、パーソナリティなど、人の考え方や行動の仕方を研究する系が多いです。 有名なものでは、MBTI性格理論などがあります。 微表情とは、人の表情を読み取ることですが、アメリカは中国よりも細かく微表情理解をやっています。 例えば、男性は緊張するとネクタイを引っ張りますが、これは首が弱いからです。 ・・・
一般的に、東洋は経験と直感に基づき、西洋はデータと論理を好むですが、共通しているのは、魂の窓である目を特に重視することです

三、先天性・後天性の要因による人の違い
先天性の要因としては
 1、「遺伝子」。
 2、国、地理的要素、家族の社会的地位と構造。
 3、星座、血液型。
 4、見た目。30歳までは親からもらうことが多いが、30歳を過ぎたら自分の努力次第です。
 5、 個人と所在するコミュニティ。例えば、私に多くのレッテルを貼ることができます:河南省出身の人、田舎者、等。 レッテル貼りは多くの偏見をもたらします。
後天的な要因としては
 1、教育。例えばある大学を出た人はある種の特性を持つが、当然いいこともあれば悪いこともあります。
 2、仕事の経験、例えばテンセントとアリババの人は違う、軍隊にいた人は軍隊にいたことがない人と違います
 3、婚姻。 結婚は大学であり、結婚すると誰もが大きく変化するでしょう。 長年連れ添った二人は、互いに影響し合ってますます似てくるというのは、ある意味真実です。 メンター、友人、言うまでもなく朱に近い人は赤、墨に近い人は黒、というぐらい近い人に私たちが影響されやすいです。
 4、趣味。例えば、読書や旅行は洞察力に影響を与えるし、釣りをする人とバンジージャンプをする人は確実に違います。

四、自分自身を理解することとは
1、他人を理解するために、まず、自分自身を理解すべきです。自分は自信の鏡であり、自分の選択は自分の価値観を映し出すものですが、私たちはしばしば他者をスポットライトを当て行きがちで、本当の意味で自分を理解する努力が足りません。
2、人はナルシストで、これは人間の本質であるです。不空文化CEOは、かつて「人と人との争いは、他人のナルシシズムを邪魔することだ」と結論づけたことがあります。 自分の不完全さを含めて、自分を受け入れなければならないのですし、過剰なナルシシズムを克服すべきです。
3、Perception is reality(知覚は現実である)。 信じられないかもしれないが、他人のフィードバックは、それが必ずしも自分の好みでなくても、耳を傾けなければならないのです。多くの人が自分に対して同じアドバイスを言っているのなら、よく考えてみた方がいいです。忠言逆耳
4、What matters to you most? What scares you most?(あなたにとって一番大切なもの、一番怖いものは何ですか?) あなたは、自分にとって一番大切なもの、一番心配なものは何なのか、考えたことがありますか? 知ってしまえば克服できるのではなく、一番恐れているときにそれが何なのかを気づくことができるのです。
5、よく自問自答してみることといいです。自分は親に似ているでしょうか?配偶者や友人を選ぶ基準は何ですか? 実際、いくつかの習慣ややり方は、仕方がない、親の影を背負っているだけなのです。 それを引き継いであなたの価値観の基準になってしまっているなのかもしれません。
自分がそう思っていても、人はそう思っていない、と誤解されると多く感じるとき、自分に対する認識がずれているのではないか、と一回反芻した方がいいかもしれません。メタ認知を持つということは、実はとても難しいことなのです。

