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Nikon FGをデジタルカメラ化しようとしている話

Nikon F3をデジタルカメラ改造している方のWebサイトを拝見し、感動を覚えました。私はこのページに影響を受け、小型なフィルムカメラ、Nikon FGをデジタルカメラ化しようとしています。

まだ完成はしていません。1年くらいかけてゆっくりやっていこうと思っています。進捗が出たら追記、あるいは編集していく形になります。



改造方針

1. 外観はなるべく純正の状態に近づける

NEX-5系のメイン基板とイメージセンサ基板を確認すると、データバック MF-15の中身をくりぬけば、どちらも入りそうであることに気づきました。よく見なければ改造された子とわからない状態を目指しています。
液晶画面もとりあえずは載せないつもりです。

2. 機構はFGのものを使う

Nikon FGの特徴は小型軽量で、電子制御であることです。Nikonで初めてプログラムAEを搭載した機種だったそうです。一方で、機械の部品もまだたくさん残っています。電子制御は乗っ取れそうですし、何よりシャッター音が好きなので、加工こそしますが、これらをすべて生かします。
一方、NEX-5N側はBULBにして、単に撮像素子として動いてもらいます。

3. 完璧を目指すよりまず終わらせよ

性格上凝りすぎてエターナるのが目に見えているので、追加したい機能はいろいろあるのですが、まずは最低限撮影できることを目指します。
とりあえずできたら改造を重ねて、フィルム巻き戻しノブをロータリエンコーダにしたり、距測センサをくっつけてピント合わせの補助をしたり、色々やるつもりです。

基板加工

イメージセンサ基板の削り加工

進捗:90%
ToDo:組み込み後のフランジバック調整

先駆者様と同様に、FG側の枠の幅が24mmなのに対し、イメージセンサ手前のガラス板の幅が24.5mmだったため、パッケージを削る必要がありました。ダイヤモンドやすりで3時間くらいかけて慎重に削りました。
平行に削るために、センサ表面にマスキングテープを貼り、紙で高さを調整して、机に置いた平らなやすりに押し当てて削りました。

なお、イメージセンサの加工は2枚目です。もともとNEX-5Rで作業していたのですが、不注意により破壊してしまい、横に線が入るようになってしまいました。
そのため、新しくNEX-5Nを購入し、同じIS-104ボードの加工を行いました。今度は耳を残してみました。流れは先駆者様とほぼ一緒ですね…。

センサ基板1代目(壊す前の写真)
センサ基板2代目 削り終わり
センサ基板2代目 動作確認
ピンセットの影が映っていますね


NEX-5Nメイン基板の加工

NEX-5Nのメイン基板はFGのフィルム送りの場所に微妙に収まらないため、先駆者様と同様にメイン基板を削る必要がありました。
購入したのはジャンクのNEX-5Nです。ジャンクの理由はシャッターが動かないこと。分解してみると、原因は位置検出用の接点がずれたことによるものでした。

分解の途中にメモリーカード基板へのフレキコネクタを破壊してしまいました。心に少し傷を負いましたが、あまり問題ではありませんでした。メモリーカード基板をFG内部に収めることは難しいため、解析の上、相当品を自作するつもりでいたからです。

破損したコネクタを取り外したときの
コネクタ外し
ランドを剥がさずにいけました うれしい
削りきったNEX-5Nメイン基板
ホットボンドで養生しています

以下の写真はおまけです。NEX-5Rで同じことをしようとしていた時のもので、NEX-5NとはSHOE/IF付近の基板内部の配線が異なります。モータ用電源が通っており、クリアランス確保のため削り取る関係上、これの迂回が必要でした。
ちなみに、このNEX-5Rの基板は改造には成功したものの、私の不注意によりイメージセンサも巻き込んで破壊してしまいました。かなしい。

NEX-5Rメイン基板(改造済み)

