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「豪雨の予感」第18話(災害に強いエリア)

その2時間ほど前、高校の最寄駅である京阪電鉄天満橋駅で愛子は豪雨に遭遇する。愛子が通う大手前高校は大阪城天守閣を東に望む上町台地にあることから校舎自体浸水の心配はない。上町台地は大阪市内を南北に走る台地で、大和川より北に向かって幅2~3km、長さ12kmに亘って岬状に突出しており北端には大阪城があり、四天王寺や難波宮、大阪府庁や大阪府警など国の主要機関が多く集まっていることが、このエリアが災害に強いことの証左ともいえる。

しかし愛子にとっては、通学している3年間に起きるかどうかわからない災害に強いエリアにあることよりも日々の通学に便利な場所にあることの方を優先したかった。というのも天満橋駅から高校までの通学路が愛子にとっての最大の難関だったからである。駅改札を出て地下通路を辿った後、長めの階段を上がることになる。さらに地上にでてからはすぐに上り坂があり、さらに朝日に向かって歩かされることになる。それが5分程度であったとしても特に気温が上がり蒸し暑くなるゴールデンウィークから残暑厳しい9月ころまではせっかくつくった前髪が学校に着くころには崩れてしまうことが、この夏もまた愛子にとっての大きな悩みの一つであった。

「愛子、おはようー!」

この日の朝、天満橋駅の地下を通り3番出口の階段を上がる時に親友の佳奈が後ろから声をかけてきた。

「あ、佳奈おはよう!今日もめちゃめちゃあついな!なあ見て!前髪おかしなってへん?」

改札をでて地下通路を辿り地上への階段に差し掛かかったところで、外気が入ってくる影響で急にエアコンの効きが弱まったと感じた愛子は、湿気で前髪が崩れてないか心配になり始めたところだった。

「大丈夫!かわいくきまってる!」
「え、ほんま、あーよかった!佳奈の前髪も…」

そう言いかけたとき目の前の人だかりが目に入ってきた。

第19話に続く
(このストーリーはフィクションです。一部実在する名称を使用しています)

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