見出し画像

【農家のラッキー(秋)】

<<<農家のラッキー(秋シリーズ)>>>

ラッキーは和田山農家で可愛がられているキャバリア犬。

私は竹田家具で有名な和田山の農家の一員です。
おじいちゃんとおばあちゃん、ご主人様と
奥様とお兄さんと、サンダー父ちゃんと
エルザ母ちゃんと私の、5人+3匹の大家族。
田んぼと畑があって、農業のメインはおじいちゃんと
おばあちゃんと奥様だ。
ご主人様は、地元の佃煮・煮豆工場に勤めている。
工場がお休みの日と農繁期(田植えや収穫時)は、
ご主人様が力仕事で大黒柱として活躍。
今日は10月初旬の土曜日。今日と明日で稲刈りだ。
雨で稲が倒れちゃうと刈り取れなくなるので、
みんなで一気に刈り取るんだって。がんばろう!
毎日がハッピーな自然流。

金曜日にご主人様はインターネットで明日と
明後日の天気予報をチェックして刈取りを決定
したんだって。郵便番号を入力すると、ピンポイント
で詳細な気象情報が入手できて大助かり。
それと、JAでコンバインの予約も完了。
昔はコンバインを持っていたんだけど、去年から
使いたい時だけJAから借りるんだって。
いよいよ土曜日の朝がやってきた。
インターネットの天気予報通りバッチリ快晴。
いつも通り、奥様の早朝起床から始まった。
いつもは奥様の起床から1時間ほど遅く起きてくる
ご主人様も一緒に起床。意気込みはバッチリOK。
毎日がハッピーな自然流。

ラッキー一家は縁側の所定の場所で熟睡中。
ご主人様が縁側のカーテンをパーッと開けたので
朝の真っ赤な太陽光線がレーザービームのように
まぶたの上からラッキーを刺激。
私の脳にこの強烈な信号が届いたので、パソコンの
電源を入れた時のようにCPUがうなりを上げて
フル回転しだした。
大きなあくび一発。そして手足伸ばしてストレッチ。
CPUの命じられるままに所定の行動を実施。
しかし、通常のご主人様のルート66の行動と違う
今日の行動はDNAに書きこまれていない。
困ったな。これからどうしたらいいのかな。
毎日がハッピーな自然流。

こういう時は、何でも屋のエルザ母ちゃんに問合せ。
「今日はこれから何があるのかな」
「今日はお米の収穫の日だよ。みんなで田んぼに
行ってわいわいする楽しい日だよ。さ~て、お母さん
も起きて準備しようかね。」
ヤッタ!今日は田んぼでみんなと一緒に遊べるんだ。
よく似たDNAをたどると「田植え」が検索ヒット。
よっしゃ。田植えの時と同じように一杯遊べるぞ。
そうと決まればお兄さんを起こしにいかなくっちゃ。
何せ一番遊んでくれるのはお兄さんだもんね。
お兄さんの部屋は2階だ。階段はちょっと苦手だけど
遊べるんだったら頑張っちゃおっと。
毎日がハッピーな自然流。

お兄さんの部屋にこわごわ到着。お部屋は洋室で
今日はドアが閉まっているよ。
しかたないな。得意の足技でドアをガリガリガリ。
しかし、部屋からの反応はぜんぜん無し。
え~い。もう一度ガリガリガリ。
部屋からの反応はやっぱし全く無し。
それじゃ、最後の合図方法だ。「ワンワンワン」
とたんに、1階から奥様が「これ。ラッキー。
お兄さんは試験前だから昨日は遅くまでお勉強。
起こしたらダメですよ」と怒られちゃった。
困ったな。お兄さんが起きてくれて、私をだっこして
下りる予定の階段を下りなくては。ちょっと怖いけど。
毎日がハッピーな自然流。

怖かったけど、なんとか2階から下りてきた。
そうだ。1階にはおじいちゃんとおばあちゃんの
部屋があるよ。こっちは和風の畳のお部屋。
ふすまが開いていたら得意の足技は不要。
尻尾をラジコンカーのアンテナのようにピンと
たてて、お尻ふりふりモンローウォークでドタドタ。
おっと、ふすま全開でおじいちゃんとおばあちゃんは
ホームゴタツをテーブルがわりにしてテレビを
見ているよ。トコトコとおばあちゃんとおじいちゃん
の間に滑り込むと、「ラッキーは朝から怒られたので
やってきたのかい。よしよし。」と慰めてくれた。
まあ、いいか。本当は起こしにやってきたんだけど。
毎日がハッピーな自然流。

