ユニコーンオーバーロード〜王道ファンタジーの皮を被った何か〜

 ベレンガリアさんについて深掘りしてたらうっかり爆弾掘り当ててしばらく再起不能に陥ってました…

 ユニコーンオーバーロードっていう作品はストーリーの表面をなぞるだけなら王道ファンタジーで一見無害なんだが、うっかり背景とか掘り始めるとなんか人間的なドロドロしたものがそこかしらに埋まってるという…。私も爆弾じゃなくて宝の地図あたりがよかったなあ。(遠い目)
 正直ベレンガリアさんとトラヴィス君で一杯一杯なんだが、軽く言及するならアレインの父親は誰なのか、とかヴァルモアが反乱を起こす前の高位貴族と下級貴族(+庶民)の根深い対立だとか…。個人的にヴァルモアが反乱を起こしたのがガレリウスに乗っ取られる前なのか後なのかが焦点な気がする。一番の問題は、ゼノイラという表面的な脅威が排除されても内政的な不協和はあまり解消されてないという…。この辺は女主人公が実装されたら掘ってみても良いかもしれん。(掘るとは言ってない)だが今は元あった場所にそっと埋め直しておこう。
 …私は何も見なかった!

 あー、ベレンガリアさんについてですね…結論を先に言っておくと彼女は心底世界に絶望してたんだなあと。この考えに至った時、私はひどく打ちのめされました。私がいくら彼女の幸せを願っても彼女自身に幸せになろうとする意思がなければ意味がないじゃないと。そもそも幸せを感じる心すら失っているのだから手の施しようがない。それでも絶望した世界にしがみついていたのはトラヴィス君の為なんだろうなあ。
 ああ、もちろん私の解釈違いという可能性も大いにあります。むしろその方が何倍も良い!! でもなんとなく自分の中ではこれが正解なんだろうなあと直感が囁くんですよ。むしろ外れてくれ、この直感。

 きっかけは「竜の国を継ぐ者」のシーン5ですね。ぽけーっとバックログで確認していたところ違和感を覚えたんです。ベレンガリアのセリフってなんか嘘は言ってないんだけども本当のことも言ってないような気が…? ベレンガリアが言う「戦い」ってなんだろう、と。
 そこでアレインがおらず、ギルベルトも蜂起しなかった世界線を考えてみたんです。するとベレンガリアはどう動くか? 鎧を手に入れた先に彼女が目指したものとは? そしてなぜトラヴィスを遠ざけたのか? 鎧を手に入れるだけだったらトラヴィスも快く協力してくれたでしょう。たとえゼノイラが気に入らない相手だとしても。トラヴィスをゼノイラと関わらせたくなかったと言うのもベレンガリアの本音でしょう。でも…

 言いたくないですが、はっきり言うとベレンガリアが狙っていたのは皇帝ガレリウスの暗殺だと思います。玉砕覚悟の特攻です。軍功を立て、二人きりになったところで一騎討ちでも挑もうとしたのではないでしょうか。皇帝の暗殺が成功するにせよ、失敗するにせよ悲惨な未来しかない。だからトラヴィスを関わらせたくなかった。
 そう考えるとギルベルトの「置き去りにされる側というのは実につらいものだ」というセリフにもしっくりくるんです。この「置き去り」というのは蚊帳の外に置かれると言う意味ではなく死に別れという意味ではないか? むしろギルベルトの境遇からするとそっちの方が合っている。ギルベルトはベレンガリアの本当の目的が分かったんだろうなあ。ベレンガリアがあえて目的をぼかしたのはトラヴィスに気づかれたくなかったから。トラヴィスに嘘はつきたくない、でも本当のことを言って傷つけたくない。それが会話の違和感の正体だったんだ。
 三角獣傭兵団を解散した時期も、おそらくトラヴィスが一人でも生きていける年齢と技量に達したと判断したからでしょう。ベレンガリアの予想ではトラヴィスとブルーノがコルニアでそれなりに楽しく暮らしているとでも考えていたんでしょう。

 ベレンガリアの目的に気づいた時には本当に悲しかった。ベレンガリアの憎悪はこれほどまでに深かったのかと。トラヴィスと復讐を天秤にかけて復讐を選ぶくらいゼノイラを憎んでいたのかと。ただただ悲しくて数日間何もする気が起きなかった。心の中は大豪雨。雨で窒息できそうなくらいだった。 

 悲しみが去っていくと次に湧いてきたのは怒りでした。生きるために戦うならまだしも、自らの死を前提とした恨みを晴らすために戦いに身を投じるなんてと。それはトラヴィスに対する明確な裏切りです。遠い地でベレンガリアの訃報を突然聞かされた時のトラヴィスの気持ちも考えろよ〜。それを考える余裕もないほど復讐に身を焦がしていたのか。
 トラヴィスは真実を知ってもベレンガリアを許すでしょう…でも私は…
 なんだかんだ言ってもベレンガリアのことは好きですから許してあげたい気持ちもある…けれど許し難い…許せない…苦しい…
 ぐぬぅ、相思相愛のブラコン・シスコンにただ盛り上がっていたかっただけなのにどうしてこんな事に…。

 ああでもない、こうでもないと理屈を捏ねているとある考えが浮かんできたんですよ。あれ、これ復讐というのもただの言い訳なんじゃ? 本当は死を切望していたからこそ、復讐を言い訳に使ったんじゃ? ベレンガリアの背景にあるのは世界に対する圧倒的な絶望なのでは、と。
 ハイ、ここで私はぼっこぼこに打ちのめされました。悲しみも怒りも湧かないほどの無力感に苛まれました。
 ああ、今日も空は青いなあ…人間って無力だね…そのくせ何か為せると思ってる勘違い野郎なんだから始末に追えないや…(冷笑)

 ベレンガリアさんの内面をあえて外傷として例えるなら全身複雑骨折してるのをギプスでガッチガチに固めてなんとか息だけはしてる、みたいな状態。息するだけで全身激痛が走るんだけど、トラヴィスを一人にして置けないという一念だけで息だけはしてる。でもトラヴィスも一人前になったしもう楽になっても良いよね、みたいな。そんな気持ち抱いているのを知られるとトラヴィスはショックを受けるだろうから、トラヴィスの目の届かないところに行って楽になろうって感じ…あわわわわ

 ああ、絶望した人間てのはこんな感じなんだろうなとまざまざと見せつけられました。生きる気力なんて湧いた先から奈落の底へ落ちていく感じ。底が抜けてるというか。そして絶望に対する処方箋はない。本当に死に至る病だわ、これ。

 希望もあるにはある。もう二度とトラヴィスの傍を離れないとベレンガリアは誓ってくれたわけですし、前向きに生きることは検討してくれてるわけですが…ゼノイラの侵攻によって粉々に粉砕された内面世界を再構築できるかというと微妙なところです。ブラコン部分以外全部吹っ飛ばされたわけですからね。個人的希望としては自分の感覚で幸せを味わってほしいとは思う。こればっかりは神のみぞ知ると言ったところ。必ずしも幸せにならなければならないというわけではないからね。私はなって欲しいが。

 色々考え合わせていくと、ゼノイラが侵攻してくる以前のベレンガリアってかなり繊細な心を持った人物だったのでは?と思えてくる。多分それを分かっているのはトラヴィスと親愛度会話3まで進めたアレインくらいなもんだろうなあ。だからこそトラヴィスは姉を守りたいと思ってるのかもしれん。うわっ、尊い。

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