2023年振り返り

【出来事】育児、服、コロナ
 
子供が2歳を迎えた。出産後過去2年と比べても生活における育児の比重がどんどん増えている。コロナの時代になっても子供が産まれても、時間を見つけて友達と遊んだり飲みに行くことが何よりも楽しかったのがその機会がかなり減った。子供の就寝時間がかなり遅くなったことで夜に飲みに行くことはできなくなり、保育園に通い始めたことで休日は子供と一緒に過ごすのが最優先となった。友達と会うハードルは上がり、そもそも自分の自由時間がほとんど無くなった。平日は子供が寝て家事が終わった23時以降、休日は朝から23時頃までスマホを触る時間すらほぼない。これによって映画や本、サッカーなどまとまった時間が必要な趣味に触れる機会は激減している。
 コロナがあろうと会ったり会わなかったりしつつも連絡を取っていた人達とも疎遠になりつつあり、人生で一番友達と会えない年になった一方で、子供が保育園に通い始めたことで外出の機会は増え、いつの間にか服に興味を持つようになった。毎週通っている幼児教室で同世代のお父さんたちの酷い服装を見て、こうなっては終わりとずっと思ってきたことも影響していそうだ。服のことを考えるのはまとまった時間が不要で時間の制約がなく、フレキシブルに時間を使えることができる。気付けば服について考えたり情報収集して買い物をすることが趣味になっていき、春から冬に至るまでほぼ毎週服を買う生活を続けている。ここに来て新たな趣味を見つけたのは嬉しい驚きだった。一方で服を選ぶ為のベースとなるような文化面でのインプットがない中での購入には、少し薄っぺらさを感じてもいる。育児に便利など機能面での基準はあれどカルチャー的な背景がない。それが必要なのかは自分でもはっきりしないのだが。
 ほぼ2週間に一回の風邪の看病や毎日の寝付かせ、食事、妻との意見の相違など育児は苦労の連続だが、毎日できることや話せる言葉、歌える歌が増える子供たちの成長はいつも驚きの連続だ。何より子供たちは本当にかわいい。真夏の夕方にセミを観察しに子供と公園に行った帰り道、来年の夏には子供たちは今とは見違えるほど成長しているのだなとふと思い、この大変でありながらもかけがえのない毎日がどれだけ貴重で幸せなのかを噛み締めた。子供が大きくなった後、年老いた自分がタイムスリップしたいなと思っても絶対にできない一日を今過ごしているのだとはよく言われる言葉だが、例えば子供二人と一緒に手を繋いで歩く時、暗くなった寝室で今日は楽しかったねと話す時、それを強く実感することができる。
 この4年弱コロナの時代を過ごしてきたが、今年は大きな変化の年だったことも記しておきたい。年が明けて以降マスクを着用する人が日に日に減り、メディアや人々の話題からも遠ざかっていった。感染力の高さや全身に深刻な影響をもたらす可能性の高さなど警戒すべきウイルスであることは何ら変わらず、継続して情報収集しているが、自分自身も秋頃からリスクが高い場所以外はマスクを着用しないなど警戒度が下がったし、生活においてコロナについて考えることがかなり少なくなってきている。とはいえノーガードで生活している訳ではなく、様々な行動をする際に頭の中で感染リスクを計算したり時には行動を回避するのは継続しているのだが。
 2020年の時点で、パンデミックの終わり方は「医学的な終息」と「社会的な終息」と言われていたことを覚えている。後者は感染状況やリスクは変わらずとも人々が感染症に慣れることでパンデミックが終わるというものだった。日本人にとってはまさに社会的な終息が2023年に訪れたような印象を持った。自分にとってコロナ時代は悪いことばかりだった訳ではなく、とりわけ育児が生活の中心となるよう自分自身の意識を変える為には、むしろありがたい出来事だった。
 2020年以降、好きなことの大半を諦めてきた。その結果として育児中心の生活にスムーズに移行できたということをよく考える。サッカー応援や飲み会などコロナ感染リスクが高い行動を諦めることにすっかり慣れているが、コロナが無ければ行けないことへのストレスがもっと大きかったはずだ。この4年弱をかけて、やりたいことはどんなことも無理してでも必ずやるというコロナ前の自分のスタンスからだいぶ脱却してきた。これまでの自分を形成してきたことを本格的に諦めた年というのが2023年だった。そう言った意味で自分の中では2020年から2022年までの時代とは異なる時代がスタートしたような感覚を抱いた。
 そんな中でも友達と会って散歩したりファミレスや居酒屋に行った数少ない機会はどれも楽しく、今年のハイライトとして記憶に残っている。みんなありがとう。

