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彩(あや)とラッキー(2)

彩は多摩市に住んでいる高校1年生。
ラッキーは神戸に住んでるキャバリア犬。
今日は5月のゴールデンウィークの最終日。
今日は彩のお家でお友達とプチパーティを
開催する日だ。プチパーティといっても彩を
含めて仲良し4人でお部屋でワイワイガヤガヤ
するだけだ。サラリーマンが4人そろって
ワイワイガヤガヤといえば、アウトドアなら
ゴルフ、インドアならマージャンか居酒屋で
グチバトルぐらいかな。
今回の彩の考えたプチパーティは、お昼を
兼ねたカレーライスを食べながら、学園生活
の楽しいことをダベリング。その後は手作り
チーズケーキと紅茶でイギリス風にティー
タイム。この時の話題は、青春の淡い恋の話
になるような予感あり。当たるかな?

仲間3人がやってくるのは、11時30分の
予定なので、その前にカレーライスとチーズ
ケーキを作らないといけないので、いつもの
お休みの日と違って、朝6時に起床。
と言っても、元気印のおかあさんに起こされた
だけのこと。体内時計は休日タイムなので、
寝間の上でボーッと30分ほど禅の修業の
ような格好で体内時計を早送り。
やっと、体内時計も戻ったところで、パジャマ
からジャージに着替えて洗面完了。
とたんに今度は体内時計が進みだして、
グ~ッと食欲増進指令のアドレナリンが増殖。
このところの彩はちょっとダイエット中なので
納豆とヨーグルトとオレンジジュースで朝食
終了。本当は、オレンジジュースをやめて、
野菜ジュースの方がいいんだけど苦手なんだ。

朝食のエネルギー補給も完了したので、早速
カレーライスの作成を開始。
今回のメンバーはみんなお年頃なので、肉系
よりもシーフード系カレーにすることにした。
先ずはみじん切りしたたまねぎをフライパンで
十分いためて、その後ににんじんの細切れを
いためて、お水を入れたなべにセットして着火。
あくをすくい取りながら約40分煮た後に、
さいころカットしたジャガイモと、おかあさんが
下ごしらえしてくれたエビとホタテとイカを
入れて約30分煮る。その後にカレーのルーを
入れて弱火でとろとろ煮詰めて完了。
一応完了したところで火をとめて、食べる前に
再度温める方法をおかあさんから伝授。
馴れない台所仕事をしたので、ここでちょっと
クッキーと牛乳で一休み。

午後の予定が決まっていないなら、このまま
休憩の延長でお昼ごはんに突入するんだけど、
今日は友達が来る前にチーズケーキも作らな
いといけないので、重い腰をあげて今度はチ
ーズケーキ作りのスタート。卵と生クリームと
チーズと砂糖を料理本どおりの分量をボール
に入れてかき混ぜて、型に流し込んで下ごしら
え完了。後はオーブンレンジで小一時間
焼き上げたら出来上がり。焼きあがるまでの
時間を活用して、彩の部屋の掃除と、居間に
あるガラスのテーブルを真ん中にセット。
何とか4人座れるスペースを確保するために
ベットの上は物置状態に大変身。やれやれ、
やっと片付け完了と思ったときに、おかあさん
が確認にやってきて、ベットと机の上のものを
片付けるようにとのご命令がでちゃった。

時間もないし、ともかく押入れに押し込む
ことに決定して、なんとか格好をつけた。
当然、押入れの中は炊き込みごはんのような
状態なんだけど、机の上はラッキーの写真と
勉強道具だけになってスッキリ。ベットの上も
寝具のカタログのようにスッキリ。
これで友達を迎える準備は完了したので、
居間に戻ってテレビを見ることに決定。
居間のソファーに横たわって、クッキーをパク
つきながらテレビを見ていると、ピポ~ンと
来客の合図あり。おかあさんが確認に行って、
「彩。お友達が来たわよ」と我が家が100坪
ほどの豪邸に合うような大きな声で呼んで
いる。走って玄関に行くと3人そろってご到着。
3人を彩の部屋に案内するまでは、借りてきた
猫状態だけど、さてさてどうなりますか?

