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ラッキーの日記帳 奥様のファッションショー

ラッキーの日記帳 《奥様のファッションショー》

ラッキーはマンションの7階に住んでいるキャバリア犬。

今日は5月の連休明けの月曜日。
週はじめの月曜日は何かさびしいな。
今日は4連休を毎日ご主人様とのハッピーデートを
繰り返した後の月曜日なので特別だ。
奥様も朝から洗濯でいそがしそう。
しかたないから、ベランダに出て外の景色を
ぼ~っと見ていると、ピンポー~ンと来客サイン。
ワンと一声ほえてから、SS1/4マイル競争の
自動車のように玄関に猛ダッシュ。
奥様がインターホンで来客を確認してから、
うれしそうに印鑑をもって玄関にやってきた。
宅配便のお兄さんから何か大きな包みをうけとった。

その包みをリビングにおいて、「ラッキー、
この包みは大切なものだからさわちゃだめよ」と
言って、掃除を開始しだした。
いつもなら、掃除機を鬼に見立てて追っかけ
るんだけど、あの大きな包みが気になったので、
奥様が隅のほうを掃除している間に確認開始。
まずは、鼻レーダーで匂いの確認だ。
感度を目一杯に上げても何も匂わない。
しかたがないのでダンボールの端っこを
ガリガリ爪でひっかいて穴あけ作戦開始。
奥様は掃除機のブオ~ンという音で聞こえない。
しめしめ、もう少しで穴があきそうだ。

やった~!ダンボールの端っこに鼻が突っ込める
分だけ穴あけに成功だ。
そっと鼻を突っ込んでみると、何か刺激臭がツ~ン。
何せ、鼻レーダーの感度を目一杯にしたまま
鼻を突っ込んだので大変だ。
あわてて鼻を穴から出したんだけど、鼻がムズムズ
して大きなくしゃみが3回も出てしまった。
このくしゃみで奥様が「ラッキー、どうしたの」と
掃除機のスイッチを切ってやってきた。
「しまった。穴がみつかっちゃう」と思った瞬間、
「こら・ラッキー!端っこかんだな。私の大事な
着物が入っているんだから」と雷が落ちちゃった。

奥様はあわてて食卓の上を片付けて、その上に
ダンボールを非難。
「そうね。ラッキーにさわっちゃだめと言っても
わかるわけないね。掃除が終わったら見せてあげる
から、もうちょっと待っててね」と頭をなぜなぜ。
あれ~?いつもなら、頭をコツンとされるんだけど、
今日は逆さまだ。まあいいか。コツンよりいいもんね。
しかがないので、掃除機の後を追っかけて楽しむ事に
針路変更。やっぱしこの方がストレス発散に一番だ。
掃除も無事に終了したので、ダンボールのご開帳。
中から、黒い着物のセットを大事そうに出してきて
ハンガーにつるしていった。

「ラッキー。これは私のおニューの留袖なの。
今度、理恵ちゃんの結婚式に着るのよ」とまたまた
頭をなぜながら、着物をうっとり見ている。
何だ。着物だったのか。それならあんなに
頑張るんじゃなかったな。後でわかったんだけど、
鼻レーダーを壊しそうになった匂いは、防虫用の
ナフタリンだったんだって。
全部出し終えたら、奥様はおばあちゃんに電話。
「お母さん、留袖着いたから持っていって良い?」
と、猫なで声でお伺い。
電話の先でOKが出たみたいで、奥様は私の方に
向かって、にこにこしながらOKサイン。

お昼ごはんを食べ終わったら、さっそく着物を
元のダンボールに詰めて、「ラッキー、おばあちゃん
のところに行くよ」と言って私の散歩セットを
テキパキとセット。大きなダンボールをもって、
私のリードをもっていそいそ出発。
おばあちゃんのところは、向かいのマンション
なので、まっすぐ行くと3分ぐらいで到着だ。
いつもの散歩だと、私が3歩進んで2歩下がる
スタイルなので、いつ到着するかわからないけど、
今日は奥様の「急いでいくわよ」という強い意志が
リードから伝わってくるので、私も目一杯協力して
スタコラサッサと4分で無事到着。

おばあちゃんのお家では、さっそく着物の着付け
教室が開校。当然、おばあちゃんが先生で奥様が生徒。
おじいちゃんは用務員のおじさん役で、私の相手。
おじいちゃんの鼻は、私ほどではないけれど、
結構感度良好。だから、私の体臭にちょっと過敏症。
「おいおい、また私がラッキーの担当かい。今日も
結構ラッキーのにおいがきついな」といいながらも
ソファーの横にあげてくれて、おばあちゃんの着付け
教室を見たり、テレビを見たりしている。
おばあちゃんの長年のノウハウで、奥様が徐々に
古典的な日本女性に変身中。おじいちゃんも娘の
変身に目を細めて満足しているみたい。

