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農家のラッキー(春)

【農家のラッキー(春)】
ラッキーは和田山農家で
かわいがられているキャバリア犬

私は竹田家具で有名な
和田山の農家の一員です
おじいちゃんとおばあちゃん、
ご主人様、奥様、お兄さんと
サンダー父ちゃんと
エルザ母ちゃんと私の
5人+3匹の大家族
田んぼと畑があって
農業のメインはおじいちゃんと
おばあちゃんと奥様だ
ご主人様は地元の
佃煮・煮豆工場に勤めている
工場がお休みの日と農繁期は
ご主人様が大黒柱として活躍
今日は5月5日の端午の節句
いよいよ農業担当チームの出番
こんな家族のひとときを
これからご紹介します
毎日がハッピーな自然流。

5月の朝は真っ赤な太陽が
南東から上がってくる
いつもどおり奥様を先頭に
朝の行事が始まるよ
私はいつもどおり一回起きた後
ウトウトウト
あ、奥様からラッキーコール
最近は新聞運びもできるように
なったんだよ
尻尾をピンとアンテナ風に立てて
玄関先のポストに自慢の耳を
はためかせてダッシュ
奥様がチラシを抜いた新聞の束を
渡してくれる
それをくわえて180度方向転換
またまたフルスピードで
居間にピットイン
ピットで待つご主人様に
新聞束をタッチ
毎日がハッピーな自然流。

朝の一仕事が終わると
大好きなたらの干物、ミルク、
ビーフジャーキーのモーニング
お主人様は会社、お兄さんは
学校に行っちゃった
サンダー父ちゃんとエルザ
母ちゃんは5月は何して
一日を過ごすかわかっている
私は大好きなおばあちゃんの
腰ぎんちゃく
さて、今日は何をするのかな
おばあちゃんはいつもどおり
熱いお茶に梅干を入れて
ゆっくり飲んでいる
そろそろ催促のために
前足でとんとんノックした
おばあちゃんはにっこりして
私の頭をなでてくれた
ちょっと要求は違うけど
おそばでお座りしていよう
毎日がハッピーな自然流。

おばあちゃんのお茶タイムが終了
よっこらしょの掛け声とともに
たちあがったよ
その後ぐっと背中を伸ばして
両手で腰の後ろをトントンして
自分の部屋に歩き出した
私もまねして両足をぐっと
突っ張ってあくび一発
そしておばあちゃんの後ろを
モンローウォークで腰ぎんちゃく
おばあちゃんは作業着の
もんぺに着替え中
私はおばあちゃんの脱いだ
ちゃんちゃんこを加えて旗振りだ
これこれ、破れちゃうからダメと
やさしい口調でとめられちゃった
毎日がハッピーな自然流。

おばあちゃんの着替えが終了
軽くラジオ体操の一節を行って
玄関にご出勤
私はいつもの両足を突っ張って
のびのび運動してから
おばあちゃんの後ろを
大会社の秘書室嬢のように
モンローウォークでスタスタスタ
玄関を出るとおじいちゃんが
すでにグレーの作業着と
麦わら帽子と軍手姿で完全武装
おばあちゃんは日本手ぬぐいを
ひょいっとかぶってから
おじいちゃんと同じ麦わら帽子で
日よけ完了
今日のご出勤はミニトラクター
運転手はおじいちゃん
おばあちゃんと私は後ろに
連結したミニ貨車の上で重役待遇
毎日がハッピーな自然流。

超低速安全走行で田んぼに到着だ
今日は5月5日の端午の節句
周りの家の高いさお竹には
こいのぼりが泳いでいる
今日の作業は田んぼをミニトラで
ならしてからお水を一杯にする
おじいちゃんは貨車をはずして
あぜ道から田んぼにミニトラを
ゆっくり降ろしていった
おじいちゃんの見事な運転で
無事にミニトラが田んぼに着地
私はミニ貨車からおばあちゃんと
一緒におじいちゃんの運転操作を
応援
毎日がハッピーな自然流。

