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【23/24シーズン総集編】OGCニース

【23/24シーズン総集編】と題して、今季のOGCニースを振り返る。

総合成績
リーグアン:15勝10分9敗(55) 総得点:40 総失点:29
クープ・ドゥ・フランス:準々決勝敗退



【総評】

南仏の血が騒ぐカテナチオ 積み上げはまた別の機会に

打倒PSGを掲げたINEOSのプロジェクトは、毎年赤字を出しながらも見合った成績を残せずにいた。ヨーロッパを逃した今季は予算をかけない人事異動の遂行のため、未知数なファリオーリを招聘。

新米監督のスタイルは師匠デ・ゼルビのスタイルを彷彿とさせるポゼッションと共に、守備時はアンカーの選手が最終ラインに降りて、徹底的に構えてからロングカウンターを狙う保守的な面も兼ね備えていた。しかしスカッドの大半がカウンター時に牙を向く面々のため、1年を通して保持の段階でのクオリティ不足が否めなかった。

そのため、「先制したら天国、されたら地獄」という非常に分かりやすいゲーム展開となり、南仏の血にそぐわない戦い方を批判する者もいたり、結果重視で若人を擁護する者もいたり。序盤の快調が長続きせず、軌道修正を図るべくジュリアン・サブレをアシスタントに迎え入れる策は起爆剤にならず。

戦術的な柔軟性に乏しかったのは事実だが、リーグ最少失点を記録した"カテナチオ"な守備は今季のトレンドの1つに。1年の勉強を経た外国人監督の2年目も楽しみにしたいところだったが、来季はまた新たな旅立ちを迎えることに。

23/24基本布陣



【年間成績&個人成績】

リーグアン成績
クープ・ドゥ・フランス成績
リーグアン個人成績



【シーズンハイライト】

①"PSGキラー" モフィがまたしても牙を剥く

2023/09/16
リーグアン第5節 vs PSG ◯3-2

前節ストラスブール戦で今季初勝利を掴み、第5節に待っていたのはPSG。この試合でチームはいかにも"ニースらしい"戦い方で勝利を掴む。お得意のミドルで構える5-4-1ブロックからのロングカウンターに勝ち筋を見出した。結果、全得点に絡む活躍を果たしたのはモフィ。ロングカウンター及びロリアン時代からPSG戦で牙を剥いてきた千両役者が勝ち点3をもたらし、"今季は違う"期待感を抱かせた。


②必殺南野潰し 最後に笑うのがカテナチオ

2023/09/23
リーグアン第6節 vsモナコ ◯1-0

PSG戦の次に控えていたのが、モナコとのコートダジュールダービー。共に良いスタートを切っていただけに、ここ数年で一番のハイレベルな戦いが予想された。ニースは持ち味の5-4-1ブロックを中心に、リンクマンのカマラや南野を徹底的にシャットアウト。徐々に上げていたギアは、守護神ブルカの2度のPKストップでさらに加速。せめぎ合う中で途中出場のボガの個人技から決勝点が生まれ、ウノゼロで最後に微笑んだ。


③苦しみから解放された勝ち点3

2024/03/17
リーグアン第26節 vsRCランス ◯3-1

直近の公式戦6試合で1分5敗。序盤の快進撃が長続きせず、チームとしても方向性を失いつつあった2月〜3月。前半戦の終盤から予兆はあったものの、戦術的な引き出しの少なさが結果にも表れていたこの時期。アウェーのRCランス戦というかなりハードルが高い一戦にて、最前線でチームを助けたのがモフィ。逆境に強い男が、負ければ解任もありえたファリオーリの首をつないだ。



【サポーターが選ぶ今季MVP】

#1 マルシン・ブルカ

Marcin Bulka🇵🇱
38試合

今季29失点でリーグ最少失点、リーグ最多の17クリーンシートを達成出来たのは、成熟した守備陣の功績だがブルカの影響も大きかった。

今季の彼を一言で表すと、やはり「PK職人」だろう。特にモナコとの試合でバログンのPKを2回連続で止めたことで一躍有名になったが、「偶然止めやすいところにバログンが蹴ってきた」、みたいな話ではない。クープ・ドゥ・フランスのオセール戦はスコアレスでPK戦までもつれ込んだが、オナイウ阿道のキックを止めて勝利。(決められたシーンでも方向はすべて読んでいた)同じくクープモンペリエ戦でもPKストップを1回記録。今季リーグ戦とカップ戦合計で5回PKをストップしている。最後までキッカーの動きを見て飛ぶ彼のPKストップは窮地を何度も救った。

PKの場面以外でもセービングスキルは優秀だった。過去の守護神たちと比較すると反応速度ではベニテスの方が上であり、ポジショニングの良さでは経験豊富なシュマイケルより劣ると言わざるを得ないが、その2人より優れている「手足の長さ」という武器がブルカにはあり、広範囲をカバーするセービングを披露した。
パスでもリーグトップクラスの好成績を残している。プレスをかけられても動じない落ち着いたボール捌きは、後ろから繋ぐスタイルのニースにとってマスターピースであった。

