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昏き闇斬り裂く眩き光~異・ウルトラマンA~

空想(こういうヤツが見たかった)特撮シリーズ

第2回 ベロクロン逆襲<1>

 二次元でもなければ三次元でもない、どこか次元の狭間。
 そこは筆洗い様の容器に赤や青、様々な色をぶち込み描き回している様な、不安定且つ奇妙な空間だった。
 そこは少なくとも人間の住める様な場所ではないだろう。真っ当な感覚を持つ人間なら、その奇妙な混濁とした色をした異様な空に、いや、地面に、空間そのものに耐えられないはずだ。
 だが、この空間を住まいとする者たちがいた。
 その名はヤプール。
 これまで数多くの、天の川銀河に住まう知的生命体、そして彼らの文明を何千、何万と滅ぼしてきた悪魔たち。
 しかしその悪魔たちの所業も、ここのところ度々不発に終わっていた。
『全てはヤツだ! あの銀色の巨人め、またも我らの邪魔をしようとこの星にも現れおった』
 異様な空間に漂う“影”の一つが忌々し気に思考を放った。
 すると今度は別の“影”が同じく、腹立たしさそのものとしか言えない思考を発した。
『あやつが現れなければ、ベロクロンが傷つき逃げるなどという醜態を晒すことなどなかった!』
『そうだ。巨人が現れなければ、今頃日本の西部はおろか、関東も地獄と化し、多くの人間が焼かれ、踏み潰され、喰われながら、その運命を呪い死んでいたはずだった!!』
『なぜヤツは我々の邪魔をする? ヘテウ恒星系を襲ったときも、いやその前も、その前も我々が人間どもを地獄に墜とそうとすると、決まって現れる』

『巨人の目的はいったいなんなんだ?』
 いくつもの思考が交錯するが、巨人について分かることは、自分たちヤプールの邪魔をすること。ヤプールが作り上げた超獣を、これまで侵略を企んだ様々な星系で悉く撃退してきたこと。
 この程度の、情報とも言えない様な“過去の事実”だけしか分からなかった。
 議論が停滞を見せたとき、新たに表れた“影”が思考を放った。
『分からぬことを考え込んでも無意味だ』
『では、ヤツにはベロクロンも歯が立たなかった。おそらく新たに超獣を造っても、ヤツには敵わないだろう。その事実を認め、この星から撤退しようというのか?』
『違う。この星は、稀に見る多様性に満ちた星だ。多くの種の一つでしかない人類もまた、様々な形態や思考を持っている。この様な人類、そして連中が作り上げた文明を見逃がすことなど論外だ』
『ではどうしろというのか?』
 新たな“影”が発する思考に、不快さが隠せない思考がぶつかった。
『超獣を改良するのだ。我らが作り上げた超生体兵器といえども所詮は獣。獣では知性を持つ存在、いわんや銀色の巨人に勝てようはずもない』
『改良といったな? それはどういうものだ』
『超獣の超再生力、凶暴性は原型の生物に拠っている。そこに一つ、工夫を重ねるのだ。それは――――』