3人の愛称は「チイ」「ユカ」「エリ」。
まだ2ヶ月のお付き合いなので、名前を
ちじめて読んでいる。当然私も「アヤ」。
3人が彩の部屋に入るのは今回がはじめて。
3人それぞれが彩の持ち物や部屋の様子を
通関検査員のようにシビアーにチェック中。
その中の「チイ」が机の上のラッキーの写真を
見つけて、「ねえ、この犬の写真どうしたの。
写真の中に何か書いてあるよ。アレ~ッ
ひょっとしたら彼からのプレゼント?彩も
やるなあ!」と3人でラッキーの写真を
覗いている。彩は「そんなのだったらきっちり
隠しているよ。S高のラウドスピーカー3人
にばれるようなドジしないわよ」とうろたえ
ないので、みんな獲物を取り損ねたライオン
のようにバツがわるそうに話題を変えた。

3匹の雌ライオンの総合チェックも無事終了
したので、ランチタイムとすることに決定。
彩はそこでカレーライスを温め直すのを
コロッと忘れていたので、あわてて台所に行くと
カレーライス独特のターメリックのにおいが
プ~ンと漂っている。ガスコンロの上にはカレ
ーライスのなべがセットされていて、細火状態で
アツアツ状態になっている。さすが、15年の
お付き合いでなんでもわかっているおかあさん
がセットしてくれていた。
ルーたっぷりごはん少量のカレーライスを
4人分セットして持って行こうとしたら、
興味津津のお母さんが「彩は冷たいお水と
スプーンもってきて。私がカレー持っていって
あげるから」と言って、さっさとお盆にのせて
行っちゃった。

冷たい水のポットとガラスコップと大きな
スプーンを用意して持っていくと、何と
お母さんがベットに座って友達とダベリング。
彩が入っていくと、シャベリングNO1のユカが
「彩のお母さんって若くておもしろいね。
彩がうらやましいな。私は4人姉妹の末っ子
だから、お母さんいい歳。だから話合わない
もん」と言いながら、私のお母さんにウインク。
お母さんも「おもしろいは別にして、若く
見てくれたのはうれしいな。さあ、彩の作った
カレー一杯食べてって」と超ご機嫌。
彩はこのままだとずっと居座られそうなので
「お母さん、狭いから居間に行ってて。後は
本当に若い4人でワイワイするんだから」と
すねすね顔でお母さんに合図。これが効いた
のか、お母さんはお盆を持って出て行った。

カレーを食べながら、予定通り学園生活での
共通体験をもとにして、しゃべるしゃべる。
そうしていると、お母さんがまたまたやってきて、
「彩、そろそろティータイムにしようか」と
いいながら、カレーセットを片付け出した。
アレッと思って時計をみると、なんとすでに
3時を回っている。
彩はみんなに「そうね。ランチタイムはこれぐら
いにして、次はティータイム。ティータイム
には彩特製のチーズケーキが付きますので
今しばらくおまちください」といいながら、
お母さんと一緒に台所へ。
台所で、ふきんをかけておいたチーズケーキ
を見てびっくり。
作ったときはふっくらしていたチーズケーキが
2/3くらいに陥没。トホホ。

みんなに宣言しちゃったので、最初の予定通り
チーズケーキとダージリン紅茶を4人分
セットして出すことに決定。
みんなの感想はどうかな?と心配していると、
いつもグルメNO1と豪語しているチイが、
「このチーズケーキおいし~い。自由が丘の
《モンサンクレール》といい勝負かも?とほめら
れちゃった。ルンルンでケーキを食べていると、
ボデコンのエリがボソッと「このケーキちょっと
しぼんでいない?もっと膨らし粉入れてふっく
りさせないと見栄えよくないよ」と一言。
彩はこの言葉を受けて「そうね、今度は
膨らまし粉を入れてエリみたいにボインに
するわ」とあっさりと受け答え。本心は
「エリのブラみたいに寄せてアップして見栄え
よくするね」と心の中で雄たけび。