第一回目の着物着付け教室も無事終了して、着物は
おばあちゃんのところに預かってもらって帰宅。
帰りは、着物のダンボールが無くて、着付け教室も
無事に終了した奥様はルンルンなので、私の行きたい
ルートの散歩を約1時間、目一杯させてもらった。
ご主人様が帰ってきての食事の話題は、もっぱら
着物着付け教室の事と奥様が選んだ着物自慢。
ご主人様は着物を見ていないので、適当に相槌を
打っているのを感づいた奥様はちょっぴりお冠。
「しまったな。あなたに見せてからおばあちゃんの
ところに持っていくんだった。おばあちゃんも
この留袖はいいねえと言っていたんだけど」

その後は、水曜日に第二回目のおばあちゃんの
着物着付け教室が開催。第一回目と同様に
私はおじいちゃんと見学者。
その時、奥様が「お母さん、今度の土曜日に
一度自分で着てみるわ。うまくいったら本番は
自分で着てみるね」と問い合わせ。
「そうやね。しかし、場所は東京でしょ。
いざという時応援できなから、今回は本職に
頼んだほうがいいよ」とアドバイス。
「それもそうね。本番は本職に頼むとして、
土曜日はきっちり着せてね。主人に私の優雅な着物姿
を見せてハッとさせなくっちゃ」と私にウインク。

さあて、今日はご主人様にお披露目の土曜日だ。
奥様はおばあちゃんのところに一人でお出かけだ。
ご主人様はいつものように昨晩のニューヨークの
株の確認をインターネットでしている。
私は何もすることがないので、テレビの前で
かりんとうを一杯食べている夢の世界を堪能中。
ご主人様の朝の仕事?も一段落したのか、
リビングにやっていて、コーヒーを飲みながら
新聞を見ながらテレビを見る特技を披露中。
そんなひと時をストップさせる電話の呼び出し音。
ご主人様が何か話して電話を切った後、「ラッキー、
奥様のお呼びだからでかけるよ」とおこされちゃった。

いつもの散歩セットでご主人様と出発だ。
今日はラクチンコースのエレベーター利用。
エントランスに到着すると、ご主人様をリード
して猛ダッシュ! 玄関をでて左コースに行こうと
したら、ご主人様から「ラッキー、散歩じゃないよ。
おばあちゃんのところに行くんだよ」と急ブレーキ。
ご主人様と長~い散歩デートができると思ったけど、
ご主人様のご命令ならしかたないか。
そうだ、おばあちゃんのところで、かりんとうを
いっぱい食べられるかもしれないから、気分を
変えて、今度はおばあちゃんのところへダッシュ。
ご主人様は私の作戦を知らないので目をシロクロ。

今までの新記録の3分ジャストぐらいで到着だ。
ご主人様がチャイムを押す前に、おばあちゃんの
玄関をガリガリガリとノックがわりの到着サイン。
ご主人様も呆れ顔で「ラッキー、おばあちゃんに
しかられてもしらないからな」と言いながら
チャイムをピポ~ン。
しばらくすると、ドアが開いておじいちゃんが
顔をだした。
「ケンさん、入って。あれ、ラッキーも来たの?」
と冷たいお言葉。トホホ。
しかし、ラッキーだったかもね。ガリガリサインが
ばれていたら、おじいちゃんなら雷落ちていたからね。

リビングに入って周りを見渡しても奥様の姿が
見えないので、ご主人様がキョトンとしていると、
おじいちゃんが「ケンさん、まあ座って待ってくださ
いな。まもなく、えいこの着物姿が見られますよ。
親ばかかもしれないけど、結構いい線いってますよ」
とニコニコしながらご主人様に説明中。
奥様の所在は鼻レーダーで北の部屋に居ることは
察知すみなので、お庭番の忍者のようにこっそり
北の部屋をのぞきに行った。奥様は2回の着物着付け
教室の成果があって、着物姿がバッチリ決まっている。
奥様が私を見つけて「ラッキー、どう?」と聞かれた
ので、しっぽを目いっぱい振ってOKサイン。

おばあちゃんが最後の帯の調整を終わって、
「OK。ケンさんに見せてあげなさいな」と
ポンと奥様のおなかあたりをたたいた。
「ラッキー、おいで」といいながら奥様はゆっくり
リビングへ。いつもは10歩ぐらいで行けるけど、
今日は倍ぐらいかかってるので、私もしかたなく、
シーズー犬のゴンちゃんみたいにちょこちょこ歩き。
リビングに到着して、ご主人様の前でゆっくり
ターンしてにっこりした奥様を見て、ご主人様も
大満足のご様子だ。
おばあちゃんもご主人様の様子を見て、「ケンさん、
えいこの着物姿もいいでしょ」と子供自慢。

ご主人様は私を抱いて、頭をなぜながら、
「おとうさん、おしとやかなえいこもいいものですね」
と、きっちりヨイショしてるよ。
私を抱いた時点で、照れていることがありあり。
奥様がソファに座って一言。「着物ってしんどいね。
座っても帯がじゃまで背もたれ使えないし、背筋を
ビシッと伸ばせていないといけないし、帯がきつくて
何も食べれそうもないし」とすでにギブアップ宣言。
おばあちゃんがその一言に、「えいこ、理恵ちゃんの
結婚式と披露宴で5時間ぐらいは我慢できないと」と
言って、ご主人様にウインク」。
はてさて、このウインクの意味は?????
毎日がハッピーな自然流。

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