基板の解析

NEX-5Nカードスロット基板の解析

なぜかネットに上がっていたNEX-5Tのサービスマニュアルの部品実装図と回路図を頼りに、テスターで片っ端から導通を調べ、必要なピンアサインを書き出しました。このカードスロット基板(CN-474)は、カードスロット以外にもアクセスランプ、RTC保持用バッテリ、シャッターユニットにつながるコネクタを持ちます。

なお、SDカードしか使う予定がないので、メモリースティック関連のピンは解析していません。これにより、メイン基板側の破壊したコネクタ跡のピンアサインも判明したため、UEWによる直接接続が可能になりました。

CN-474ボードピン配置(メモリースティックを除く)
ピン名はNEX-5Tのサービスマニュアルのものに合わせてあります


シャッターASSY挙動解析

先駆者様がMD-15にNEX-3のシャッターASSYを内蔵されていたように、NEX-5NもシャッターASSYがないと動作しません。そこで、シャッターASSYの挙動を解析し、それを模倣するようなデバイスを作り、NEX-5NにシャッターASSYがついていると誤認させることができれば、この問題を解決できるかもしれないと考えました。その前段階としてロジアナで信号線の挙動を確認、分析してみることにしました。
この作業でも、NEX-5Tのサービスマニュアルが参考になりました。

破壊してしまったフレキコネクタの跡に、カードスロット基板からシャッターユニットに伸びる制御線、メイン基板からシャッターチャージユニットに伸びる回転位置検出用のピン3本、モーターの制御をしているFETのゲート2本を引き出しました。
ロジアナでシャッターボタン押下時の挙動を見ると、2ND_CURTAIN_MGという信号がトリガーになり、それに続くSHUTTER_PIの挙動により、シャッターが降りたと判断されているようです。続くチャージでモーターの回転位置検出用の接点が動きます。

シャッターASSY解析の時の写真
怪しい線はすべてつなげてあります
キャプチャできた信号
7番と8番の命名が逆になっています
もすこしくわしく
これも命名が逆です


シャッターASSYエミュレータの製作

解析した挙動から、シャッターエミュレータを制作しました。当初は9本の信号線を監視or操作する必要があると思っていましたが、解析の結果、モーター駆動用の信号2本と1番シャッターの信号線はエミュレートする必要性がなさそうでした。なので、6本あれば良さそうです。

ちょうど手元に8pinのATtiny13A-SUがありましたので、これを使って組みました。GPIOを6本使うにはRESETピンを無効にする必要があるので、SPIライタしかない環境では書き込みが一度きりでしたが、無事動作してくれました。
チャージのモーターの温度センサは接続しなくてもエラーになりませんでした。ちょっと怖いですが、そんな心配をする必要はありません。なにせモーターがないのですから。

単体テスト時の
この状態でシャッターを切る(?)ことができます
シャッターASSYとカードスロット基板が不要になりました


電源関係

バッテリの検討

NEX-5Nの電池は7.4Vです。電圧が高いので、フィルム室に入れる電池はそれを考慮しなければなりません。
Li-Poを2枚積むことを検討しましたが、適切な大きさのものはマイナーなサイズのようで、入手性に難があると判断し諦めました。

そこで、適当な電池を昇圧することにします。単四充電式電池x3本、CR123A電池など様々考慮しましたが、最終的に18350電池に行きつきました。PSEマークと保護回路がついている電池が日本で買えますし、電池ボックスもAliExpressで買ったものがちょうどフィルム室に入りました。

ぴったりです


電源回路の試作

バッテリーを18350電池にすることを決めたので、手持ちの部品でそれが実現できるか確かめました。逆接続保護のためのPch MOS FET、過電流防止のためのリセッタブルヒューズを介してMT3608の昇圧モジュールに入力する回路を18650電池ボックスに貼り付けています。
18350電池はまだ手元にないので、どこのご家庭にもある18650電池でとりあえず代用しました。