またまたマリックの手品のように、瞼と瞼が握手
しだしたよ。ちょっとだけウトウトしていると、
奥様からご飯の用意完了の合図が廊下を駈けて来た。
おばあちゃんが「ラッキー。朝ご飯食べに行くよ」と
頭を軽るくポンポンと合図。
ハッと我に返って、またまたあくび一発、ダッシュ。
後ろでおばあちゃんがあきれ顔。
「ラッキーがやっぱし一番元気だね。見習わないと」
とおじいちゃんの顔を見て微笑みながら言った。
おじいちゃんも、「そうだな。ラッキーのように
いつも元気一杯・ファイト!と天真爛漫に生きたい
な」とうれしそうにうなずいていた。
毎日がハッピーな自然流。

朝ご飯が終わって、おばあちゃんがいつも通り
梅干を入れた湯のみに熱いお茶を入れて、ゆっくり
楽しんでいると、ご主人様から今日の予定と当番の
割振りの発表だ。
奥様とおばあちゃんはいつも通り炊事当番。
今年はお兄さんが不参加なので、おじいちゃんと
ご主人様でメインの田んぼの稲刈りだ。
ミニ田んぼの稲刈りは明日することになった。
さっそくそれぞれの持分の準備開始。
ラッキー一家への指示はなかったけど、稲刈りが
終わる前と後で、いっぱい遊ぶ予定は打合せ済み。
ご主人様には内緒だけどね。
毎日がハッピーな自然流。

おじいちゃんはいつものタバコ一服が終わったら、
作業服に着替えるために部屋へリターン。
ご主人様もインターネットで最終天気予報を確認後、
おじいちゃんと同じように着替えるためにリターン。
奥様とおばあちゃんは朝ご飯の片づけ中。
サンダー父ちゃんとエルザ母ちゃんは、すでに縁側で
日向ぼっこ。あれ~。居間でのんびり中は私だけ。
先ずはだれをターゲットとしてアタックしようかな。
お兄さんとおばあちゃんが対象外の場合は、やっぱし
おじいちゃんしかいないかな。CPUの意見通り、
あくびと手足ストレッチをしたあと、トレドマーク
のしっぽふりふりおじいちゃんの部屋にドタドタ。
毎日がハッピーな自然流。

おじいちゃんの部屋に行くと、いつもの作業服に
着替え中。おじいちゃんの足元で得意の前足キックで
私の到着サインを発信。
おじいちゃんも微笑みながら「わかった。わかった。
着替えたら一緒に田んぼへ連れていってやるよ。」
おじいちゃんの着替えを終了して、腰にはいつもの
日本手ぬぐいをセット。胸のポケットにピースと
マッチをほりこんで、いざ出発。
おじいちゃんは結構歳なんだけど、やっぱし大好きな
農業をするときは、背筋をピンと伸ばして、
いそいそとでかけるよ。私もおじいちゃんを見習って
スタスタスタと忍者のように歩こうっと。
毎日がハッピーな自然流。

さあて。お庭にでるとご主人様がすでに到着。
おじいちゃんと打合せ。先ずはJAにコンバイン
を取りに行くんだって。軽トラックで行くので
私もヒッチハイクOK。
今回はご主人様とおじいちゃんだけなので、私も
おじいちゃんの膝上OK。いざ、出発。
JAまでは15分ぐらいで到着だ。
ご主人様がJAの事務所で手続き中、おじいちゃんと
軽トラック内で待ち状態。おじいちゃんはいつも通り
胸ポケットから大好きなピースを取出して、
おいしそうにスパ~。ちょっと煙たいけど、大好きな
おじいちゃんなので大目に見ようっと。
毎日がハッピーな自然流。

待っていると、ご主人様がJAの倉庫からコンバイン
に乗ってやってきた。
ご主人様はおじいちゃんに合図して先に出発開始。
おじいちゃんもご主人様のコンバインの後を、
いつもの超安全スピードでついていく。
これじゃ、きっと30分以上のドライブになりそうだ。
助手席の上で伏せ状態なので、またまたマリックの
登場だ。田んぼに着いたら起こしてね。フニャ・グ~。
しばらくすると、おじいちゃんが私の頭をなぜながら、
「ラッキー。無事に到着したで。起きなさい。」
おっと。ぐっすり寝ちゃったみたい。
おじいちゃんに抱えられて台地に着地。やれやれ。
毎日がハッピーな自然流。