 翌朝、予定通りに坂田は連絡機の前に立つと、呆けた顔をしながら「連絡機って、こりゃ新型のジャイロじゃないか」と呟いた。
 新型のマットジャイロ。その名もマットジャイロⅡ。先代と同じようにティルトローター機だがボディは流線形を採用、エンジンも出力の高い新型に変更したので巡航速度が早くなった。
 そしてマットジャイロに求められる重要な任務の一つ、輸送能力はついては、コンテナを機体底部にドッキングさせる方式に変更された。
 武装もマットアロー改にも搭載されている、豊和工業が開発した3式対怪獣用機関砲<パニッシャー>を二門積んでおり、さらには翼下には左右それぞれ一基づつ、ミサイルを吊るためのパイロンを有している。
 先頃配備されたばかりの新品だ。連絡機として使うにはもったいないし、だいいち怪獣や超獣が現れたどうするのか。
「こいつの慣熟飛行って側面もあるんですよ」
「城戸? お前が操縦するのか」
 振り返ると、緊急発進待機室から歩いてきた部下の一人、城戸雄介の姿が目に入った。
「こいつの実用化には手間取りましたからね。とにかく飛行時間が足らなんのですわ」
 坂田は元陸上自衛隊航空部隊出身の城戸高雄の言葉に納得した。
 ティルトローター機には米国製のオスプレイという先駆者がいたが、マットジャイロⅡの設計と開発は主に日本側が担当した。自衛隊が導入、運用してはいたが、このティルトローター機の開発には相当苦労したらしい。
 実際、試作機による初飛行は遅れに遅れ、結果、MATへの納品も遅くなった。MAT隊員は全員がアロー1号改を始めとする各機種の操縦資格取得を義務付けられており、当然、VTOL機とヘリコプターの中間に位置するマットジャイロにもそれは当て嵌まる。
 しかし先の述べたように、機体の配備が遅れたため、先代マットジャイロからの乗り換えに伴う慣熟飛行時間が取れていない。
 なにしろ怪獣はこちらの都合など関係なしに出現する。その合間を縫っての慣熟飛行である。どうしても時間が不足がちになるのも仕方ないだろう(ゆえにマットジャイロⅡはまだ実戦には投入されておらず、先代のマットジャイロが使用されている)。

 城戸の言葉に納得した坂田は「まあ、今日は東京までの“遠足”だ。気を張らずに頼む」
 城戸は坂田の軽口にうなずきながら「任せておいて下さい」と言った。
 二人が乗り込んだマットジャイロⅡは、東京都心部に位置する地球防衛庁(Global Defense Agency/GDA)に向かい、速やかにMAT富士要塞から発進した。

 マットジャイロⅡはマットジャイロより遥かに高速で飛行し、それまでと比べると半分程度の飛行時間で都内のGDAビルに到着した。
 屋上のヘリパッドにマットジャイロⅡが着陸すると、坂田は出発前に南から告げられたように、岸田参謀の執務室に向かった。
 約束があると告げられた秘書は手際よく手元の端末で確認、坂田を岸田がいる部屋へ通した。
 彼が「坂田、入ります」と言って敬礼すると、岸田参謀は椅子から立って返礼し、ソファに座る様に促した。
 岸田参謀は開口一番「戦闘詳報と意見書は読んだ」と言った。
 その言葉に坂田は喜色を露わにした。
「じゃあ、マットアローの」
「新型レーザー砲の搭載は却下された。おい、落ち込むな。まだ続きがあるんだ。しかし強化改造には許可が出た。さっそく現在強化案が技術部で練られている」
 ホッとした表情を浮かべた坂田に「現金なヤツだ」と軽く笑う岸田。
「レーザー砲強化の意見が通ったのは良かったですが、新型の搭載に許可が出なかったのは何故ですか?」
 先頃実用レベルに達したと報じられた、強力な威力を持つ新型レーザー砲、開発コード“X‐B50”通称ビッグレ―ザ―50は従来のレーザー砲をはるかに上回る威力を持つと聞いている。
 それならば、いかに再生能力を持つベロクロンでもあっても確実に殺せるはずだと、坂田は福山戦以来その実戦配備に大きな期待を寄せていたのだ。
 岸田は少し逡巡しながら、坂田には言っても大丈夫だろうと思った。性格が頑固と言うか、一本気な彼の口が堅いことは少年時代から知っている。南と同様、岸田も坂田を少年時代からの付き合いなのだ。
「いまGDAでは先の福山市戦を巡って、ひと騒動が起きているんだ」
「ひと騒動?」
「先の作戦の失敗の責任者探しだ」
「そんな・・・今までだって失敗は何度もあったじゃないですか。確かにその中で明確に責任を取るべき過ちを犯した隊員に、なんらかの処分が下されることはありましたが――」
 不満を露わにした坂田を、岸田は掌を彼に向けることで、その口を黙らせた。
「そんなレベルの話じゃない。福山の場合、被害規模が大き過ぎた。ウルトラマンらしき巨人のおかげで怪獣・・・いや、超獣か。
 その超獣を退けることは出来たが、そこもまた問題にされてな。作戦指揮官の南は当然だが、最高責任者の佐竹長官の進退を問う声が、GDA内部どころか政府からもあがっているんだ」
「・・・・・・超獣はヤプールと名乗った謎の敵が遣わせた生体兵器です。しかもあの超獣、ヤツらはベロクロンと言ってましたが、決して息の根を止めたわけではありません。傷が癒えたら再び現れるでしょう。
 それにヤプールがいる限り、ベロクロンを倒しても、第二第三の超獣が出現することは間違いありません。人間同士でいがみ合っている場合じゃないですよ!?」
 坂田の言うことは正論であった。しかし世の中は正論だからと言って、それが通じるとは限らない。
「坂田は昔から変わらないな。お前が子供のときから知っているが、本当にあの頃の真っすぐさを失っていない」
 坂田を実の弟の様に可愛がっていた戦死した後輩を思い出したのか、岸田は少し遠い目をしながら言った。
 普通なら赤面して「やめて下さい」の一言でもいう場面だが、坂田は胸を張って「郷さんの教育の賜物です」と、いまはもういない実の兄同然の青年の名を口にした。
 岸田はさもありなんといった風に首肯した。
「あいつも入隊間もない頃は、無茶を言う上に噛みついたりしてた。それがまたMATが依って立つ正論だから、加藤隊長も南も上野も丘も、そして俺もヤツと行動を共にした」
 岸田は20年近く前、MATが壊滅寸前にまで追い込まれた戦いで“戦死”したとなっている、かつての部下の名を口にした。
「そもそも誰がこの非常時に、そんな馬鹿なことを言い出したんですか?」
 坂田の言葉が岸田を現実に引き戻した。
「高倉総参謀長だよ」
 その答えに、坂田は思わず顔をしかめた。
「口を慎めよ? 上官に対する批判は許さん」
 岸田は不満を表情に露わにした坂田の機先を制した。
 実質、軍事組織であるMATでも、通常の軍隊と同じように上官批判は禁忌である。がしかし、彼は坂田を窘めながらも「気持ちは分かる」という表情を、本人の意思に関係なく浮かべていた。