手元にAmazonで買ったAC-PW20のパチモノ(USB PDでNP-FW50の代わりにカメラに電源供給できる優れもの)があったので、これをつないで動作時の電池の(昇圧ユニットに入る前の)電流を測ったところ、100から200mA程度でした。レンズとシャッターチャージのモーターがない分負荷が軽いのかもしれません。
この作業中に写真1枚と動画1本が撮れたことを確認したら、写真が撮れなくなってしまいました。チャージユニットの回転位置検出接点がずれたようでしたので、適当に歯車をくるくる回したら直りました。

治安の悪い電子工作


電源回路の製作

試作した回路が良好だったので、この結果をもとに電源回路を制作しました。NEX-5Nのメイン基板へ電源を供給するAC-PW20のパチモノが出力する電圧を測ったところ8.1Vでした。また、FGは本来LR44電池を2個直列で動作するため、3Vが必要です。この2電源を18350電池から作り出す回路をフィルム室の空き空間に収められるようにしています。

NEX-5N用の8.1Vは昇圧モジュールの部品を流用、3Vは秋月で売っていた500mAのレギュレータで生成しています。保護回路として、試作の時のものに加え、バッテリの電圧が低くなったときにバッテリとの接続を遮断するように、ATtiny13A-SUとハイサイドスイッチとしてのPch MOSFETがついています。

製作した電源回路
目論見通りおさまりがとてもよい

infoLithiumのデータ端子

電源系でもう一つ問題があります。infoLithiumのデータ端子です。これについては、手元のAC-PW20のパチモノを流用することにします。ただし、せっかくなのでできるところまで解析を行いました。

AC-PW20のパチモノを分解してみると、何らかのマイコンにより一線式通信を実現しているようでした。このICは刻印が消されており、最初は配線パターンからSTM32コンパチかと考えてST-Linkを接続してみましたが、どうもうまくいきませんでした。
TSOP20、語尾がg?winという刻印、丸いロゴという特徴からローラーをかけて、台湾megawin社のMG82F6D17AT20というマイコンが引っ掛かりました。CPUはintel 8085互換で、専用デバッガあるいは専用プログラマで書き込みするみたいです。どちらもそこそこお値段もするようですし、ちょっとROMを解析するのは敷居が高いです。

infoLithiumは1線式のシリアルデータ通信のようですが、基板内で2本に分岐しており、片方にダイオードがついていたので、送信と受信に分かれているようです。そのため、それぞれのデータ線とみられるパターンからジャンパ線を引き出しました。

(ToDo: プロトコルとデータに関する記述)

中華製USB PD版AC-PW20の中身
引き出した送信/受信ライン

その他

フィルム室を空ける

フィルム巻き戻し用の爪がバッテリーホルダーを入れるのに邪魔そうだったので、代用部品を作ることにしました。測定したところ、L=12mm、Φ=5mmの丸棒にM3のねじ穴が開いていれば良さそうであり、AliExpressにちょうどいいものがあったためポチりました。

届いたものは、ちょっと太くて入らなかったのでちょっとだけ細く加工しました。手持ちのドリルに軸ブレがあったので、ちょっと中央が太くなっていますが許容範囲です。片側にねじをつけて、フィルム室から差し込み、もう片側にフィルム巻き戻しノブをつけて完了です。

左のノブに、本来は中央のロッドがついていますが、作った右のをつけます
これででっぱりに邪魔されずに済みます


補足:FGの解体と解析

進捗:?%
ToDo:いろいろ

予備部品を得るため、回路を解析するため、機械の構造を学ぶため、本番で改造するために確保しているFGとは別に、いろいろ試すためにジャンクなFGを保有しています。
……実は、これは幼少期に父親から賜ったものです。当時は何もわからなかったので、シャッター幕に触れたり、ミラーに触れたり、高温多湿なところに放置したりしていたので、チリと汚れとカビと錆びで散々な状態です。ほんとうはこれをデジタル化したかったのですが、現物合わせのためのリファレンス、あるいは部品取りにしています。本記事に使用しているFGの画像の一部はこのジャンクFGなので、状態に気になる点があっても指摘しないでください。


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