ミニトラを田んぼにおろしたので
ちょっと休憩
おじいちゃんは大好きな両切り
ピースをいつものように親指の
爪でトントンしてから
おいしそうにスパ~ッ
おじいちゃんはタバコの煙を
上手に輪にできる
ふわっと輪になったのを
私が見上げると、輪の中に
こいのぼりが青空をバックに
泳いでいる
大型カメラのように左右上下が
逆さまにに見えたら、きっと丸い
金魚鉢を金魚を狙って上から
のぞいている隣のタマ状態だ
おばあちゃんは奥様が用意した
ポットから熱いお茶を湯呑に
入れてふうふうしながら
青空バックに泳いでいる
こいのぼりを見上げている
毎日がハッピーな自然流。

おじいちゃんとおばあちゃんの
一服も終了したので、いよいよ
田んぼ作りの始まりだ
おじいちゃんはミニトラで
田んぼを掘り返しだしたよ
この作業をたっぷり行わないと
カチカチ土壌の田んぼになって
稲の根が育たないんだって
しまったな、私は生まれてから
ずっとおとうちゃんや
おかあちゃんに過保護に
されちゃったので、お腹の周りが
育ち過ぎたかも
私が稲なら特等米なのにな
そうだ、私の今日の時間つぶしは
何をしようかな
ミニトラなどの機械を使っている
時は絶対におじいちゃんには
近づかないように躾されている
こんな時はおばあちゃ~ん
毎日がハッピーな自然流。

おばあちゃんはお水を引き込む
溝を清掃する当番中
去年の秋から使っていないので
短い距離だけど泥やゴミや枯葉
などでいっぱいだ
畑作業でおじいちゃんがいつも
使っている鍬で泥をすくって
ポイっと土手にほおり上げる
この泥の中にミミズや虫が
いっぱいいるので、この中身を
探検することに決定
先ずは鼻を近づけて臭覚で確認
しかしこの作戦は大失敗
泥の臭いで大事な鼻が
ひん曲がりそう、なにせ皆さんの
何万倍の超敏感臭覚装置を保有
サンダーとうちゃんに臭いの
嗅ぎ方を習ったんだけど
やっぱしうまくいかないよ
毎日がハッピーな自然流。

良いこと考えた、おばあちゃんが
ほおり上げた塊を平らにしてから
探すときっと探しやすいよ
私の持っている道具は四本足しか
ありません
よっしゃ、おしっこした後の
砂かけ作戦でトライだ
塊を後ろ足で砂かけよろしく
バサバサバサ
ちょっと力が入りすぎて
半径1mは泥だらけ
私のおしりも泥だらけ
さ~って宝物はあるかな
半径1mを超鋭敏鼻レーダーと
見掛け倒しの大きな目で探索だ
残念ながらこの塊には獲物なし
次の塊に挑戦だ
今度はちょっと手加減したので
半径50cmにうまくちらばった
やった~ミミズ君がビックリして
スネークダンス中
毎日がハッピーな自然流。

またまた次の塊に挑戦だ
今度の塊はあぜ道の溝側なので
同じ方向ではできないよ
しかたがないので180度
方向転換してから砂かけ作戦開始
開始早々おばあちゃんの悲鳴
あれっと思って振り向くと
おばあちゃんのもんぺのお尻に
泥がストライク
ラッキー、おばあちゃんのお尻は
キャッチャーミットと違うよ
ホームベースは反対側だよ
しまった、おばあちゃんに
牽制球を投げちゃったみたい
それではホームベース向かって
再投球
今度は上手に問題なしの場所に
散らばった
今度はげんごろうの子供がいたよ
毎日がハッピーな自然流。

そろそろ砂かけ作戦も飽いてきた
おばあちゃんも溝の掃除を終えて
貨車のところへ帰っていく
私も戻ろっと
おばあちゃんはあぜ道のそばの
蛇口をひねって顔と手を洗って
頭にかぶっている日本手ぬぐいで
きれいさっぱり汚れをぬぐった
私もおばあちゃんに手伝って
もらって鼻の周りや両足お尻を
きれいに洗ってさっぱりしたワン
おじいちゃんも田んぼ作りが
ほぼできあがり
おじいちゃんも休憩で戻ってきた
手と顔を洗って腰手ぬぐいで
さっぱり
さっそくあぜ道に座って一服だ
毎日がハッピーな自然流。

