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「豪雨の予感」第17話(想定量を超える豪雨と垂直避難)

大阪府での短時間(60分)降雨はこれまで最大でも80mm/h程度だったものが、近年100mm/h前後もしくは110mm/hに迫る豪雨が発生するようになっている。ところが大阪府は“短時間降雨65mm/hに対して床上浸水を防ぐ”ことを「当面の目標」としていて、「将来目標」の短時間降雨量でも80mm/hとしている。今回の120mm/hを超える豪雨が今後も数時間続くであろう状況に直面していることで、これから寝屋川流域に起きるかもしれない惨事が松前には見えているのかもしれない。

「健斗、この大雨はこれまでのとは違う気がする!」

悠さんの解説を聞いていたみおは少し苛立ちながら突然健斗に話しかけた。今後起こるであろう水害レベルの認識を健斗とも合わせておきたい。みおは窓の外の第二寝屋川の水位に視線をむけた。

「健斗、見て!第二寝屋川の水位が上城見橋の橋桁の下すれすれまできてる、今にも溢れそう!こんなの今まで見たことないし、これからも降り続くんやったら、街のあちこちで内水氾濫が起きるかもしれんわ。ほら健斗がいた小学校でも内水氾濫がおきてるし、もう街のいろんなところで起きてると思う。それで第二寝屋川から水が溢れだしたら大変なことになる!」

寝屋川流域は、大阪平野の一部で、北を淀川、南を大和川、東を生駒山系、西を上町台地と周りを高い土地に囲まれた東部大阪地域で、大阪市東部を含む12市にまたがり、その面積は267km2で大阪府面積の1/7を占める。また流域の人口は約280万人ともいわれており大阪府人口の1/3を占める。東側を生駒山地、西側を大阪城から南に伸びる上町台地で区切られ、北側と南側は淀川と大和川に囲まれているが、都市化により水が地面に染み込みにくいなどの地形的な特性から水捌けが悪く、流域面積の3/4を雨水排水をポンプなどの施設に頼らなければならない内水域(川より低い地域)である。河川により集められた雨水の出口は京橋口の1箇所しかない。

氾濫するとなると最大数百万人が避難をしいられることにもなる状況を想像しがたく、みおは寝屋川流域の治水対策を調べた。大阪府は治水施設の整備により1/10確率降雨(時間あたり50mm程度の降雨)による床下浸水かつ1/30確率降雨(時間あたり65mm程度の降雨)による床上浸水の発生を防ぐことを目標にしている。今日のように120mm/時間の豪雨は想定されていない。大阪市城東区の最大時間雨量は平成25年8月25日の59ミリである

「家の外は内水氾濫で浸水深が深くなってるはずやから…このまま家にいて在宅避難するしかないな。在宅避難するっていってもこのままこの部屋に居るってこと。こういう時のために3週間分の備蓄をしてきたから備蓄品は大丈夫やけど家が流されるようなことにならんかったらいいけど…お父さんは災害救助に出て今日は帰って来られへんと思うし、愛ちゃんからはさっき連絡があって学校に待機してるみたい。やから健斗、とりあえず二人で頑張ろう!」

第18話に続く
(このストーリーはフィクションです。一部実在する名称を使用しています)

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