研究レポートNo.53【ハッピーターン?】
Aちゃんの出現によって、私はある女子を思い出した──
1990年、中二の私は一人の女子生徒に心を奪われていた。
彼女の名はK籐さん。
K籐さんは同じクラスメイト、ほんのりヤンキー風味で気の強い女子だった。
ある日の放課後、K籐さんが男子と談笑をしているところを偶々見かけた。
仲良さげに話す二人を横目に、ギーク・ナード層だった私は心の中で『ちっ!イチャつきやがって!』とディスりながら通り過ぎた。
次の瞬間、「ねぇ、ハッピーターン欲しい?」と、K籐さんが男子に問いかけた。
ハッピーターン?
当時、お菓子などを学校に持ってきてはならないルールがあり、それが見つかればK浦先生(No.7参照)からビンタが飛んでくるような世の中だった。
そんなリスクを犯してまで、K籐さんは男子にハッピーターンを渡すがために学校へ持ち込んだのか? と、気になり振り返ってみた。
「うん、頂戴」
男子がそう告げた瞬間、K籐さんは、「ハッ……」と息を右の手のひらに吹きかけた。
そして次の瞬間、私の眼球に信じがたい光景が衝突した──
「……ピッターン!」
バチィイイン!
なんと、なんとなんとぉ!
K籐さんは男子に思いきりビンタを張ったのだ!
私は廊下に響き渡った破裂音と、K籐さんの行動に度肝を抜かれた。
「いっ……てええ! なにすんだよ!」
ビンタを張られた男子はなぜか激昂。
私は怒っている男子に対して心の中でこう叫んだ。
『テメー! 女子に強烈ビンタ貰っといてキレるとはなんだキレるとは! ブチ○すぞコラァ!』
※ガチです。
キレる男子に対してK籐さんは一切臆することなく、こう言い放った。
「アハハハ! だってハッピーターン欲しいって言ったじゃん!」
と。
「ハッ……」と手に息を吹きかけ、「……ピッターン!」とビンタ。
なるほど、それがハッピーターンの正体か。
なんて稚拙……小学生がやる遊びじゃないか、ハハハ……ハハ、ハハハハハハ。
ハッピーターン欲しい!
ハッピーターンくれぇ!
私にもハッピーターンをくれえぇぇ─────────!
泣き叫びたかった。
これがK籐さんに心を奪われたきっかけだった。
続く
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