【出来事】Supreme
 
今年から服に興味を持ち、どこかでシュプリームにも触手を伸ばすつもりでいた8月、2023FWシーズンが始まり遂に購入を開始した。元々2000年代前半の裏原ブームの時代からブランドとしては知っていたが縁はなく、2010年代以降の世間での流行後は全く詳しくないながらも、着ている人のイメージからどちらかと言うとダサい印象すらあったのも正直なところだ。そんな中でコロナ時代になり、YouTubeで流行った宮戸フィルムさんのシュプリーム店員物真似動画で興味を持ち始めた。最初は店員の接客へのインパクトだけだったが、宮戸フィルムさんの購入実況にも興味を持ち始め、毎週服が即完売するというのはどういうことなのか、素朴な疑問と共にシュプリームの服そのものへの興味が僅かながら芽生えてきた。
 今年から服に興味を持ち、シュプリームの服のことも頭の片隅に置きつつ、一般的にシュプリームを着ている人のイメージや値段や購入のハードルの高さ、他の服を優先していてなかなか買うことはなかったのが2023年夏頃までのスタンスだった。
 服について調べていくと、私がオシャレだと思う人の多くはシュプリームを通ってきた、または今も購入してうまく着ていることに徐々に気付き始めた。少し田舎臭い見た目の人が着ているようなロゴが目立つ服だけでなく、本当に様々なスタイルの服を出していて、オシャレな人はさりげなく、もしくは大胆にそれらを取り入れていることを知った。シュプリームを着ている人の中にも、絶妙に格好良いバランスでチョイスしている人がいる。特にコテコテの外見ではなく、意外性があるタイプの人が選ぶと良い。私も何か取り入れてみたいという感覚が徐々に芽生えてきた。自分の見た目的にもシュプリームを着るような外見ではないので、意外性という意味では行けるかもしれない。
 また、今年になって急速に野村訓市さんへのリスペクトが高まり、彼が50歳になってもシュプリームのシンプルな服を選び、それを格好良く着こなす姿に強い憧れを抱いた。更にシュプリームの人気が低下してきているというニュースを見聞きし、逆に服を買いやすくなるのではと考えたのも追い風となった。
 そんな中で今年の晩夏に発表された2023FWシーズンルックブックや商品一覧、そしてそれに関する宮戸フィルムさんのレビュー動画をじっくり見ていると欲しい服が多く見つかり、これらが毎週少しずつ売られることが楽しみになった。宮戸フィルムさんのように毎週土曜11時のオンライン発売日の争奪戦に参加してみたくなった。
 早速シーズン最初、8月のWeek1のオンラインでスモールボックスロゴのTシャツ購入を試したら簡単に買えてしまった。その他にも気になっていた緑色のオックスフォードシャツが時間を追うごとにサイズ欠けしているのを見て、これも購入することにした。遂にシュプリームの服を買ったぞという高揚感はそれまで買ってきた服とはまた違うものがあった。実際に届くとTシャツはそんなに好みではなかったが、シャツは気に入って沢山着ることになった。服に同封されていたあのお馴染みのステッカーにも少し感動した。
 以降毎週発売される服を確認するのが楽しみになり、シュプリームの服の購入を考えるのが一週間の定番となった。毎週日曜から徐々に次週発売される服がリークされ始め、ほんの少しのモデルの着用画像でイメージを膨らませる。毎週木曜夜には日本に先行して欧州やアメリカでその週の服が発売されるので、インスタグラムの各アカウントが投稿する店舗の写真や着用画像を通じて、服の実際の色味や質感、サイズ感を更にイメージする。毎週発売直後にめぼしい服を転売目的で購入してYoutubeでレビューするイギリス在住のアジア系男性、通称”タワマンニキ”の動画を確認することも忘れない。シュプリームに関する巨大情報サイト、シュプリームプラスのコメント欄の確認も必須だ。こうしてその週自分が購入したい服やサイズを決定し、土曜11時のオンライン発売に備える。土曜の午前は大抵子供と公園に出掛けることになるので人気が集中する服を購入することはほとんど叶わないのだが、私が興味を持つ服は地味なものが多く、即完売するものは少ないので少し時間が経ってからオンラインで購入するか、後日店舗に行って購入することが出来た。
 今更言うまでもなくシュプリームの店舗の接客姿勢は一般的な服屋とは異なることから、実際に店舗で買う機会はなかなか無いのではと思っていたのだが、その機会は思いのほか早く9月にやってきた。シュプリームのルックブックのモデルの一人に日本人がいて、原宿店や渋谷店で店に立つスタッフの方であることを知った。インスタグラムのアカウントをフォローすると写真家でもあり、初の写真集を刊行するらしい。東京をテーマにした写真はどれも格好良い。写真を展示している代官山のギャラリーで在廊する日があるとのことで早速行ってみることにした。写真集の購入時にサインをしてもらいながら、本人と写真のことやシュプリームの話をさせてもらうことができた。店舗にも是非行ってみてくださいと言われたその足で足取り軽くギャラリー近くの代官山店を訪れ、Week1で発売されて気になっていた服が売られているのを発見した。銀座のドーバーストリートマーケットで一度試着していたこともあり、この思い出深い一日の記念にと購入することにした。会計を待つ間に、先ほど話したばかりのスタッフの方がギャラリーからやってきたので挨拶を交わし、気持ち良く初のシュプリーム店舗での買い物を終えることが出来た。代官山店は家から近いこともあって、地元の服屋感覚でその後も4回買い物をしている。
 23FWでは8つの服や靴下を購入し、更に地元のトレファクやメルカリでも5つの服や帽子を購入した。シュプリームのおかげでそれまで興味がなかったような服を知り、服に対する興味の幅が広がっている。ありとあらゆる種類の服が発売されるので、これは無理と思うものも格好良いものも、新しく知ったものも、最初はなんとも思わなかったのにじっくり見ているうちに好きになったものも、とにかく様々な服がある。セーターなんかはその代表例だし、クルーネックのスウェットやフリースの上着などこれまで縁が無かった服も初めて買って毎日のように着ている。シュプリームと出会わなければ今後も興味を持たなかったかもしれない服にどんどん出会うことができて本当に楽しい。