 話は少し逸れる。
 総参謀長とは作戦、情報、通信、兵站参謀などといった各種参謀を取り纏める役職であり、長官を補佐することを職務としている。
 彼らおよびその他のGDA幹部職員は、俗にキャリア組と呼ばれる特別職国家公務員と呼ばれる身分を持つ(それ以外の職員は一般職国家公務員)。
 MATは対怪獣組織とはいえ軍隊に準ずる(分野によっては優る)組織であり、それを指揮監督するGDAも同様である。ゆえに組織は自衛隊出身者を含む防衛省から出向してきた人間が芯となり作り上げられていった。
 そこに警察庁(警視庁を含む)や外務省、厚生労働省に国土交通省、さらには文部科学省出身のキャリア組とノンキャリア組を寄せ集め、組織としての体裁を整えていった。
 現在こそGDAプロパ―、つまり生え抜きの職員が育ち他省庁からの出向組は少ないが、組織の設立当初は当然のことながら全く逆で、出向組が組織を作り回していたのである。
 官僚組織がキャリアとノンキャリアで区別されるのは珍しくないが、GDAではさらに武官と文官という分類が存在する。
 武官とは自衛隊を含む防衛省出身を意味し、対して文官は警察庁出身者をはじめとした一般的な省庁からの出身者を指す。
 生え抜きが育った現在ではほとんど見かけないが、設立当初には武官が文官を下に視る雰囲気があった。そこには単なる職種差別ではなく、いくつかの大きな理由があったのだが、それについては機会があったら述べるに留めておこう。
 GDA職員は原則的に人事部が配置を決定するが、長官職は内閣総理大臣がその任命権を持つ。
 組織の性格上、総参謀長および長官は防衛省出身者が任命されるのが慣習だった。
 例えば総参謀長は陸海空自衛隊出身の武官参謀が選ばれ、長官が参謀長を勤めた者が指名されることが慣例となっていた。
 ちなみに参謀職には文官であっても就任できる。
 独自のオフィサー養成機関を持たない以上、長官の補佐には文官も必要だったのだ。
 ただ前述したように、総参謀長と長官に文官が選ばれたことはない。その理由は、GDAがMATという準軍事組織を指揮監督する官庁である以上、軍事に通じた人材でなければならないと考えられていたからである(しかしGDA設置法では総参謀長、長官共に、武官である必要は明記されていない)。
 設立から長年、この慣例が続いていたためか、それとも文官たちが武官の上に立ち、専門外の対怪獣作戦行動の責務を負うことを避けたためなのかは判然としないが、とにかく武官がGDAの頂点の占めてきたことは確かな事実であった。
 そうした慣習を覆したのが、坂田が顔をしかめた高倉巌だった。
 高倉は国交省から自ら望んでGDAに籍を移した変わり種として知られていたが、その名をGDA内部に響かせたのは、富士要塞第一期工事の際だった。

