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【23/24シーズン総集編】パリ・サン=ジェルマン

【23/24シーズン総集編】として、今季のパリ・サン=ジェルマンを振り返る。

総合成績 
リーグアン:38試合22勝10分2敗(76) 総得点81 総失点33
クープ・ドゥ・フランス:優勝
チャンピオンズリーグ:ベスト4



【総評】

長い実験を経て、培った組織力

今夏も高年俸かつスペ体質の選手を冷遇し、エンバペの契約問題に揺れた開幕前。汚名返上を期すべく、新監督に前スペイン代表監督のルイス・エンリケを迎えた当初は懐疑的な声しか寄せられなかった。

PSMでの成績が非常に悪く、さらに傲慢な彼の性格がフランス人化が進んだスカッドをうまくまとめ上げることができるのかといったところだった。

序盤戦から、可能な限り多くの選手を起用したことでリーグ戦ではともかく、重要なCLでは完全な関係性が構築できていないがためにシステムエラーが頻発していた。何とも評価し難い現状を、辛口ジャーナリストのダニエル・リオロは「今季はルイス・エンリケの長い実験場に晒されている」と批判した。

しかし、リーグでは絶対に負けない粘り強さ・CLでは最低限の目標を達成し、冬以降から個々のレベルアップと共にチームの総合力が大いに増した。最終的にリーグはわずか2敗&CLベスト4進出を果たすことができたのは、1年を通して熟成させたルイス・エンリケの手腕以外の何ものでもない。

23/24 基本布陣


【年間成績・個人成績】

リーグアン成績
CL成績
クープ・ドゥ・フランス成績
トロフェ・デ・シャンピオン成績


個人別リーグ成績



【シーズンハイライト】

①ライバル相手に屈辱しか残さない完勝

2023/09/25
リーグアン第6節 vsマルセイユ ◯4-0

相手が監督騒動に揺れている最中に迎えた絶対に負けられない大一番。アタッカー4人を同時起用するサプライズ起用はありながらも、開始8分でのハキミのFK弾を皮切りに、終始ライバルを圧倒して最終的に4-0の大勝。試合終了後に侮辱チャントを歌って制裁を喰らった不届き者が出たり、このファイヤーフォーメーションを採用して後日のCLで大敗を喫した事実は忘れておきたい。


②方向性の確立と実験の終了

2024/03/06
CL vsレアル・ソシエダ ◯2-1

今季のベストマッチは間違いなくこの一戦。CLベスト16敗退も想像できたほど、プレッシャーが大きなアウェー戦を迎えたルイス・エンリケは今まで披露してこなかったシステムを採用。それは、デンベレのインテリオール化。基本右サイドにいるテクニシャンに0トップのような立ち位置を任せ、循環器としての役割を与える。見事にやり遂げた彼とエンバペの身体能力でチームは快勝し、悲願のベスト8進出を果たす。


③並行も何のその 3年ぶりの戴冠

2024/05/26
クープ 決勝vsリヨン ◯2-1

今季を称賛するためのポイントの1つとして、リーグ・カップ戦・CLの3つを並行できたことが挙げられるだろう。ニースやブレストといった難敵相手にホームで戦うことができたアドバンテージはあったものの、勝ち切る強さは随所に表現してきた。迎えた決勝戦においても、タフな相手を迎えたものの、早々に得たリードを守り切って3年ぶりのクープ制覇。エンバペのラストゲームに優勝カップを添えた。



【サポーターが選ぶ今季MVP】

#17 ヴィティーニャ

Vitinha🇵🇹
46試合9ゴール5アシスト

昨シーズンから片鱗を見せていたけれど、強力な3トップ(主にネイマール)によって居場所が減らされていたので彼の本気を見ることはできなかった。
今季は彼の片鱗と成長を見られた。
しかも試合が進むにつれてその成長度合いは素晴らしかった。

まずはキープ力。
彼の持ち味であり、昨シーズンから魅せていたので代名詞と言っていい。
もちろん今シーズンも健在。さらに言えば、中盤の核と言ってもいいレベル。

次に彼の最も成長した部分。守備力。
昨シーズン誰がからをアンカーとして使えると思ったのか?
昨シーズンは中盤がゆるゆるでかなり抜かれていたが、今シーズン彼が遅らせる役割、たまに潰せる役割。
本当はインサイドハーフとかに置きたいけど…

最後にミドルと得点力
昨シーズンからたまに見せてたミドルだが大体外れていた。
しかし、ジャパンツアーのインテル戦で見せたミドルを皮切りにミドルの決定力や軌道などシーズン中存分に発揮した。
さらにいえば大切な場面でも。
CLのバルサ戦(2ndレグ)同点の狼煙を挙げたミドルはパリをベスト4に導いた。

総括
ミドルの精度と守備力がシーズン中に成長していた。
また、CLの敗退後にピッチに項垂れたあのシーンは、最後まで戦い抜いて
本気でテッペンを取ろうとしいた現れである。
今のパリに必要なメンタルだ。


【個人的選手&監督評価】

ここからは、主観で選手と監督評価(10点満点)を行う。

Good Job👍

#2 アクラフ・ハキミ

Achraf Hakimi🇲🇦
40試合5ゴール7アシスト

ルイス・エンリケによって魔改造された選手の1人。従来より、立ち位置をインサイドに絞ることで、デンベレとの悪魔的なコンビネーションで数多の決定機を演出した。悪癖のポカも徐々に減り、大舞台になるほど攻守のパフォーマンスも安定していた。親友が巣立ったマドリーへ、復帰の噂が絶えない。