【買ったもの①】DAIWA PIER39 「Tech Hiker Mountain Shorts」
 夏と言えば短パン、毎年5月頃から10月頃まではほぼ毎日短パンを履くのが定番だ。今や短パンを履くのはおじさんだけという厳然たる事実は置いておいて、今年は服に興味を持ち始めたこともあり、これまで履いてきたノースフェイスのバーサタイルショーツから短パンを一新することにした。
 基本的に手ぶらで行動したい、子供二人と公園で遊ぶ時に麦茶のコップ2つ含めてポケットは収納力があることを優先して検討した結果、DAIWA PIER39の短パンがベストと考えてメルカリでまず一着購入、そこから結局色、素材、サイズ違いで4着も同じ型の短パンを購入して夏の間中穿き続けることになった。様々なタイプのポケットが9個ついていて収納力抜群でありながら見た目はゴテゴテにならず、裾幅が広くて見た目も自分の好み的にもちょうど良かった。
 財布やスマホ、鍵といった必須の持ち物と、子供の麦茶カップや病院に行く際に必要な一式を入れたポーチを収納しても何ら問題なく持ち物を整理できるし、特に自転車に乗った際にデジカメをサッと取り出せるポジションにポケットがあるのも良い。機能面で完璧な短パンだが、来年夏は長ズボンを穿きたい気持ちもある。機能だけを重視するか、服の好みを優先するか、来年夏の自分がどうなっているかは今は分からない。

【買ったもの②】AURALEE 「SUPER FINE COTTON PIQUE BIG POLO」
 
今年は白い無地Tシャツを着ようと思い、春からロサンゼルスアパレル、シャカウェア、プロクラブのTシャツを買って着続けたが、本格的な夏が到来する前に少し飽きてきた。そこで幼少の頃を除けば人生でほぼ縁が無かったポロシャツに興味を持った。試しにロサンゼルスアパレルのポロシャツを購入したところ絶妙だったがTシャツと同じ素材感の為、やはり鹿の子のポロシャツが1枚欲しいと考えてラコステの定番L.12.12を購入した。
 しかし思ったよりも生地が頼りなくやや期待外れと感じたところで、ポロシャツと言えばオーラリーという情報を目にした。早速調べると五本木のTFで取り扱っているらしい。地元とも言える大好きな五本木の街、三宿通りに店を構えるその店のことはオープン当初から知っていたが、取り扱う服も値段もこれまでの自分には無縁だった。服に興味を持った今年、満を持してここで買い物が出来るのではと早速店を訪れ、試着してみると思った以上に自分にフィットし、店員さんの的確かつ気持ちの良い接客もあって即購入した。
 昨年までは服を買う為にはストーリーが必要という考えから、オンラインで購入することは有り得ず、旅先か家の近所の店でしか服を買わないことを自分の中で定めていた。今年服に興味を持ってからはそんなマイルールは無かったかのようにオンラインで購入することが基本となっていたが(育児の事情から気軽に服屋に行けないという事情もある)、久々に店舗、しかも近所の店で服を購入したのがこのポロシャツで、やはり好きな街の店で店員さんと話しながら買うとその服に対する思い入れも深まるなと実感することができた。
 オーラリーというブランドを知ったのもこのポロシャツが初めてだったが、ラコステのポロシャツとは全く違う肌触りや着心地の素晴らしさを感じることが出来た。良い服を着るというのはこういうことなのかと教えてくれたポロシャツだ。