 GDA設立当初は新官庁への影響力を持とうと、様々な官庁が有為な人材を多く送り込んできたが、旧TDF(Terrestrial Defense Force/地球防衛軍)との基地建設用地についての因縁を持つ国交省からは、必要最小限の凡庸な人材しか出向してこなかった(TDFと国交省の因縁話については、機会があれば語ることとしよう)。
 GDAが本格的な活動を開始、生え抜きの人材も育ち組織を回すようになると、各省庁は優秀な人材を出向させる時期はもう終わったと判断、毒にも薬にもならない一般職だけを送り込むようになった(出向人数自体、減少していた)。やがて出世レ―スに敗けた上級職、つまりGDAでは参謀職に就く資格を持つ特別職国家公務員に、残りの役人人生を送らせるためにGDAへ出向させるようになってきた。
 こうなると組織の機能低下が生じてくる。特に即応性が求められるMATを指揮監督するGDAにおいては、それは決して無視できない、してはならないものだった。
 いつの頃から「GDAは霞が関の姥捨て山」と、密かに揶揄されるほどにまで症状は悪化していたが、その弊害が一気に吹き出したのが富士要塞建設計画であった。

 海底基地が壊滅させられたMATは、なんとかマットアローの発進ポー
トの機能を回復させ、機体を地上に搬出することに成功。その後は航空自衛隊の基地に間借りし怪獣出現に備えるなど、組織としては半身不随以下の状態が続いており、新しい拠点である富士要塞の建設は喫緊の課題だった。
 しかしお役所仕事丸出しになってしまったGDAは、要塞を建設するどころか第一期工事すら真っ当する能力に欠けてしまっていた。
 スケジュールはどんどん遅れていくが、異星人の侵略が激減した代わりなのかと問いたくなるほど、怪獣の出現は増えていった。
 空自だけでなく陸自、海自にも分散して居候を続けていたMATだが、なにしろ組織の発足前から自衛隊との仲は良くない。一日も早く、せめて第一期工事だけでも終わらせて欲しい、いや、終わらせろ!というのが隊員たちの気持ちであった。
 いったいどうなるんだ!?と関係者たちが頭を抱えていた問題を、手際よく片付けていったのが、当時参謀に就任したばかりの高倉巌だった。
 彼は国交省の高級官僚だったときに培った人脈を使い、積もり積もった問題を解消していったのである。
 GDA(とMAT)を敵視する国交省も、彼の言うことだけは無視できず、多くの折衝でGDA側の要求を吞んだ。
 実は高倉は国交族議員の首魁たる虎畑進次郎を後ろ盾に持っており、国交省内で逆らえる者はいなかったのである。