あれ!風もないのに稲穂がガサガサ動いてる。
ひょっとするとイノシシでもいるのかな。
おじいちゃんの後ろに隠れてそっと覗いていると
なんとサンダー父ちゃんがヌ~ッとでてきたよ。
続いてエルザ母ちゃんもヌ~ッ。
しまった。おじいちゃんを選択したのが間違ったかな。
父ちゃんと母ちゃんを選択していたら、田んぼの
かくれんぼに最初から参加できたのに。
エルザ母ちゃんが「ラッキー、コンバインが動き
出したらかくれんぼできないのでおいで。」と言って
サンダー父ちゃんとエルザ母ちゃんが田んぼに
逆もどり。ヤッタ!私も田んぼに突進だ。
毎日がハッピーな自然流。

稲穂が育った田んぼの中は、まるで大迷路。
なんにも見えないよ。見えるのは稲の茎の束だけだ。
しかし、鼻レーダーは敏感だよ。
風上からの匂いはバッチリキャッチ。
しかし、父ちゃんと母ちゃんの匂いがぜんぜんしない。
そうか。父ちゃんや母ちゃんはきっと風下にいるんだ。
よっしゃ。風下にUターンして突撃だ。
風上から風下にジグザグ探索開始。
扇状に探索していってもぜんぜん見つからない。
おかしいなあ。DNAには、この探索方法が一番って
書いてあるんだけど。あれ!探しているうちに、
田んぼの端っこに到着だ。???
毎日がハッピーな自然流。

ちょっと休憩しようっと。田んぼの迷路から出て
まわりを見渡すと、アレッ!父ちゃんと母ちゃんが
軽自動車のそばに座っている。
どおりで鼻レーダーが匂わなかったんだ。
「母ちゃん。卑怯だよ。これじゃ鼻レーダーで探索
できないよ」て言ったら、
「どうせ鼻レーダーで探索するだろうと思ったから
風下からすぐに脱出したんだよ。」
「こんどは脱出なしでもう一度鬼ごっこしようよ」
とおねだりしていると、ご主人様のコンバインの
エンジンが始動し始めた。あ~あ。これで作業終了
まで、田んぼの中での遊びはおあずけだ。
毎日がハッピーな自然流。

コンバインは二人のり。先ずはご主人様が運転して
おじいちゃんが後ろで脱穀状態を確認する。
最近のコンバインはコンピューター制御で刈取り・
脱穀・わら束の結束・廃棄を自動的にやっちゃうよ。
おじいちゃんが後ろに乗って確認は不要なんだけど、
やっぱし自分の目で確認しないと納得できないんだ。
コンバインの前からラッセル車が雪を吸い込む様に
稲が2筋づつ吸い込まれていって、後ろのタンクに
セットされている紙袋にもみが自動的に蓄えられて
おしりから紐でくくられたわらを落として行く。
タンクの上では籾殻や稲穂のカスがもうもうと
巻き上がっているのが逆光の中で見えている。
毎日がハッピーな自然流。

田んぼの半分ぐらいが終了した時点でお昼タイム。
ご主人様とおじいちゃんが引き上げてきた。
しかし、奥様とおばあちゃんの給食係はまだだよ。
ご主人様が携帯電話で奥様に確認中。
ご主人様がなにか笑って電話を切ったよ。
電話を切った途端に給食係が現れた。
電話した時には、そばに来ていたんだ。
さっそく軽自動車の荷台をテーブル代わりにして
お昼ご飯の用意だ。メニューは定番のおにぎりと
漬物、鳥のから揚げにサラダの大盛りだ。
ラッキー一家は、いつもはお昼抜きなんだけど、
今日はビーフジャーキーとミルクの特別昼食。
毎日がハッピーな自然流。

ラッキー一家の昼食はすぐに済んじゃったので、
またまたラッキー一家で遊ぶことにしたよ。
収穫の済んだ空き地でスキーのスラローム競争の
ようにもみ袋とわら束をポールにみなして、サンダー
父ちゃんとエルザ母ちゃんが競争中。
私は父ちゃんや母ちゃんのように長い間走れない。
だから、わら束に隠れていて、母ちゃん達が走って
きたら脅かすことにしたよ。
最初の1回はエルザ母ちゃんは驚いたみたいだけど、
2回目からは驚かないのでや~めた。
そうだ。近くの円山川からやってきた小さな鳥を
追っかけようっと。こっちは絶対驚いてくれるぞ。
毎日がハッピーな自然流。