【買ったもの③】リーバイス「501」
 定番の服を経年変化を感じつつ長く着てみたいという気持ちが芽生え、せっかく服を好きになったのに501は知っておかないとという想い、そしてマイメンの影響もあって初めてリーバイスの501を穿くことにした。上野のジャラーナで売られているアメリカ流通モデルを手に入れ、糊落とし→洗濯→乾燥と手順を確認しつつ一連の作業でサイズを縮めて穿き始めた。あまりに定番のジーパンなので自分に似合うのか心配だったが、思いの外手持ちの服にもフィットして定期的に穿いている。ここ数年長ズボンといえばディッキーズやレッドキャップ以外考えられなかったが、ジーパンはどんな服にも合わせやすいことを知った。501は洗練されたシルエットではないが、サイズ選びを何度も繰り返し検討して今の自分にフィットするものになったかと思っている。次サイズ違いのものを購入してリジッドのまま穿き続けてみたい。
 501をきっかけにその後コモリの5Pパンツ、シュプリームのバギージーンズを購入し手持ちのジーパンは3着に増えた。シュプリームのものはリジッドを購入したので501同様に経年変化という楽しみもある。秋以降すっかりジーパンに親しむことになった。

【買ったもの④】Supreme「Supreme Cargo Pocket Zip Up Sweatshirt "Red"」
 
前述したシュプリームの店舗で初めて購入した、思い入れの深い服となった。身幅が広く着丈は短めのいわゆる今っぽいシルエットだが、赤い服は子供のころから馴染み深いので若作り感なく自分にはフィットしていると思っている。
 ジップアップの服は長らく遠ざかっていたが、脱ぎ着がしやすくとても使い勝手が良い。裏起毛の肉厚な生地ではあるものの暑ければ脱げば良いので、10月以降長い期間着る機会多い状態が続いている。ポケットも大きく、子供と外出する時に手ぶらで済むのもありがたいところだ。
 ジップアップという点で更に言うと、2010年代はじめまでは私もジップアップのパーカーを着ることが多かったがその後長い間ご無沙汰になっている。今年注意深く見ていると少しずつジップアップのパーカーを着る人が増えつつある印象で、来年にはまた復活しているような気がする。服の流行というのはファッション業界によって巧妙に仕掛けられたものであると共に、単に長い間皆が同じような服を着ていると飽きてしまい、違う服を着るという繰り返しなのだろうと考えるようになった。

【買ったもの⑤】Supreme「Polartec® Half Zip Pullover "Purple Camo"」
 
シュプリームに興味を持ち始めると、自然と過去の服のアーカイブも調べ始めることになる。実物を見るにあたって最も手っ取り早いのはフッドのトレファクやセカストに行くことで、秋以降頻繁に店を訪れることになった。悩みに悩んで2015年のクルーネックを買ったりもしたし、この2020年FWに発売されたポーラテックのフリースは思った以上に良くて冬の定番となっている。
 まずフリースの服をほとんど着たことが無かったのだが、このポーラテック200の素材のお陰かかなり暖かい。色味的にも素材的にも気を遣う必要がなく、部屋着としても毎日のように着ている。洗濯をすると脱水後の状態でほぼ乾いているのもありがたい。店頭にあったSサイズを買ったのだが身幅が広いのでちょうど良く、派手な柄でも案外自分にフィットしたので部屋着だけでなく外出でも勿論使えて万能な存在だ。プルオーバーでも脱ぎ着がしやすく、ポケットもついていて便利。あまりに便利で同じものをもう一着買いたくなっている。