 ちなみにそんな実力者が次官レースから降りなぜGDAに出向したのか。
 それには裏があるのだが、とにかく彼の手腕で第一期工事は進み始め、スケジュールの遅れを取り戻した。
 優れた官僚であることを内外に示した高倉は、続く第二期工事の指揮を執ることとなった。当然工事はスムーズに進み、高倉の評価は高まっていった。
 彼の組織内での評価が高まれば、同時にその手足となって働いていた文官たちの評価も高まるのが世の道理である。
 それまでは小さかった国交省系官僚の発言力が徐々に大きくなっていった。気が付けば高倉は文官としては“あがり”とされる参謀職に在り、ついには慣例を破って総参謀長にまで昇りつめた。
 もはや高倉は文官閥の象徴と揶揄されるまでの存在になっていた。それまで武官が優勢だった庁内のパワ―バランスは崩れ、文官と対等、いやいっそ彼らが優勢ともいえる構図に変化していた。
 が、そんな変化を好く思う者がいれば、当然嫌う者たちもいる。言うまでもない、防衛省系の武官たちである。
 高倉の総参謀長就任についても「事務屋にMATの指揮が執れるか」と不満を漏らす者は少なくなかった。
 事実彼は兵、この場合はMATの運用には素人で、長官には戦闘に関して的確な助言や補佐を行っていたとは言い難かった。
 しかし、こと事務方方面のこととなると話は違い、有能さを示した。
 だがそれが武官勢力の不満を鎮めるかと言えば、全く逆に作用し、彼らの反感を更に高める結果となった。
 やがて高倉が総参謀長として、戦闘方面にも積極的に首をつっこむようになると、現場の事情を無視した指示やその言動に、実戦部隊であるMATからも反感を買うようになった。
 とはいうものの、組織運用の点では特別職国家公務員らしく有能さを示し続けたため、長官でさえ彼の言動を掣肘し難くなっていった。
 それでも数年我慢すれば退官するだろうと、高倉に反感を持つ参謀以下武官とMAT隊員は考えていた。

「それで、俺がここに呼ばれたわけはなんですか? まさかレ―ザ―の強化を伝えるためだけじゃないでしょう?」
 嫌な予感を感じつつ、探る様に坂田は岸田に尋ねた。
「・・・・・・これから長官も臨席する参謀会議がはじまる。おまえにはそこで、作戦経緯の報告をおこなってもらう」
「これ以上何を報告しろって言うんですか? 提出した戦闘詳報に全部書きました」
 予感は見事に的中していた。無駄だと知りながらも坂田は抵抗を試みた。
「俺もそう思うよ。だが総参謀長の考えは違うらしい。」
「長官を辞任に追い込むための芝居に手を貸す気はありませんよ」
 遠回しに参謀会議への出席を拒む坂田。
 あのいけ好かない事務屋の考えは読めている。重箱の隅を楊枝でほじくように、作戦指揮のミスと指摘できそうなベロクロン戦での行動を見つけ出そうというのだろう。
 そして、それを足掛かりに竹中長官を辞任させ、後ろ盾になっている大物国交族議員の力でその後釜に座るつもりなのだ。
「ダメだ。参謀会議への出席は正式な命令だ、坂田隊員」
 岸田は組織人、特に命令は絶対であると教え込まれる組織の構成員が逆らえない言葉を発した。
「すまじきものは宮仕え、か」
 思わず坂田はそのときの心境を呟いていた。

「くそ・・・・・・どいつもこいつもバカにしやがって」
 ゴミが至るところに散乱した薄暗い部屋の中、ズラッと並んだモニターを前に一人の男が世間への怨嗟を呟いていた。
 いまでこそゴミ溜めのような部屋にいるが、かつて男はトレーダーとして日に一千万や二千万の取り引きを行い、大きな利益を得ていた。
 株で儲けた金で高級マンションに住まい、イタリア製の舌を噛みそうになる名前のスポ―カ―を乗り回し、六本木のクラブで美味い酒に舌鼓を叩いていた。元モデルの美しい妻もいた。
 すべては順風万幌だった。その日までは。
(つづく)


予告編

『謎の侵略者ヤプールの超獣改良策とはなにか。新たな脅威を前にしながら権力闘争にかまけるGDA。果たしてMATは日本を超獣から守れるのか。
次回『ベロクロン逆襲』<2>、みんなで読もう!』




あとがきめいた言い訳

他の原稿で立て込んでため、前回からえらく間が空いてしまった。
こういうのはあまり間を置かずに更新した方が良いと
分かっていながら、出力不足のためにこうなってしまった。
これからは本作に限らず、与太話を小まめにアップしていこうと思います。

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