#21 リュカ・エルナンデス

Lucas Hernández🇫🇷
41試合2ゴール1アシスト

地元がマルセイユなだけあって、一部過激サポーターから加入早々に「出ていけ」と言われるも、ピッチ上では安定した守備対応を魅せていた。彼の脇のスペースはよく狙われていたが、それでも終始脳筋WGたちに簡単に仕事をさせなかったのは、彼の貢献が大きい。CL準決勝1stレグで負傷し、EUROも棒に振ってしまったのは悔やまれる。


#10 ウスマヌ・デンベレ

Ousmane Dembélé🇫🇷
42試合6ゴール12アシスト

スペイン方面からたくさんのヘイトを抱えながら、お友達のいるフランス方面へ7年ぶりの復帰。何かとネタにされるほど、クロスやシュートが明後日の方向に飛ぶことも少なくなかったが、チーム内で最もクリエイティブな選手であることを証明。しかしながら、ネイマールの10番を彼が受け継ぐ未来を的中できた者はいただろうか。


Break Out🙌

#33 ワレン・ザイール=エメリ

Warren Zaïre-Emery🇫🇷
43試合3ゴール7アシスト

彼もまたポリバレントなタレントではあるが、中盤でもRBでも"彼らしさ"を随所で発揮。持ち前の推進力に加え、CLのGS最終節で魅せたミドルはチームの窮地を救った。エスポワールでは腕章を任されていたが、11月にはA代表デビューを飾った。いずれは、クラブや代表のキャプテンを担ってほしい。


#35 ルーカス・ベラウド

Lucas Beraldo🇧🇷
24試合2ゴール

キンペンベの離脱が長引き、DFの頭数が少なくなった冬に加入。兄貴分マルキーニョスに支えられながらも、加入後即フィットして周囲の期待を良い意味で裏切った。左足の正確なフィードに加え、LBへの転換も難なくこなしてみせた。念願のセレソンにも召集され、来季はもっと脂の乗ったパフォーマンスを発揮してほしい。



Disappointed👎

#23 ランダル・コロ・ムアニ

Randal Kolo Muani🇫🇷
40試合9ゴール6アシスト

フランクフルトの練習をボイコットしてまで、お友達のいる首都クラブに合流。エンバペ、デンベレと共にフランス代表トリオでの活躍が期待されたが、ルイス・エンリケのスタイルに適合できないまま終焉。エンバペからも戦力外扱いを受け、居場所はナント時代の右サイドのみに。彼に総額9000万€の価値をつけたフロントにも文句を言いたいところ。


#28 カルロス・ソレール

Carlos Soler🇪🇸
28試合2ゴール4アシスト

昨季から戦力外の目処は立っていたが、同胞ルチョの就任により残留。RBやインサイドハーフで起用されたように、最もポリバレントな選手ではあるものの、いずれのポジションにおいてもこれといった強みを残すことができなかった。終盤では、恩師でさえも彼の起用法に迷いが顕著に現れるほど、存在感が皆無に等しかった。


【監督評価】
ルイス・エンリケ

就任前は、「エゴイスト」や「MSNのメンツで勝てただけ」と酷評されていたが、終わってみればリーグ戦はわずか2敗&クープ優勝&CLベスト4と印象に残るシーズンを送った。確かに序盤こそ、"実験"が多かったが、それにより選手個人のポテンシャルを大いに引き出したのは間違いない。ましてや、懸念された治安維持にも成功した手腕も評価されるべき。評価は10点満点中8点



【来季の注目ポイント】

①"彼なしのチーム"の本格化

いずれその時がやってくるのは間違いなかったが、今季ついにそれが実現することとなった。3月には監督自ら「彼なしのチームを作らなければならない」と明言したように、特に春以降は彼を軸に据えない全体像の構想を練っていたように感じる。ただ、今季も公式戦44ゴールと最大の得点源を担った人物の補填を人で解決するのか、チームで解決するのかは見物である。


②愛ある復帰は、再会ではなく...

一度はフリーで退団したシャビ・シモンズが首都クラブに舞い戻る知らせは、彼がまだ細身だった頃を知る古株のファンを喜ばせた。しかし蓋を開けてみれば、2025年1月より前に彼を売却した場合に、移籍金の大半がPSVに渡るという条項がついていることが明らかに。未だ去就は不透明だが、彼の復帰は愛するクラブへの移籍金を落とすための男気によるものだったかもしれない。


③先が読めない補強面 アドバイザーの退団も

エンバペの退団=クヴァラツヘリアで穴埋めという安直な施策の他、フランスにゆかりのあるオシムヘンやヨロ、シェルキといった補強の噂も大幅な進展が見込めていない現状。唯一手をつけたマトヴェイ・サフォノフは安心してセカンドGKを務められる人材を欲していたと推測できるが、まだまだ人員整理はこれから。退団のリスクがある複数の選手に加え、ルイス・カンポスもモナコ復帰の噂が急浮上し、さらにはスタジアム問題もあり、頭を悩ませる厄介事があまりにも多すぎる。

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