埼玉県営の水上公園での水着撮影会中止騒動について。その4「指定管理者の埼玉県公園緑地協会について」
今回は埼玉県の水着撮影会の件での「指定管理者」である公益財団法人埼玉県公園緑地協会についてです。
県公園緑地協会は、一度は出していた水着撮影イベント開催の許可という「施設使用許可の行政処分」を2023年6月8日(木)に中止要請を出した指定管理者です。
この「中止要請」については埼玉県都市整備部へと確認をした結果、
「既に許可しているものについては、取消に該当すると考えます。」との見解の回答を得ています。
ですのでこの中止要請は、「指定管理者」という施設使用許可を出す権限を持った「行政庁」による「許可の取消」という「不利益処分」の行政処分であるという事です。
今回の一件では、埼玉県の県庁と指定管理者との指揮命令系統といいますか、関係性が重要な意味を持つと考えますので、まずは県公園緑地協会について整理をしてみたいと思います。
現在の埼玉県上尾市の南方に1967年(昭和42年)の埼玉国体のメイン会場として陸上競技場と体育館のある上尾運動公園が作られましたが、国道17号線を挟んだ反対側に公園が拡張。1971年(昭和46年)7月に上尾運動公園水泳場として当時「東洋一」と言われる規模のプールが作られました。
このプールの管理者団体として作られたのが財団法人埼玉県水上公園協会で、水泳場の完成の3か月前に組織が設立され、1971年(昭和46年)4月よりさいたま水上公園の管理を受託しています。
改正前民法34条による「公益法人」として位置づけされる「財団法人」(主務官庁が必要)としての設立なので、設立当初から埼玉県所管の非営利法人として作られた事が分かります。つまり埼玉県の管理業務を委託される代行機関として誕生したという事です。
その後県営しらこばと水上公園が開業した1979年(昭和54年)には財団法人公園緑地協会へと名称変更。2012年(平成24年)に公益財団法人へと組織を移行しています。
公益財団法人は2008年(平成20年)に施行された「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」に拠るもので、2008年(平成20年)から2013年(平成25年)までの5年間が移行のための暫定期間とされました。
申請の無い財団法人は解散したものと見做される為、県公園緑地協会も2012年(平成24年)に組織移行。所管行政庁は埼玉県で、埼玉県公益法人認定等審議会(埼玉県庁総務部の附属機関)の公益認定を受けています。
以下は埼玉県の情報公開している、県公園緑地協会の概要についてです。
公益財団法人は「基本財産」と呼ばれる財産を基として法人格を付与された法人です。県公園緑地協会の基本財産は9800万円であり、その半分である50パーセントが埼玉県による出資となっています。
そして埼玉県では「特に指導又は関与を行う必要のある法人」として23法人を要綱で「指定出資法人」と定めており、県公園緑地協会もこの指定出資法人に指定されています。
「要綱」は行政組織内部での事務処理などを定めた行政規則に類するもので、行政の執行についての指針を定めた内部規範の事です。法規ではないのですが、県庁内のルールであることから職員は要綱に従う事となります。
これによって埼玉県都市整備部の公園スタジアム課が県公園緑地協会の所管課となり、要綱に従って所管部局の長が「指導又は関与」をすると定められています。
県公園緑地協会の概要では役員1名と職員21名(令和4年度)の県庁職員が県公園緑地協会へと出向していることが分かります。つまり協会職員の1/5は埼玉県庁の現役公務員であるという事です。
また、こちらは県公園緑地協会の役員の一覧ですが、6名の評議員の中に現職の埼玉県庁都市整備部長の名前が載っています。
ご覧の通り公益財団法人の評議会は法人の最高議決機関となります。
その中に管轄部署の部長が名を連ねているのは、民間企業で言えば下請けに親会社から役員が入っている様なものでしょう。
公益財団法人である県公園緑地協会は「民間企業」に分類される団体であり、埼玉県庁の補助機関ではありません。
県公園緑地協会の位置づけについて埼玉県都市整備部へと確認をしたところ
「本県県営公園の指定管理者は利用の許可などの行政処分を行うことができ、『行政庁』に相当するものと理解しています。また指定管理者は、地方公共団体からは独立した団体と認められることから地方公共団体に所属する行政庁とは解釈していません。」との回答を得ており、やはり埼玉県からは独立した団体であることは間違い無いでしょう。
しかしながら、埼玉県の出資が50パーセントの法人であり、県の行政規則によって指導と関与が規定されていること、職員の1/5が埼玉県庁の公務員である事などを考えれば、「事実上の県庁の補助機関」として扱われ動くことは容易に想像ができます。
共産党埼玉県議団の「申し入れ」が6月8日に県都市整備部へと行われ、その日のうちに県公園緑地協会へと指導、主催者への中止要請までが行われた
「迅速さ」の原因はこのあたりにあると思います。「『事実上の同一組織内』での上意下達」で話が進んだ結果を客観的に裏付ける話であり、今回の件で非常に重要なポイントだと私は考えています。
また、水着撮影会の中止要請があった2023年(令和5年)6月8日現在では
理事長は元埼玉りそな銀行取締役常務執行役員で監査役であった江副弘隆氏(2019年6月~)でした。
副理事長は埼玉県庁から出向の安藤宏氏(2022年4月~・前危機管理防災部長)で、同じく副理事長に埼玉県庁から出向の関根昌己氏(2023年4月~・前都市整備部副部長)が就いていました。
その後理事長の江副氏は退任した様で、2023年(令和5年)6月22日の情報では安藤宏氏が副理事長から理事長に昇格、副理事長は関根氏1名のみの体制となっています。
元々前理事長の江副氏も6月就任でしたので、6月交代は規定路線だったのかもしれません。しかし6月8日の水着撮影会騒動の直後の交代であるだけに、外部の理事長を外して県庁の公務員で体制を固めて対応を強化したのではないか、という憶測は避けられないと思います。
指定管理者制度自体は2003年(平成15年)に地方自治法の一部を改正することで施行されたものです。「公共サービスへの民間参入」を目的として当時の自民党小泉内閣によって導入された指定管理者制度は、民間参入の為に細部を各地方公共団体の条例へと委ねる内容となっており、結果非常にあいまいな点の残る制度となっています。
また指定管理者は「使用許可」という公権力に拠る行政処分を民間団体へと委ねる制度ではありますが、そもそも使用許可を出す余地の無い物もあり、実際に使用許可権限が付与されるのは都市公園法に拠る都市公園と港湾法に拠る港湾施設の管理者だけです。
あまりに細部まで規定しては現場の業務にそぐわない、という事は分かりますが、各自治体に裁量を委ねた結果かなりザルザルな制度になっていると個人的には思います。
結果、埼玉県の県営プールの管理に関しては指定管理者の概要を整理してみたところ、民間団体と言いつつその実質は県庁の部署の一つに等しい事も分かりました。
こうした点を踏まえて、資料の収集や下調べなどを引き続き進めて行きたいと考える所存です。
では。