五、観察・鑑識して、「人を読む」
1、話すよりも、よく聞く、よく問うことです。 投資家は傍観者であり、どんな会議でも、投資家が1/3の言葉を発していれば、それは間違いなくおかしいです。
2、ヒントを探してみる。 例えば微表情では、足を組むことで意見の相違を示すことが多い。また、平常時にこの人はどのような人なのか、特定な状況でどのような対応をし、急変したを観察するのです。
3、レファレンスチェック。 誰に聞けばいいのか、どんな質問をすればいいのかを前もって設計しておくのが必要です。また、重要な意思決定に関して、必ず自分自身で依頼し、一次情報を取るべきです。
4、該当者のライフパートナー、友人、ツイッターの投稿、曲リスト、趣味、服装なども観察対象となり得ます
5、40歳以降の対象者は経験を見るの最も大事です。大体その人の人物像は過去の経歴からトレース可能です。
6、継続的に観察し、常に修正することです。 常に人に対して持っている仮説を検証する必要があります。静止画的に見るのではなく、行動に一貫性があるか、かつて狂言したものが実現したかどうかを見ることが重要です。 英語には「Fool me once, shame on you. Fool me twice, shame on me」という言葉があります。人の言動を常に観察することが大切です。
7、自分の直感を信じることです。 特に他の情報が不完全な場合は、自分の直感を信じるべきです。

六、避けるべき課題
1、先入観を持たないことです。 まず自分が正しいと思い込んでから、自分の基準で測り、すぐに自分の意見が正しいとまとめる恐れがあります。自分の基準のみすべてを計るのは危険行為で避けた方が良いでしょう。
2、静止的に問題を考えることを避け、第一印象に頼りすぎないことです。 例えば、1時間の会議があったとして、3分間である程度第一印象が決まります。残りの時間に「前と何が違うのか」と考えなければならないのです。 1時間のミーティングで、「これは考え抜いていないではないか」と考え続けることが必要です。
3、パーフェクトヒューマンがいない、その人のハイライトを見つけることです。常に自分が誤る判断を下すことを前提に考えて、「What if I am wrong」と思いながら「Fall in love」を危惧することです。なぜなら、恋愛するときも、恋に落ちたらその人の全てを正とする傾向があり、逆も然りです。
4、対面でのコミュニケーションを心がけます。人を理解するのには時間と手間がかかります。時間が経って、一緒に何かを「経験」して、やっと深い理解ができるのです・
5、細部を分析しすぎない。人が歯を磨く10のスタイルから人を判断するほど細部を語る本があると聞いていますが、これはやりすぎです。
6、判断の基準として、「情報が網羅的で正確かつ完全であるかどうか」「情報の判断が論理的であるかどうか」の2つを覚えておくことです。
7、上記の両方が正しい場合、正しく判定できる可能性が非常に高くなります。 しかし、人を読むことはの確率論で正規分布を自分の中にプロットするに近い話です。人生は、常に外れ値が存在しているため、たとえすべての人を読む技術を習得したとしても、それはあくまで確率に過ぎないのです。

七、人を読むことの応用編ー起業家を理解するために
1、出身地、学歴、過去の経験。出身地、学歴、過去の経験などは参考になりますが、決定的なものではありません。 

例えば、ポニー・マー(馬華騰)、ジャック・マー(馬雲)、ロビン・リー(李彦宏)、雷軍と四人の起業家がいます。ポニー・マーは深セン大学、ジャック・マーは杭州師範大学、ロビン・リーは北京大学、雷軍は武漢大学出身で、初めて起業した者もいれば連続起業した者もおり、海外滞在経験者もそうでない者もいます。
2、起業家の「過去のデータ」。 IDGのデータベースからの分析によると、2度目の起業や会社経営者の方が成功確率は高いのです。(例外も当然あります。)
3、ハードスキル。その人が今まで何をしてきたか、どんな実績があるか、以前率いたチームがまだついているか、などがあります
4、ソフトスキル。学習能力、プレゼン能力、実行力などのソフト能力部分を指しています。
5、チームを統率するオーラ、リーダーシップ、チームを形成する能力。
6、ビジネスの構造を理解する能力。全体感、品質と体験に対するこだわり
7、外部要因の干渉を避け、何度もコミュニケーションをとる。相手が意図的に話し方や内容をトレーニングしているか、特に「賛否両論のあること」に注意を払う必要があります。異なるシナリオ、異なるタイミングで同じ相手と何度かコミュニケーションをとってみると良いです。

八、人を読むことの応用編-インタビュー(省略)
全体として、人を読むということは、科学のようであり、むしろ投資のようであり、実はアートなのです。最大の不確実性は、一人一人が常に変化していて、その変化も個人差があることです。 つまり、人を読むということは、確率論に近い話です。


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