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妄想が捗るファミコン“ゲーム”ソフト 『8BIT MUSIC POWER』

2016年1月31日にリリースされた、ファミコン、ファミコン互換機で再生できるチップチューン音楽アルバムカセット『8BIT MUSIC PWER』。楽曲提供者は、hally、慶野由利子、国本剛章、ヨナオケイシ、サカモト教授などファミコンが現役だった80年代にゲームミュージックを制作したクリエイターから現代のチップチューンシーンで活躍するそうそうたるメンバーだ。

チップチューン、レトロゲーム好きな私のドストライクなアイテムだったのでしっかり予約、発売翌日にAmazonから届いたカセットは、初期のファミコンカセットを思い出させる小さな紙のケースに入っていた。黄色い箱の色は、いわっちがプログラムを担当した任天堂のピンボールやハドソンのロードランナーを彷彿させてくれる。

箱を開け、リビングに置いてあるAVファミコンにセットして電源を入れる。キラキラとしたRIKIのロゴがフェードアウトすると、ファミコンゲームっぽいタイトル画面が現れ、早速1曲目のBLACK CARTRIDEが流れだす。ゆったりとしたビートを刻み、これから何かが始まるぞ! と期待にあふれる曲調にいきなり心を奪われる。画面ではファミコンサウンドで使用されている、矩形波2音、三角波、ノイズ、DPCMの各音がシーケンサーの画面の様にリアルタイムで表示されたり、Mr.ドットマン小野 浩の描くゲームセンター風のドット絵やキラキラ光るオブジェクト、美少女CGなどVJよろしく展開されるグラフィックに時折目を奪われながらこの世界観にのめり込んでいく。

2曲目のPICO MY HEARTはキャラクターもののアクションゲームにありそうな明るい曲調で脳内で勝手に見たこともないオリジナルの横スクロールのアクションゲームが再生される。その後も次々と繰り広げられるファミコンサウンドに、この曲はシューティング、この曲はアドベンチャー、これはダンジョン、この曲はアドベンチャーゲームでプレイヤーが謎を解きあかし、事件の全貌を暴いた時に流れてくる曲! など私の脳内ゲームデータベースから勝手に妄想のファミコンゲームが次々と再生されるではないか。

音楽は時代と生活と共に人々の中に記憶される。テレビや街で流れていた曲、クラブに通っていた時によく流れていた曲、友達の家でいつも流れていた曲、その曲が流れた瞬間にその当時のことも一緒に脳内で再生される。そしてその曲を今は簡単にいつでもどこでもスマートフォンから、PCからアクセスすることができる。新しい曲だってそうだ。気になればすぐ手元のスマートフォンで音楽配信のサイトからダウンロードやストリーミングで再生ができる。

『8BIT MUSIC POWER』はファミコンにカセットを刺して再生、チップチューンを際立たせるドット絵の画面も合わせて再生される。この3つの体験が、私の中のレトロゲーム体験を蘇らせてくれる。新作のオムニバスアルバムなのに勝手に脳内であるはずのないゲーム画面が再生されて、私の記憶にあるレトロゲームに受けた感情を揺さぶる。

本作をただの配信サービスや、音楽CD、映像付きのDVDで聞いたとしてもこんな感情は生まれなかっただろう。テレビにファミコンを繋いで、カセットを刺して視聴する。極めて非効率的な音楽鑑賞法だが、これはただの音楽アルバムではない。視聴者のレトロゲーム体験を呼び起こし、ひとりひとりの『8BIT MUSIC POWER』というゲームを脳内で完成させる、古くて新しい、そしてとっても自由な妄想新作ファミコンゲームソフトだ。

次回作、そしてスーパーファミコン、メガドライブなど他のレトロゲームハードでこのサウンドを響かせてもらいたい。

まだまだファミコンやれることあるんだなー。


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