マガジンのカバー画像

一千文字映画評

17
見た映画について一千文字ぴったしで書いています
運営しているクリエイター

#アニメ

【一千文字感想】『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』 造形にもお話にも、デルトロの美学がほとばしっている

*ちょっとネタバレあり 異界のクリーチャー、巨大ロボット、美しき半魚人… デル・トロの作品はどれも独自の美学に貫かれた拘りの造形物たちが登場する。前作『ナイトメア・アリー』では幻想は控えめに、堅実な演出な腕を見せつけたが、その反動は次なるこの『ピノッキオ』で爆発する なんせストップモーション・アニメだ!キャラクターも背景も、画面に映るその全てにデルトロの美学がほとばしっている 木彫りの質感をあえて残した人形たちが自由自在、表情豊かに画面を動き回る。そもそも『ピノキオ』は

【一千文字感想】『THE FIRST SLAM DUNK』漫画であることを忘れた真の“映像化”!

見始めてすぐに感動した。 そして、この感動はスラダンのストーリーより先にやってきた感動だった。 あの漫画の中にいた人たちが、まるでそこに生きているかのように躍動している。漫画のアニメ化では大なり小なりそんな感動はあるものだが、この作品のそれは比べ物にならない。 まさに「Anima =魂を吹き込む」そんな作品だった。 原作者 井上雄彦自身が監督・脚本を務めた満を辞しての劇場版。筆者はスラムダンク世代というわけではないので、一応原作を読み通している程度だ。それでも湘北高校の面

【一千文字評】バズ・ライトイヤー - どっちつかずな誰得?スピンオフ

別に面白くはあるんだが、当たり障りがない。 ピクサーにいつも感じる挑戦的な姿勢が希薄で、志の高さは感じられない。 それってピクサー最新作としては致命的な気がする。 言わずもがな『トイ・ストーリー』の人気キャラ、バズ・ライトイヤーの単独主演作。位置付けとしては「オモチャたちの持ち主アンディが見た映画」という事で、この映画を見てアンディはバズのオモチャを買って貰ったことになる。 この「面白いんだけど、なんだかなー…」という感触は、率直に誰に向けて作っているのかわからない部分か

【一千文字評】犬王 - 美と凡庸、醜とユニーク

実在したとされる猿楽師、犬王。 湯浅政明を中心に松本大洋、野木亜紀子ら現行のドリームチームが結集し、彼の物語をアニメーションで描く。 「物語を拾い、語り継ぐこと」について、その表裏一体として「語られなくなれば、忘却される」ことをテーマに据え、それが「犬王」という今や忘れ去られた人物の生涯を描くこの作品そのものと一致する。その意味で非常にコンセプチュアルな作品だ。 そしてなにより、この話をロックミュージカルにしてしまう大胆不敵さ、奇想天外さこそが最大の魅力。とんだ飛躍でありな