ピッチ外の話をすると、メディア露出にも精力的だったことが挙げられる。ベカベカの自殺未遂や元ニース監督ガルティエの発言騒動等、ニースを取り巻く環境は何かと不安定な状態になることが多かった中、公式YouTube等のメディアを大いに盛り上げるブルカの姿は、ファンにとって大変心強かった。そういった意味でも、今季MVPは彼が相応しいと考える。

今シーズンが終わったばかり、仮にEUROで活躍する場面があれば夏の移籍市場で注目を浴びるかもしれないが、既にチーム・選手共に来季ニースでのプレーを見据えている。新シーズンはますますの活躍に期待したい



【個人的選手&監督評価】

ここからは、主観で選手と監督評価(10点満点)を行う。

Good Job👍

#4 ダンチ

Dante🇧🇷
35試合1ゴール1アシスト

齢40にして、未だリーグトップレベルの守備技術を誇る大大大ベテラン。彼がいるといないでは、チームの守備強度が一変するほど。ボディランゲージを含めた統率力、正確な左足の技術なもで攻守両面でまたしてもチームを助けた。誰もが愛するキャプテンと、クラブは2025年までの契約延長に成功。来季も頼りになるのは間違いなし。


#26 メルヴァン・バール

Melvin Bard🇫🇷
34試合1ゴール2アシスト

着実に成長段階を踏んでいた逸材が、今季も安定したパフォーマンスを発揮。今季特に改善が見られたのはフィジカル面。173cmの小柄ながら、リーグアンのフィジカルモンスター達に簡単に負けない姿は、デュエル好きなフランス人から多くの賛美の声が上がった。攻撃面のスタッツがもう少し伸びればというところだが、彼の1列前を務めるボガが6ゴール6アシストという好成績を収めることが出来たのは、彼のおかげ。


Disappointed👎

#20 ユスフ・アタル

Youcef Atal🇩🇿
6試合1ゴール

今季初勝利を挙げたストラスブール戦の決勝点は、彼の左足から生まれた。ラボルドゥと奏でる右サイドの連携はリーグ随一のレベルを誇り、彼自身もリーグNo. 1のRBへの階段を踏んでいたが、昨年10月に事態は急転。イスラエルとハマス間の戦争が勃発した最中に、Instagramにてハマス側を助長する内容を投稿。テロリズムの扇動にあたるとして、10試合の出場停止処分に。そのままクラブに戻ることはなく、12月に退団。1つの余計な言動が、順調満帆なキャリアを破壊した。


【監督評価】
フランチェスコ・ファリオーリ

Francesco Farioli🇮🇹

かつてデ・ゼルビのGKコーチを務めていたというプロフィール以外は、実力共に未知数な部分がかなり多かった。当然、過激派サポーターのヘイトを集めながらも序盤は快調。最少得点・最少失点で勝ち点を積み上げる様はまさにイタリア人らしさを感じさせた。ただ、その戦い方以外のアイデア不足に悩んだ今季。初の5大リーグで1年を戦うことの難しさを覚えた若人は、来季はさらにプレッシャーの大きな舞台に挑む。総じてニースでの評価は、10点満点中8点



【来季の注目ポイント】

①新監督×新学派 大きな期待を胸に

ファリオーリのアヤックス引き抜きが決まり、フロントが新監督の座に招いたのは前RCランス監督のフランク・エーズ。かねてより、リヴェール会長側はフランス人指揮官を望んでいたため、まさにお眼鏡に適った人物を招聘できた。国内で新学派を創立しつつあるエーズは、より厳しい目が向けられる立場に挑戦することに。ただ、それよりも期待の念が優っているのは確かだ。


②敏腕SDの別れと敏腕SDの招聘

かねてより噂が絶えなかった敏腕SDフローラン・ギゾルフィがASローマへと旅立ち、空いたポジションには前レンヌSDのフロリアン・モーリスが就任。ギゾルフィと共に、国内屈指の敏腕SDとして名高い評価を受けている人物で、人事異動をトーンダウンすることなく実行できたことはかなり大きな価値を持つ。新天地での仕事ぶりにも大注目。


③潤沢な投資の終了の可能性

周知の通り、ニースの筆頭株主であるINEOSは昨年からマンチェスターユナイテッドの25%の株式を買収した。来季はどちらもヨーロッパ戦線に臨むことから、UEFAの規定を回避するためにニースを売却する可能性は常日頃言及されている。しかし、ラトクリフ卿は若手選手の獲得・契約の面において両クラブの株式を保有していることは有利に働くと考えているとも。株主問題をよそに、現在は主軸のテュラムのユベントス移籍が秒読み段階。実現すれば、来季からはイタリアダービーにて兄弟対決が実現する。

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