「お一人様アートツアー:2023/10/2〜10/3 弘前・十和田・三沢 その3 :大巻伸嗣 「Liminal Air Space Time 事象の地平線」
白いような透明のような、薄い布がゆっくりと風にたゆたうように、動いている・・・まるで夜の海の波のように・・・
そして、ず〜っと女性のスキャットの声が続いている・・・ため息のようなすすり泣きのような・・・無限、夢幻、幽玄、幻想、海、あの世、まぼろし・・・そんな言葉が頭に浮かんでくる・・・作られた音ではなく、人の声が誘う効果はとても大きい。不気味さと温かさも感じられる。
ずっとずっと・・・生まれる前の世界なのか、死んだ後の世界なのか、とにかく「現世」ではない別の世界へ引き摺り込まれて解けあっていくような・・・
その没入感が、素晴らしかった・・・
2階からも鑑賞できる。
いつまでもいつまでも見ていたい・・・
これも作家の作品というか、「現象」なのかもしれない。
構成や、ここに地元の合唱団の人の協力を・・・とかは作家のアイデアだろうが、布の動きはほんと偶然性で、ひとときとして同じ瞬間がない・・・
でも、この空間だからこその不思議にちょっと甘くも感じる空気・・・があわさって、ここでしか生まれない作品となっていた・・・この場所ならでは!なのだ。
元シードルの工場という場所ならではの、建物にずっと染み付いて漂っているリンゴの残り香のようにも感じました。
おそらく、他の美術館で展示しても、この「ほのかに甘い空気」はこの「弘前れんが倉庫美術館」の空間でしか味わえない・・・
ここまでやってきてほんまによかった!!
期待以上の・・・素晴らしい展覧会でした。
いつも、「弘前まで行ってるんだから、他にも観光してくれば? 弘前城とか弘前公園とか名所いっぱいでしょ?」と言われるし、自分でも「今回は弘前公園とか行ける時間あるし」と思った・・・
思ったけど・・・
やっぱり、「弘前れんが倉庫美術館」を堪能しきった後、そこで地元の食材を生かした美味しいランチとシードルを堪能した後、もう、後は何もいらない、何も他に見ても感じない・・・そんな状態になってしまいます。
それだけのインパクトを、あの「れんが倉庫」の空間は持っています。
「Is anything else? 」 「No thank you」という気分です。
ここまできてよかった。
やはり、ここまで行かなきゃ味わえない展覧会は、そこまで行くっきゃないですよ!!
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