【買ったもの⑤】HERILL「Goldencash Pullover "Black"」
 
冬を迎えるにあたり、誰に会っても問題ないような適切な服を持っていないことに気付いた。最近カシミヤセーターというワードをよく目にすることに気付いて調べたところ、暖かくて着心地が良く、経年変化も楽しめるとのこと。様々なブランドが出している中で、せっかく買うなら最上級のものをと考えてゴールデンキャッシュという希少なカシミヤを使ったというヘリルのセーターをターゲットとした。
 サイズ感に迷ったが運良く新宿のアーバンリサーチにて残り一着だけ置いていることを知り、時間休を取って店舗を訪れた。試着してみると評判通り肉厚で着心地は最高、適度にリラックスした見た目はスウェットのような感覚で着られて私にとって敷居が低い。実際風が冷たい夜に着てみると暖かさは抜群で、上着は多少薄手でも問題ない。着心地の良さと見た目の絶妙さのおかげで着るたびに気持ちが上がる。良い服を着るとはこのことだなと実感させてくれる素敵なセーターだ。

【試合①】「川崎ー札幌」
 コロナ時代になった2020年以降、札幌の試合は基本的にマイメンとビデオ通話しながらDAZNを同時再生して観戦というリモート観戦をほぼ毎試合やってきた。酒を飲みつつ審判と相手選手の文句中心に言いたい放題話しながら明るく楽しく観戦するという、コロナ時代における毎週定番の最も楽しいイベントだった。しかし今年は子供の昼寝タイミングと試合時間が合わなくなったこと、そして保育園に通い始めてからは子供と時間を共有できる貴重な休日に子供と遊ばずにサッカー観戦を行うことは難しく、DAZNで試合を見ることは激減した。
 試合が行われる現地で札幌を応援することも当然難しいのだが、この試合は家から最も近いJリーグ会場である等々力ということで是が非でも行きたかった為、妻の協力を得ながらベビーシッターさんを手配して試合開始から終了まで90分観戦できる環境を整えることが出来た。
 コロナの感染拡大中であることからN95マスクをしっかり着用しての応援、応援そのもののブランクかつ真夏ということもあり、体力的にかなり厳しく思ったような応援をすることは出来なかったが、振り返ってみると充実した時間を過ごすことが出来た。
 試合開始前のリーダーによる全員の気持ちを一つにする言葉もあり応援席全体のバイブスはかなりビシッとしており、それ故に本来自分ももっとやれるのにと思いつつも、これが応援だよなという普段忘れていた感情が蘇ってきた。試合の途中では2階席の札幌ファン全体から大きな手拍子が起こり、この応援席とそれ以外の席の観客が一体となって札幌を後押しする感覚は札幌ドームでの応援を思い出すことが出来、応援しながら感動したことも覚えている。
 審判の信じられないような偏向判定はあったものの、10人になって同点に追いつかれてからの札幌の選手の何としてでも勝ち点を持ち帰るという魂のこもったプレーは昔の札幌のようで、懐かしさと共に応援に対する情熱を掻き立ててくれた。これが応援だと随所に感じることが出来た試合だった。

【試合②】「横浜マリノスー札幌」
 
当初は応援の中心ブロック席のチケットを購入して全開で応援するつもりだったが、直前に病気に見舞われ激しい運動をすると出血する可能性があるとのことで、応援を断念せざるを得なくなった。
 熟考した結果周りに誰もいない席を取ってマイメンと共にそこで身体に負荷をかけず応援したら良いと考え、快諾してくれたマイメンと共に新横浜へ向かう。応援団からかなり遠い場所で応援するのは98年11月の厚別での札幌ー神戸以来25年ぶり、マイメンと一緒に応援を行うのは2016年3月の町田での町田ー札幌以来というメモリアルマッチとなった。応援席に到着すると周りにはほぼ人がおらず応援団の様子も基本的に見えなかったが、案外何も問題なく自分なりの応援をビシッとやることが出来た。
 札幌ファンの声の小ささや空席の多さは衝撃的ではあったが、半端な席にいて周りの札幌ファンに対してストレスを溜めるならば、周囲に誰もいない席で完全に自由にやる方が楽しいだろうと薄々感じていたことを今回実際に体感できた。一方で応援団や周りの熱いファンを見て上げられることはないので、良くも悪くも自分次第とも言える。
 いずれにしても、どこの席であろうが周り関係なく友達と一緒に熱量高く自由に応援をするというのはアルゼンチンでよく見る光景であり、アルゼンチンと同じスタイル、同じ熱量でそれを札幌の応援席で実行できるのはマイメンと私だけだと確信することが出来た。
 応援団以外の場所における札幌の応援の熱量の低さに驚きつつ、それに対して今の自分が出来ることは残念ながらない。今の私は札幌の応援を通じて自分がいかに楽しめるか、充実できるかのみにフォーカスしている。子育て、介護、働き方、政治、経済など世の中における多くの問題は自分さえ良ければオッケー、では全然ダメだと思うのだが、私にとってサッカーは別にそうではないと思っている。自分にとってどうなのかというのを超えて、サッカー界として、Jリーグとして、自分の応援するチームとしてどうなのかという問題意識を持って何かを語る人はSNS上に数多く見受けられるが、今の私には大きな視点は不要だし、そんなキャパシティはない。自分のことが大事で、そこをブレないようにしたい。余計なことでストレスを溜めず、数少ない行ける試合で全力で応援する。ある意味自分が行う応援は札幌というクラブとすら無関係で、自分が楽しんで応援することだけに注力したら良いという考えを強くしている。
 この考えは試合になかなか行けない今限定で、育児が落ち着いて再び定期的に応援に行けるようになったら変わることだろう。札幌の応援は一生に渡って続くライフワークだ。状況に応じて柔軟にスタンスを変えながら、何よりも自分の為に応援を続けていきたい。
 札幌にとって何の価値もない試合だったが、私にとっては楽しい試合だった。

