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こわいもの

なんでかわからないけど、なぜかこわいもの、ありませんか?

もちろん理由があって怖いものはある。
注射は痛いし、犬は噛むから怖い。虫は実害がなくても「気持ち悪いから怖い、いやだ」という人は多い。普通は怖くないものでも、それにまつわる恐ろしい出来事に遭えば怖くなることもある。戦争から帰ってきた人がキャンプファイヤーの炎を見てナパームの爆撃を思い出すようなあれだ。

それと、一見わかりにくい理由で怖い場合。
自閉症の人は感覚過敏のために何でもなさそうなものを恐れることがある。掃除機の音が痛くて近寄れない、創英角ポップ体は刺激が強く目に突き刺さるようで怖いなど、理由を聞けば納得がいく。私はトイレのハンドドライヤーの音が怖くてたまらない。このごろは感染防止のために使用中止になっていてありがたいので一生中止にしてほしい。
共感覚由来の怖さもあるのではないか。4はヘドロヘドロした不潔な色なので好きじゃないとか。あ、これは恐怖というより不快感か。

それとは別に、まったく思い当たる理由がないのに怖いものもある。
たとえば私は、とある医療用医薬品の商品名が怖い。その薬を使ったことも見たこともないのだが、文字列が怖いのだ。怖すぎて書けないので、以下「ロキソニン」で代用する。
どう怖いかというと、「ロキソニン」の文字を見ただけで得体の知れない恐怖が背筋に走る。根源的恐怖だ。「ロ」「キ」「ソ」「ニ」「ン」が徒党を組んで脳に侵入し、長く見つめていると脳みそを食われそうな気がする。小さい頃、なぜか怖かったCMってありませんか?ああいう感じ。幸いにもその薬はめったに使われるものではなく、私がよく読む分野にはほとんど関係がないし、専門書ではだいたい一般名で書かれるので安心だ。まあ、見てしまったとしてもすぐに目を逸らせば大丈夫なのでそれほど実害はない。

そのほかには、鏡も怖い。
イルーゾォのファンなのになぜ……?金属や水面など映るもの全般が苦手だ。自分の影も怖く、食事中にもぐもぐと口を動かす自分の影が見えないように光源を考えて食べている。窓ガラスの反射を避けるためにカーテンを引いていて、隙間から少しでもガラス面が見えると慌てて閉める。疲れているときは車のボディに映る自分の影にも怯える。
「鏡 怖い」で検索すると、「自分の顔がブサイクで見たくない」とか「誰かがこっちを見ている気がして怖い」という人は出てくるが、それとは違うのだ。顔が映っていなくても怖いもんは怖い。
自分から見ようと思って見るのは平気なので、身づくろいに支障はない。自分の意思と無関係に動きをトレスされるのが不気味なのかもしれない。怖がるくせに「これ、イルーゾォっぽい!」と言ってイタリアの手鏡を買ったりしている。

友人にも変わったものを怖がる人がいる。
生まれつきちょうちょが怖いという人。「ちょうちょがたくさんいる場所に入るぐらいなら死んだほうがマシ!」と即答するほどの重症で、ちょうちょに似ているという理由でパンジーも怖いそうだ。それなのにいろいろな蝶に詳しいのだが「ヤツらの習性を理解して徹底的に避けるためだ」という。深く納得した。その人はアリクイが大好きだ。

去年の福祉機器展で、こういった恐怖症を克服するためのVR機器を展示していた。ゴーグルをかけてヘッドホンをつけると、そこは雨の降る住宅街。人工的な光と音で、雷が落ちる様子がリアルに再現されるのだ。雨が降っているのに体が濡れないのはなんだか奇妙な気分だ。私は雷が好きなので楽しめたが苦手な人は相当怖いだろう。セラピストの指示のもとで、安全な場所でこれを使って少しずつ慣らしていくのだという。他にもいろいろな恐怖症のためのVRを開発中だが、ゴキブリ克服用のVRはセラピストの人が怖がってしまって無理だったそうだ。
余談だが、ゴキブリを視界に絶対入れたくない人はブラックキャップを置くと全くいなくなるので試してみてほしい。家の外(ベランダや玄関の外)にも置くのがポイントだ。

フルツとか医学書とか買います