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一千文字映画評

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#映画レビュー

【一千文(字/時)評】ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME. 3

動物虐待を糾弾するために虐待してもいいのか? この映画が公開されるのをどれ程待ち侘びたか…。その反面、このまま公開されないままでもいいかな、なんて思ったりもしていた。 それだけガーディアンズ・オブ・ギャラクシーというチームがお気に入りだったし、彼らが次で解散と考えるだけで悲しくなってしまっていた。 そしてついにやってきたVol.3。 まるで大好きなバンドの解散ライブのような、最高の作品だった。それぞれのキャラに見せ場が用意されていて、それぞれに真摯に向き合ったからこその新

【一千文(字/時)評】ノック 終末の訪問者

シャマランの狙いは達成できてると思うけど… 急にやって来た訪問者が「あなたたち家族3人の中から1人選んで殺してください。さもなくば世界が終わります」と言ってきたとしたら怖い。 しかもそれが筋肉ダルマ巨漢デイブ・バウティスタだったらもっと怖い。 でもその物腰や話し方はとても穏便で丁寧で物腰柔らかだったら。 そうなると怖さの質は変わってくるよね。 ここ最近のM・ナイト・シャマランは怪奇SF風味のサスペンス専門の職業監督として良い仕事をしている。藤子・F・不二雄の短編SFのよう

【一千文(字/時)評】アラビアン・ナイト 三千年の願い

ジョージ・ミラー作品の副読本として 『アラビアン・ナイト』を冠するこの作品を見てから振り返るとジョージ・ミラーという監督はいつも「物語を語り継ぐこと」についての映画を創っていたなと思う。 この何重もの複雑な入れ子構造を織りなす「物語についての物語」は、ジョージ・ミラーの物語哲学のようなものをそのままイメージ化したように見える。いつもハッキリした物語構造があるミラーの作品にしては例外的に、様々な解釈の余地がある、抽象性の高い、難解とも言える作品になっている。 『マッドマッ

【一千文字感想】『ドント・ウォーリー・ダーリン』オリヴィア・ワイルドには期待するが、J. ピールを意識しすぎ

ここ数年で最もチャーミングな青春映画だった『ブックスマート』で監督としての手腕も証明したオリヴィア・ワイルド。 そんな彼女が次に手がけたのは理想化された郊外で暮らす“奥さん”たちを描いた『ステップ・フォードの妻たち』のような、『マルホランド・ドライブ』のような作品だ。 砂漠の真ん中にある、まるでリゾート地のような新興住宅街。1950年代風なオールディーズな街並みの中で、家事をこなし、料理を作り、夫の帰りを待つ“献身的な妻たち”が暮らしている。 過剰に保守的、亭主関白に疑問を

【一千文字感想】『ブラックアダム』流石セラ監督。アダムよりJSAを見にいくべし

あのロック様がアメコミヒーローにも堂々殴り込み。古代から封印された超人で街は破壊する、敵は確実に殺していくダークヒーロー“ブラックアダム”を演じる。 実は全然期待してない作品だった。 ロック様が暴れん坊のヒーロー役って通常運行だし、なによりコスチューム着た姿がロック様が黒いタイツ着ただけにしか見えなかったから。 「でも、一応見とくか」と見に行ってみると、これが意外にも面白い。思っていたよりしっかりとしている。そしてエンドロールで監督がJ. コレット=セラだとやっと知る。そ

【一千文字感想】『セールスマン』(1969) 訪問販売は絶滅したが、聖書は不滅である

セールスマンたちは家を訪問しては“聖書”を売りつける。 “ダイレクト・シネマ”と呼ばれるドキュメンタリー映画群の旗手であるメイズルス兄弟。その代表作が半世紀以上経って日本初公開となった。 “ダイレクト・シネマ”とは、文字通り“素材そのまま”を徹底した映画の作り方だ。ナレーションやインタビューなどの演出的要素を可能な限り取り除き、ただ被写体に密着してカメラを回し続ける。この演出を極限まで廃す作り方は状況説明などの逃げ場が一切ないわけで、作り手としては相当ストイック。1本の作