遊び疲れてラッキー一家は田んぼの中のもみ袋を
背もたれにして休憩。
奥様が軽トラックのそばから手招きしているよ。
先ずはサンダー父ちゃんが気づいて走っていった。
エルザ母ちゃんはどうしようかなという感じで
サンダー父ちゃんの様子を観察中。
私はそのエルザ母ちゃんを観察中。
サンダー父ちゃんが何か咥えて戻ってきた。
アレ~。鳥のから揚げを咥えているよ。
エルザ母ちゃんと私のエンジンも全開。
ターボチャージャーをフル稼働させてダッシュ。
よかった。どんじりの私も鳥のから揚げゲット。
毎日がハッピーな自然流。

鳥のから揚げをたいらげて、遊びに行こうと思ったら
ご主人様がサンダー父ちゃんを呼び戻している。
これから稲刈り後半戦の始まりだ。
しかたがないのでラッキー一家は軽トラックの日陰
から、作業進捗状態をチェックする監督さんに変身。
後半戦はおじいちゃんも総監督さんに変身だ。
総監督さんはトレードマークのピースをスパ~ッ。
奥様とおばあちゃんは、マネージャーとして食事の
後片付け。後片付けが終了したら、リアカーに食器や
魔法瓶などを積んでご帰還だ。サンダー父ちゃんと
エルザ母ちゃんも、奥様たちと一緒に帰るんだって。
私はこれから何が起こるか知りたいので待とうと。
毎日がハッピーな自然流。

小一時間待ってると、ご主人様が運転のコンバインが
田んぼの全面カットを終了した。
コンバインはディーゼルエンジンを響かせて
戻ってきた。
ご主人様とおじいちゃんが打合せ。
ご主人様はコンバインをJAに返却しに行った。
おじいちゃんは軽トラックで田んぼの中に下りて
いった。何をするのかなと思っていると、一定間隔に
置かれているもみ袋を回収している。
私も行こうかなと思ったけど、車がいるところは
行ってはいけない事をDNAが発信。
今回はここから見物としゃれこもう。
毎日がハッピーな自然流。

もみ袋の1回目の回集が終了して軽トラックが
引き上げてきた。それと同じくしてJAのワゴンが
やってきた。ドアが開くとご主人様が降りて来た。
JAも最近は大サービス競争で大変なんだね。
きっとお客様を取られないために送迎サービス付き。
軽トラックのもみ袋をご主人様とおじいちゃんで
降ろして、次はご主人様が2回目の回収に出発。
おじいちゃんは毎度のピースをおいしそうにスパ~。
一息いれたおじいちゃんが私に、「ラッキー。わら束
を干すために田んぼに行くよ」と甘い勧誘。
OKサインを尻尾フリフリでお返答。
やっと私の出番。何かわからないけど頑張るぞ。
毎日がハッピーな自然流。

おじいちゃんと一緒に田んぼに入ると、端の方を
紐でくくられたわら束を拾って、くくり紐の所を
基点にして、製図で使うコンパスのような・人型に
半分づつひねってから田んぼに立てていっている。
そうか、こうするとお日さんが一杯当ってわら束が
乾燥するんだ。
お隣の田んぼは、杭が田んぼの中に立ててあって
その杭にわら束が蓑傘の塔のように重ねているよ。
また、向かいの田んぼは杭と杭の間に丸太んぼを
通して鉄棒のようにして、その横棒にわら束を
引っ掛けているよ。
田んぼによってみんな特徴が出ていて楽しいな。
毎日がハッピーな自然流。

おっと、見物しているだけではおじゃま虫の気が
おさまらない。
それじゃ、ちょっといたずらしようかな。
おじいちゃんの立てたわら束をサンドバッグ
代わりにして、得意の前足キック。
やっぱし得意技なので人型わら束はノックアウト。
次は四足動物の得意技、後ろ足キック。
これは馴れていないので、わら束の間を空振りだ。
あれ、私ってひょっとしたら人間になっちゃったかな。
次はバッファローよろしく体当たり。
体当たりした拍子にわら束が頭の上にドサッ。
体当たりは自分より小さな標的じゃないとダメダメ。
毎日がハッピーな自然流。

一生懸命おじゃま虫をしていると、後ろから
「コラ~ッ。おじいちゃんの邪魔したらダメだよ」
とご主人様の声。後ろを振り向くと、ご主人様が
私の倒したわら束を起こしている。
しまった。ご主人様はてっきりもみ袋の回収中と
思っていたよ。
ご主人様の声は怖かったけど、顔は笑っている。
おじいちゃんも振り向いて笑っている。
おじいちゃんがご主人様に「お兄さんも小さい時に
ラッキーと同じ事をしていたな」とうれしそうに
話している。ヤッタ~。私はやっぱし人間なんだ。
お兄さんの小さい時と同じなんだって。
毎日がハッピーな自然流。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?