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続 気になる、日本のジャズピアニスト 布施音人


続 気になる、日本のジャズピアニスト
布施音人。

3月に発売されたばかりの布施音人トリオのアルバム「isorated」。
同メンバーによるギグを、御茶ノ水ナルに聴きに行って来ました。
久々にピアノトリオというフォーマットの魅力に
身を委ねる時間を過ごすことができた。
ナルのライブ会場としての音環境も実に素晴らしい!

一言で印象を述べると、
「揺蕩う(たゆたう)」
いつまでも聴いていたいサムシングを持った、
素晴らしいユニットであった。
以下、どんな点に心打たれたのか、
あるいは少しのリクエストを整理してみた。

◉さりげないスタンダードからのプロローグ
 冒頭の「I love you」と、アンコールの「Blame it on my youth」の二曲しか演奏されなかったが、特に「I love you」。出だしから、もう既に引き込まれてしまった。鍵盤を見ずに、ベースの高橋陸の方を見ながら、ピアノルバートが静かに滑り出す様が、期待を膨らます。冒頭の選曲としてこのスタンダードを選ぶセンス。リラックスした雰囲気とこれから始まる緊張感あるインタープレイの旅への予感を感じさせるプロローグだった。

◉思索的、積分的、構造的なピアノ
 先ずは、布施のピアノ。上手く説明できないが、とても思索的なピアノ。結構フラジャイルなフレーズが積分的に構成されていくような流れが、聴き手を集中させる。第2部の最初の曲などは、当日作ったというホッカホカの新曲で曲名すらついていないということであったが、非常にシンプルな音使いの中に、トリオの全体の響きを端正に収めていく方向性がとても気に入った。
また、「イグザテーションゴーイング」(?曲名は不確か)というどこかの詩人にインスパイヤーされて作られた曲の素晴らしかったこと。布施音人の音楽という感じがした。

◉高橋陸という存在
 このトリオの最大の肝は、ベースの高橋陸とのコンビネーションであろう。素晴らしいベーシストである。バッキングのツボをおさえた丁寧な音使いの上手さもさることながら、ソロにおける繊細かつ明瞭に聴こえてくる流麗でリリカルなソロがとても気持ち良かった。非常に軽く弾いているようで、力強くわかりやすい。時に少しチャーリーヘイデンの語り口を感じさせる時もあり、朴訥した中にメロディアスな語りかけが心にすうっーと入ってくる感じが実に良かった。

◉静かな緊張の持続
 今回のアルバムは、実は先にItunesでダウンロードして聴いていたのだが、正直ライブの方が全然良かった。多分、レコーディングの時はかなり気合が入っていたと思うのである。ライブでは、その力みと過剰さがなく、力が抜けていて、とても静かで淡々とした表情が印象的だった。
「アイソレイティッド」にしろ「オータムナルムード」をはじめ、とにかく今回のアルバムのオリジナル曲は、全編に渡って、ライブでよくある大仰な盛り上げ方もなく、ただ淡々と揺蕩う3人の詩情が、交錯する緊張感あるプレイが持続しているようなトリオのあり方が何とも素晴らしかった。
ラストのビヨンドザソルテの完成度の高さと静かな盛り上がりに心震えた。

◉期待を込めて
 布施さんに今後期待したいことを、思いつくまま
 ・ラージアンサンブルへの挑戦
 ・テナーサックス、ベースとのドラムレストリオ
 ・あまりに甘美で、耽美的な方向には行かないでほしい
 ・ミナス音楽との関わり(カルロス・アギーレのように)
 ・どジャズの匂いをブレンド(トミ・フラやソニー・クラーク、ボビー・
  テイモンズ等のテイスト)
  ※今回ライブでは取り上げられなかった「ナローアンドホワイト」の様な演奏が入ることにより、アーティストとしての幅が広がる気がします。

気になる日本のジャスピアニストの二人目として、
平倉初音に続き、布施音人をセレクトしたが、
本当に、最近素晴らしい若手のミュージシャンが続々と登場してきている。
こうした、世界レベルで通用する、素晴らしい活動が、
日本でも、社会の中でしっかり支えていく仕組みづくりができないものか。
メセナ的な企業支援など、
もっともっと多くの方に注目されるべきであると思う。



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