【映画】「特になし」
 年間で12回映画を見た。昨年は17回で一昨年は35回と、年を追うごとに減っている。これは育児によって時間を確保できないことと、今年は服に興味を持って以来、自由時間はほぼ全て服の情報収集・検討・購入に時間を使っている為である。3月までに7回映画を見ていたが、本格的に服が趣味になった春以降はほとんどその機会がなく、残り5回の大半は過去に見た映画を再び見たに過ぎない。来年はもう少し意識的に映画鑑賞の機会を増やし、インプットに努めたい。

【ドラマ】「エルピス」
 服に興味を持ち始める前、年明け早々にNetflixで池袋ウエストゲートパーク、初恋、エルピスとドラマを立て続けに見た。過去に何度も見た名作IWGPは置いておいて、このエルピスが今年見たドラマとしては最も強く印象に残っている。2022年のドラマで放送当時も大きく話題になっていたので興味があったのだが、一度見始めると引き込まれるように夢中になり、見終わった後はスタッフの方々のインタビューの数々を読んだ。ドラマは勿論のこと、このインタビューが本当に面白く、示唆に富む内容だった。
 主役の一人である長澤まさみの役柄について、脚本の渡辺あやさんが「私が思ったままの人間の重層性や多面性を投影」と言っている。確かにドラマでの長澤まさみのキャラクターはその通りで、人は良いところも悪いところも矛盾したところも色んな側面を持っている。ドラマでそれを描くのは簡単ではないと思うのだが、今作の長澤まさみの演じた女性は本作が面白いと感じた理由の一つだと思っている。
 プロデューサーや脚本の方もインタビューで語っている通り、エルピスはハードなテーマの中にも少しコミカルなシーンを入れて安心させてくれるのも特徴的であった。エルピスにコミカルなシーンを入れることについて、インタビューでは「昔のテレビは全部シリアスでも視聴者がそれを受け入れる度量があった」的なことを言っていたがまさにそんな気がする。私もその現代的な視聴者の一人なのかもしれない。
 佐野プロデューサーはインタビューでこんなことを語っていた。

「今放送している『エルピス』は、2018年の6月から大体2年ぐらいの話になるので、村井という人の受け取られ方がだいぶ変わっているんですよね。セクハラというものの受け取り方が、2014年、2018年、2022年でそもそも違っていて」

『エルピス』は「何を渡せるかが勝負」 佐野亜裕美Pが語る、物語に込めた実体験の空気

 世の中はものすごい勢いで変化を続けているが、2018年と2022年のたった4年でも全然違うのは私もその通りと感じている。ハラスメントを許容しないという面だけにおいては明らかに年々状況が良くなってきている。育児を取り巻く環境や状況に関しても同様なのではと思う。一方でかなり飛躍して考えると、サッカー応援が窮屈になっていくのはハラスメントをさせない世の中の変化と遠い所で繋がっているような気がする。サッカー応援ははちゃめちゃにやってハラスメントも減らすのは残念ながら両立しないと考える。
 とはいえ私はこれからもいいとこ取りをして生きていくつもりなので、今の世の中が全てつまらないとも思わない。サッカー応援が最高だった時代はちゃんと若い頃に経験しているし、自由な海外旅行も存分に楽しんできた。そして子供が産まれたら育児に優しい時代になり、在宅勤務も当たり前になった。私は世の中の変化に大きな関心があるのだが、どの時代も私にとってはラッキーなことが続いている。子供が保育園に入る時期がコロナ初期の3年前やワクチンがなかった2年前ではなく、今年だというのも完全にツイている。
 エルピスはドラマそのものが面白かったことと共に、世の中の変化について考えるきっかけにもかるドラマだった。
 最後に、最終話の鈴木亮平の演技には1分間ほどブルーハーブのBOSSさんが乗り移っている。シリアスなシーンなのにBOSSさんの物真似をしているのか!?と気付いた時は笑いが止まらなかった。必見だ。