あ、おじいちゃんが携帯で
どこかに電話している
携帯の中からは元気印の奥様の声
わかったわ、もうすぐ持っていく
と言っている
何を持ってくるのかな
5分ほどすると奥様の到着だ
やった、籐製のバスケットだ
きっとお昼ごはんだ
今日は天気が良いので田んぼの
あぜ道でランチだよ
おにぎりと梅干とご主人様が
作っている佃煮だよ
おじいちゃんは粉末の味噌汁を
お椀に入れてポットから熱い
お湯をそそいで3人分の
味噌汁完成
貨車をテーブル替りに
「いただきま~す」
私はおばあちゃんのひざの上で
おこぼれちょうだい状態だ
毎日がハッピーな自然流。

おばあちゃんはおにぎりを1個
食べ終えると私用のタラの干物を
バスケットの底から出して
「ラッキーお食べ」と
くわえさせてくれた
まっすぐ横にくわえたので
前足を組めたら
まるで忍者ハットリ君
ちょっと無理なのでや~めた
たらの干物のしっぽ部分を
前足でうまくはさんで干物の
頭部分からガツガツガツ
おばあちゃんはおじいちゃんが
作ってくれた味噌汁を
おいしそうに飲んでいる
奥様もあぜ道に座り込んで
おにぎりをパックン中
私と同じように青空をバックに
泳いでいるこいのぼりを
まぶしそうに目を細めて
見上げているよ
毎日がハッピーな自然流。

今日は風があるけど陽だまりは
ポカポカして気持ちいい
おじいちゃんは食後の一服を
いつも通り始めたよ
おばあちゃんもいつも通り
湯呑に梅干を入れた後お湯を
入れておいしそうに飲んでいる
奥様はあぜ道に寝転んで日光浴
当然私は大好きなおばあちゃんの
ひざの上で夢の中
ちょっとの間私たちの時間は
電池切れ
「ラッキー起きとくれ」と
おばあちゃんの声
薄目を開けると奥様が片付けの
真っ最中、ひょっとすると
小一時間寝たのかな
おじいちゃんはミニトラの
エンジンを始動してあぜ道の方に
ゆっくり向かってくる
毎日がハッピーな自然流。

私はおばあちゃんのひざの上の
グリーン車からしぶしぶ下車して
あぜ道の陽だまりで再うたた寝
「ラッキーは寝ぼすけだね」と
おばあちゃんはあきれている
おじいちゃんが遠くで何か
言っている
「ラッキーそこどいとくれ」
「ミニトラが行けないよ」
しぶしぶ重い腰をあげて安住の
地を探す旅を開始
そうだ水を取り込む提が一等地だ
コンクリートでできているので
真夏はとても歩けないけど
今は適当に暖かくて最高だ
しかしおばあちゃんのひざの上と
ちょっと違うんだ
やっぱしコンクリートは
硬いのが難点だ
毎日がハッピーな自然流。

提の上から田んぼが見渡せる
おじいちゃんのミニトラも
あぜ道に無事ご帰還だ
田んぼはミニトラで
ひっかきまわしたので墨絵の様に
黒々としてでこぼこだ
おじいちゃんが棒を持って
こちらにくるよ
提の真ん中に突き出している
鉄の棒の穴に持ってきた棒を
突っ込んでグルグル回すと
提の鉄の板が少し上がって
水がおばあちゃんが整備した溝を
つたって田んぼに流れていくよ
溝のふちは私が砂かけ作戦をした
泥が5月の日差しでほとんど
乾いている
おじいちゃんは私のそばで
頭をなでてくれている
毎日がハッピーな自然流。

田んぼにお水が一杯になるのは
夕方だ
おばあちゃんと奥様は先に帰る
どうしようかなと思って
おじいちゃんを見上げると
おじいちゃんもわかってくれた
みたいで
「ラッキーおばあちゃんと先に
帰っていいよ」って言ってくれた
このタイミングを逃したら
夕方までおじいちゃんのタバコの
お相手をするはめになりそう
一応おじいちゃんに体を
すりすりしてからおばあちゃんと
奥様のところへダッシュ
おばあちゃんのところに着いて
振り向くとおじいちゃんは
やっぱしプハ~と一服中
毎日がハッピーな自然流。

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