この後も学園生活での話題が続いていた時に、
モード雑誌を読んでいたチイが急に
「ねえねえ、入試の英語の問題覚えている?
私、問題の中で首が長くなったり、短くなったり
するタートルという長生きの動物うんぬんと言う
試験問題を、この雑誌の中のタートルネックの
ニットセーターを見ていたら思い出しちゃった。
英文和訳で、ここまで訳せたのに、タートルだ
けは思い出せないんだもの。仕方ないので回
答はカタカナでタートルと書いたんだけど、本
当は何かみんな知っていた?」と大きな
ひとみでみんなを見渡したら、すかさずユカが
「もしもし亀よ亀さんよ」と歌いだしたので
みんな大笑い。チイは「何だ。亀さんだったた
のか。タートルネックって亀の首のことだったん
だ。きっと採点はカメじゃないのでダメだったよね」

チイの入試の話と駄洒落を聞いて、彩は
急にラッキーの日記帳を思い出しちゃった。
「ねえ、入試の時はみんな不安じゃなかった?
私なんか最初はA高受ける予定で急にS高に
変更したので、去年の秋はブルー一色だった
んよ。」とぽつりとつぶやいた。
この一言を聞きつけたユカが、
「ヘ~ッ。元気印一本の彩でもブルーの時が
あったんだ。あれ~!ひょっとしたら、その
ブルーをブライトに変えてくれた愛しの人が
いたんだな?それなら、白状しなよ。ねえねえ
T中のだれ?私の知っている男の子?」とデカ
物語の刑事のように詰め寄られちゃった。
「そんなんじゃないけど、すてきなおじさまよ」
と彩が言ったものだから、エリもチイも目の色
を変えて彩の次の言葉を待っている。

「実は、彩がブルーになっていた時に、机の上の
ラッキーの飼い主のケンおじさんから《ラッキー
の日記帳》というおもしろい癒し系童話をいた
だいたんだ。それでブルー彩がブライト彩に
変身できたんだ。すてきな話でしょ」と言いなが
ら、机の上のラッキーの写真にウインク。
その話を聞いていた、ちょっとおませでボデコン
自慢のエリが「彩、そのケンさん一度紹介して
よ。すてきな容姿の方だったら、少々年上でも
私はOKよ」とひとみを輝かせている。彩もこれ
には参っちゃった。だって、ラッキーは写真で
知っているけおど、ケンおじさんはお母さんし
か知らないもの。「エリ、実は私もケンおじさん
は神戸に住んでいるお母さんと同じ会社の人
というだけで、容姿・年齢は不詳。知っている
のはお母さんだけ。」と説明しても信用してくれない。

エリはそんなわけないと食い下がってくるので、
お母さんに今までのいきさつを話して、ケン
おじさんのことを聞くことに決定。
お母さんは、ニコニコしながら、「そうね、身長
は175cm、体重は多目。髪の毛はシルバーグ
レイでめがね有り。ここまではまあまあだと思う
けど、お歳がきっとみなさんの年齢×3倍ぐら
い。これはきっと致命的な問題でしょうね。年上
好みのエリさんでも誤差の範囲を飛び出して
いるんじゃない?それともう一つ欠点と言えば
関西人特有の駄洒落大好きでシャベリッチタイ
プ。東女には合わないかも。しかし、作家としての
ユーモアさは良いですよ。一度《ラッキーの日
記帳》を彩から見せてもらっては?」と彩と
ラッキーの写真にウインク。彩は全ての点で
想像していたケンおじさんだったので大満足。

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