【ラジオ】「TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING」
 
野村訓市さんが出演するJ-WAVEのラジオ番組である。きっかけはYoutubeでラジオの切り抜きがサジェストされて今年になって番組の存在を知ったことによる。
 おそらく野村訓市さんのことを初めて知ったのは2007年の雑誌「Spectator」のVAGABONDHING IN JAPAN、日本国内の旅特集の号にて、野村訓市さんが仲間と共に行った日本縦断二階建てバスの旅に関するレポートを読んだことがきっかけだった。当時の私はレイヴやトランスに傾倒していたことからSpectatorに大きな影響を受けており、毎号読むのを楽しみにしていた。
 そんな中で日本の旅をテーマにしたこの号は新鮮で、高木壮太さんの「都道府県別みどころガイド」には特に影響を受けて、その後の旅の目的地選びに大いに役立った。野村訓市さんの旅も日本を知ることをテーマとしており、旅といえば海外という考えだけでなく、日本にも目を向けるきっかけになったのだと今振り返って感じている。2006年頃から海外旅行だけでなく、積極的に日本国内の旅も楽しむようになり、それはこの号を読んだ2007年から加速して、2009年には奄美大島皆既日食音楽祭に参加、行きは沖縄本当経由、帰りはフェリーで鹿児島に渡ってから九州を横断し、全て陸路で帰京している。
 話はずれたがSpectatorをきっかけに野村訓市さんを知り、その後も雑誌EYESCREAMの連載や、ブルータスやポパイの企画等でいつも文章を楽しみつつ、漠然と憧れる存在であり続けた。
 ラジオではタイトル通り旅をテーマにしつつも、リスナーからの人生相談や野村訓市さんの過去の話、社会情勢に関する意見など様々な話題が繰り広げられる。旅になかなか出られなくなった今、ラジオを聴きながら昔の自分の旅のことを思い出したり、東京について考えたりする良いきっかけになっている。
 リスナーからのリクエストや野村訓市さんがチョイスする選曲もいつも素晴らしく、Spotifyで調べては自分のお気に入りリストに加えることもしばしばだ。毎週日曜日の放送をリアルタイムに聴くことはなく、月曜日にradikoで放送を聴きながらその週の仕事を開始するのが生活の定番になっている。
 ラジオをきっかけに勝手に身近な存在となり、ファッションにおいても彼に大きな影響を受けるようになった。今年発売された野村訓市さんが手掛けたVANSオーセンティックは色違いで2足購入し、これまで無縁だったオーセンティックが自分の定番のスニーカーになった。着ているシュプリームの服を調べては購入を検討し、実際コーチジャケットをメルカリで購入したこともあった。今一番私が影響を受けている人が野村訓市さんである。

【Podcast】「Too Young To Know」
 これまでもSpotifyのサジェストでなんとなく知っていたPodcastだが、シュプリーム23FWのレビュー回を聴いてみたらとても面白く、今年の後半から過去回を一つ一つ聴き始めている。出演者の3名は自分とほぼ同世代ということもあり、往年の音楽やテレビ、芸能人に触れるちょっとした話全てが理解できて面白い。金八といえば兼末健次郎の名前を出す人は皆それだけで仲間と思ってしまうし、Jリーグ初期の話も同様だ。お笑いのニューヨーク、Podcastで言えばニクラジの2人(徳利さんとD山さん)など、同世代の人が話すような90年代後半~2000年代前半の出来事はまさに自分を形作ってきたもので、友達ともなかなか会えない状況でこうした話を聞くと余計面白く感じるのだろうと思う。この3名はファッション関係者でもあるようで、服に興味を持ち始めた私にもうってつけだ。
 また、宅急便の配達員の態度の話やタイヤが太い自転車に乗っている人の交通ルールの話など街中でのトラブルの話も度々登場し、そうしたトラブルの話を聞くのが好きな私はその度にワクワクしている。Podcastで言うと今年秋に「奇奇怪怪」で語られた電車内でのトラブルの話もとても良かった。
 ちなみにSpotifyで最も聴いたPodcastは昨年同様に「ニクラジ」である。いつか復活してくれると嬉しい。