【一千文字感想】『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』ファン必見。意外と重要なバカ騒ぎ

マーベル・スタジオが贈る今年のクリスマスのホリデー・スペシャルはガーディアンズ・オブ・ギャラクシー! ただし、配信限定のクリスマス・スペシャルと侮ると危険です。もちろんメインキャストはしっかりと勢揃い、監督・脚本はジェームズ・ガンがやっているので、実質的には「Vol. 2.5」くらいに思っていた方が良いかもね。 なんせ序盤から新情報が惜しみなくと開示されていく。原作ではお馴染みの宇宙服を着た犬のコスモが本格的に登場する他、『エンド・ゲーム』後のガーディアンズがなにをしてい

【一千文字感想・ネタバレ注意】NOPE/ノープ

“未確認”を“確認”させるための戦い 現代のトワイライト・ゾーン的ストーリーテラー、ジョーダン・ピール。その最新作はUFOだ。 しかしピールが単なるUFO映画を作る訳がない。それは名カメラマン、ホイテ・ヴァン・ホイテマを連れてきて、現状最高級のIMAXを使うと聞いて確信に変わった。やはりただのUFO映画じゃないぞと。 シットコムの現場で暴れ回る猿。 映画の起源とされるエドワード・マイブリッジの連続写真。 普通はUFOと結びつかないこれらのイメージが、この作品が語らん

【千文字感想】ムーンフォール

「地球に月が落ちてきた!」 これまで幾多も地球をぶっ壊してきた、もはや“ディザスター・ムービー”とほとんど同義、破壊王ローランド・エメリッヒ。彼の最新作はこれまでにも増して荒唐無稽でバカっぽいぞ! ある日、月の軌道が急に変わって引力で地球と衝突しちゃう!という思い切りの良い幕開けをして「月にいる謎の無機物生命体が軌道をずらしたんだ!」や「月は実は古代文明が作った巨大建造物なんだ!」なんて冷静に引いて見たら負けな展開の連続コンボが決まっていく。エメリッヒ映画なんだから、そうい

【一千文字】ソー:ラブ&サンダー - タイカ・ワイティティのオーガニックな魅力

ハリウッド中で大暴れ中、ニュージーランドの気鋭タイカ・ワイティティ。好みが分かれる監督ではあるが、私はとても腕があると思うし好きな作家だ。 今や数少ないアベンジャーズ初期メンバーの生き残りになってしまった“雷神ソー”のシリーズ4作目。2作目まで登場していたヒロインのナタリー・ポートマン演じるジェーン・フォスターが復帰、それも新たなソーとして!という嬉しい展開もある。 かくいう私もシリーズ最初の2作におけるジェーンの「典型的な守られるヒロイン」という置かれ方に不満を感じていた

【一千文字評】ザ・ロスト・シティ - 私たちがチャニング・テイタムを好きなのはこういう訳です

私はチャニング・テイタムが大好きです。 よって、この映画が好きです。 煮詰まりきったロマンス小説家(サンドラ・ブロック)とそ本の表紙を飾るイケメンモデル(チャニング・テイタム)が古代文明のお宝を狙って冒険を繰り広げる、というコメディ映画。軽くて笑えるけど、特筆すべき傑作とかそういうわけではない。良くも悪くもポップコーン・ムービーな出来です。 でも何が良いって、やっぱしチャニング・テイタム。テイタム好きはなにもそのハンサムな顔立ちや、完璧な肉体が好きなわけではない(そこも好

【一千文字評】トップガン マーヴェリック - トム・クルーズ、移動性のスター

トム・クルーズは移動性のスターだ。 彼は一点に留まることなく、常に運動し、移動し続ける。そのフィルモグラフィは、彼の移動してきた軌跡だ。 トムを正真正銘のスターへと推し上げた『トップガン』は最初にして移動性の極地だと言っていい。彼が演じたマーヴェリックは、空をも切り裂くスピードの世界を追い求め、そのためなら容易に命をも危険に晒す無茶な若者だった。彼が操るバイクやF14戦闘機は男性的な直線軌道を描き、その姿が世界中を虜にした。 『トップガン』がそうであるように、当初のトム・