【アルバム】「特になし」
 
アルバム単位で音楽を深く聴くという機会を作ることができなかった。

【曲】PUNPEE「 タイムマシーンにのって/家族の風景」
 
Spotifyによると今年一番多く聴いた曲とのこと。オダギリジョー出演の相鉄線の東横線乗り入れに伴うCMソングとなった今年の曲だ。元々PUNPEEの「タイムマシーンにのって」は好きで、ハナレグミの「家族の風景」はどちらかといえば苦手だったのだが、自分に子供が出来たからか、娘の成長をテーマにしたCMに自分を重ねて感情移入してしまったからか、妙にフィットして沢山聴いた。子供が出来ると人は変わるのは普通のことなのだろうが、育児に全力であることも含めて、自分が想像を超えて変化しているのを日々感じている。

【ライブ】「特になし」
 今年は一度もライブに行けなかった。徳利さんやブルーハーブのライブに行きたかったが、育児のスケジュール上困難だった。

【本①】猪立山泰人 「ドラマティック・トウキョウ」
 
前述したシュプリームのルックブックのモデルの方が出した写真集である。今年は芸術に関するインプットがほとんど無かった中でこの写真集に触れられたのは数少ない出来事だ。東京をテーマにした写真の数々では、私にとってめっきり縁がなくなった、夜の繁華街や道端の写真が登場して様々な想像を掻き立てられる。この写真集を購入した日の午前に子供と遊んだ世田谷公園のスケートパークも登場し、今の自分にもリンクする風景を確認できて安心したことも覚えている。写真集全体を通じて、私にとって最早地元と言える東京の街に対する郷愁や愛着、憧れなど様々な感情が芽生えた。ギャラリーで少しご本人と会話させてもらったところによると自転車で走りながら写真を撮影することもあるとのこと、私もよく同じことをやっているので、いつか彼のような格好良い写真を撮れたら良いなと写真に対するモチベーションも上がった。
 その時聞き忘れたのだが、ドーム型の屋根がある建物が印象的な写真は、柿の木坂にある環七沿いの中華の店を写したものなのか気になっている。独特の存在感を放つ近所の店だ。

【本②】「ファッション雑誌」
 
服に関する情報はインスタグラムを筆頭にインターネットで得るのが手軽だが、雑誌世代なので雑誌も欠かせない。リニューアル以降ずっと読み続けているポパイは去年までの自分とは打って変わってファッション特集を何よりも楽しみにしている。他の特集は良いから毎号ファッションだけを取り上げて欲しいとすら思ってしまう。
 また、これまでこんなもの誰が読むんだと半分馬鹿にしていたUOMOやOCEANSなどやや中年向けファッション雑誌も真面目に立ち読みし、時に購入すらしてじっくり読んでいる。
 若者ならまだしも、おじさんがファッション雑誌を読んでそれを参考にするなんて格好悪すぎると思っていたのだが、今の自分はまさにそれである。去年までの自分とは正反対の人間になったのだが、服に関することなら何でも知りたいという強い思いには抗えない。

【旅(国内)】「帰省」
 
自分の実家へ家族で夏と年末の2回帰省、妻の実家へ1回日帰りで行ったのが遠出だった。その他東京ディズニーランドやサッカー観戦などで数回千葉県や神奈川県を訪れたが、基本的にはコロナ時代以降のスタンスでずっと東京都内、ほぼ家から半径3キロ以内で過ごした。
 年末の帰省では久々に実家近くのスパ銭へ一人で歩いて行くことができた。夜22時過ぎ、誰も歩いていない国道の歩道にて日本のロードサイドの典型的な風景を眺めつつ雪と氷の上を歩くのは非日常的でちょっとした旅のようだった。

【旅(海外)】「なし」
 
今年は本格的に世間で海外旅行が復活したが、当然のことながら私が行くチャンスは無かった。2019年以前は毎年1回以上必ず海外に行っていたのも最早遠い昔の記憶だ。

【夏】「フッドの公園、世田谷公園」
 
昨年に続き昼休みや夕方にフッドの公園を訪れる機会が多く、セミの鳴き声に夏を感じることができた。夕方子供を保育園に迎えに行った後に一緒に公園を訪れ、セミの盛大な鳴き声を聞きつつ羽化を観察したり、トンボが上空を飛んでいることに気付いたり、夕焼けが綺麗だねと話したりしながら家路に就く度にいつもサウダージを感じた。このかけがえのない時間は一生の思い出として記憶に残り続けることだろう。
 また、在宅勤務中の昼休みには一人で世田谷公園へ行ってベンチで灼熱の太陽を浴びる機会が多かった。公園からの帰宅後、熱中症一歩手前の汗だくで浴びる水シャワーは生き返るように気持ち良く、外国の安宿の水シャワーを思い出すことができていつも最高だった。

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